当たり前とサプライズと支持率

 
ここ連日、オリンピック東京招致の話題が報道されていますね。

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先日のエントリー「安倍内閣支持率回復とキングオブキングスを夢見る者」で、安倍内閣の支持率が回復したことについて触れたけれど、世論調査を行った時事通信は、その理由について、各種経済指標が堅調なことに加え、調査期間中に開かれたIOC総会に安倍総理が出席して、2020年の五輪東京開催が決まったことが影響したとしている。

確かにそれはある。

現在、安倍政権は政策課題をいくつも抱えているけれど、それと支持率との関係を考えると大きく次の2つに分類できると思う。
1.成功すれば課題は前進するが、失敗しても現状維持のもの
2.成功してもせいぜい現状維持で、失敗したら状況が悪化するもの
1は、例えば、北方領土問題や拉致被害者問題のなどで、成功すれば、問題の一部、あるいは全面解決となり、支持率が上昇する方向に働く。先のオリンピック東京招致なども、この類型に属する。また、失敗しても、ネガキャンをされる可能性があるにせよ、基本は現状維持のままで支持率がマイナスには働きにくい。相場的な表現を使えば"サプライズ"になる材料。

これに対して、2は、1とは逆で、失敗すれば、状況は現状から悪化するもの。例を挙げると、消費税増税問題や中韓との尖閣・竹島問題などがこれに当たる。

この類の問題は、うまく処理することができても「現状維持」がいいところだから、内閣支持率的には、上手く処理しても、支持率が上がるわけではなく、逆に失敗すれば、支持率が大きく下がる方向に働く。相場的には「織り込み済」の材料の扱いになっているから、失敗したら"失望売り"を呼ぶ。

例えば、東京オリンピック招致のプレゼンで、安倍総理が福島原発の汚染水について問われ、政府のコントロール下になると啖呵を切ったけれど、コントロールできているといって招致に至った以上、この汚染水問題も、うまく処理して「当たり前」、即ち、織り込み済みの材料となったといえる。だから、福島原発の汚染水問題は、この2の類型に入ったと見ていいだろう。

また、政策課題自身も、1なら1の類型、2なら2の類型とずっとそのままでいるとも限らない。例えば、今を時めく「アベノミクス」、最初は、マスコミやら何やら、上手くいくはずがないとか、いやこれしか方法はないとか、喧々諤々の賛否両論だったのだけれど、いざやってみると、株は上がるわ、円安になるわで、景気回復の為の大きな起爆剤となった。これが一種の「サプライズ」となって、安倍政権の高支持率を支える土台になっていることは間違いない。

だけど、第3の矢である成長戦略が出てきたあたりとなると、世間はもう「アベノミクス」に慣れてしまった。月並みな成長戦略では「サプライズ」とは思わなくなってしまって、最初1の類型に属していた、アベノミクスは段々と2の属性を帯びるようになってきた。それが今の状態だと思う。先日のイプシロンの打ち上げ成功についても、日本の技術力であれば、そんなのは「当たり前だ」と思う人が多ければ、2の属性が強くなるし、逆に固体ロケットのモバイル官制で打ち上げられたことを「サプライズ」だと思う人が多ければ、1の属性が強くなる。

このように、現在、安倍政権は、支持率がプラスに働きやすい課題と、マイナスに働きやすい課題、或いは、プラスにもマイナスにも転ぶ課題を同時に抱えていることになるのだけれど、いずれにせよ、上手くいって当たり前と思われている課題の失点を極力減らし、サプライズになる課題の得点を如何に積み重ねていくかが、高い政権支持率をキープする鍵になる。

その意味では、安倍政権のタイムスケジュール的に目前に迫っている政策課題は、なんといっても消費増税問題。これは先に分類したように2の類型に属するから、景気を腰折れさせないように処理して「当たり前」、失敗すれば一気に内閣支持率が落ちるという非常に取扱いが難しい課題となる。

マスコミはトバシ記事も含めて、安倍内閣が3%の増税をする際には、2%分に当たる5兆円規模の大型経済対策を同時に打ち出すことを検討していると報道しているけれど、その経済対策を巡って、内閣と財務省で対立があるという。
  
何でも、当初、財務省が出してきたのは、2兆円規模の経済対策で、これには甘利経済財政担当相が「できるだけ財政出動しないで済ませたい思惑が見え見えだ」と批判した。そして、これでは話にならないと官邸が財務省に通告したのが、例の12日の菅官房長官の「首相が消費税を引き上げると決断した事実はない。経済政策全体を掌握した上で判断する」発言なのだという。

その意味は、「効果のある大規模経済対策をまとめなければ、増税には応じないぞ」というもので、そうだとすれば、官邸と財務省との間で物凄いバトルが繰り広げられていることになる。であれば、是非とも双方の主張が折り合わず、結局増税見送りになってくれたほうがよっぽどいい。

現状、日本は、そのきざはしが見えるにしても、デフレからは明らかに脱却していない。そんなときに増税するのは景気の腰折れ材料以外の何物でもない。

それに大型経済対策を出すといっても、3%増税に対して、2%分の経済対策では、差し引き1%の増税と同じ。たとえ、緩やかになったとしても、結局景気は失速する。3%増税に対して、5%分の経済対策ならまだ分かる。こちらだとプラス2%になるから。

だけど、そんな余分な財政出動をするよりは、増税を見送ったほうがよほど簡単。それに、マスコミ、或いは財務省が消費税増税は決まったと既成事実化キャンペーンを貼りまくっている状況で、安倍総理が増税をしないと決断して発表すれば、それ自身が「サプライズ」になる。できれば、そこで更なる経済対策を打ち出せば尚いい。いい意味で国民を"思い込み"を裏切ってやれば、支持率のプラスとなって返ってくる。

安倍総理の「サプライズ」を期待している。




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この記事へのコメント

  • そら

    安倍首相のサプライズを期待していますが、もし消費税増税になる場合は、東京都限定にしたほうが良いです。地方は疲弊していますし、自民党支持が多い。不満が出てくると思います。東京はオリンピックが控えてますし、人口も多く消費の冷え込みもさほどないからです。
    私は消費税は2年は増税しないで様子を見た方が、デフレ脱却して行くと思いますが、官僚を抑えきれない場合は限定的にする方法もあります。
    2015年08月10日 15:22

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