G20サミットでの安倍「と金」外交
9月6日、サンクトペテルブルクで行われたG20サミットが閉幕した。
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サミットでは、シリアへの軍事介入についても、議論が交わされたのだけれど、介入を検討しているアメリカと、介入に反対の立場を取るロシアとの対立が浮き彫りとなった。
議長国であったロシアのプーチン大統領は、サミット閉幕後の記者会見では、アメリカの軍事行動に賛成の国、反対の国を名指しで取り上げ、反対の立場を取る国が多かったと強調した。
これに対し、オバマ大統領は、記者会見で、「G20参加国の大半は、アサド政権が責任を負わなければならないというアメリカの決定に同調している」と、アメリカの立場にこそ理解が広がっていると反論。米ロ双方で自らが多数派だ、と主張する結果となった。
因みに軍事介入に賛成の意を示したのはアメリカ、トルコ、カナダ、サウジアラビア、フランス、イギリスの6ヶ国。反対は、ドイツ、ロシア、中国、インド、インドネシア、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、イタリアの9ヶ国に国連事務総長で、日本を含め、EU、メキシコ、オーストラリア、韓国の5つは賛否を明らかにしていない。
今後も米ロ双方で、多数派工作を進めていくことが予想されるのだけれど、日本は、シリアのアサド政権を強く批判しつつも、アサド政権側が化学兵器を使ったどうかについては、慎重に見極める姿勢を取っている。
9月3日、安倍総理は、オバマ大統領と電話会談を行っているのだけれど、その際、安倍総理は、シリア情勢に関して、日本の対応を決める条件ではないものの、国際社会の理解を得るよう努力してほしい、と安保理の武力行使容認決議を得る努力を求めた。
これに慌てたアメリカは、当初、予定していなかったG20での日米首脳会談を申し入れて急遽セット。G20サミット前に会談するという厚意を示した。
会談では、シリア情勢について、安倍総理が「緊密に引き続き連携し、事態を改善していきたい。…大統領の考えは十分理解している。重い決意と受け止めている。国際社会の幅広いコンセンサスを得ようとする大統領の努力を評価する。…化学兵器の使用はいかなる場合も許されない。北朝鮮などの大量破壊兵器を保有する国との関係にも波及する」と事実上の支持を表明。また、TPP交渉の年内妥結をめざして協力することでも一致したようだ。
一部報道では、当初、日米首脳会談は見送られる予定だったことを取り上げ、日本はオバマ大統領から軽く見られているのではないかという憶測もあったけれど、安倍総理から安保理決議を得て欲しいとクレームを入れられて、慌てて会談をセットするところをみると、よもや日本からそんなことを言われるなんてと吃驚したのかもしれない。
オバマ大統領にしても、今の状況下で、シリアへの軍事介入について、日本に距離を置かれてしまうのは痛手になる。まぁ、これは単なる筆者の印象にしか過ぎないけれど、サミットのオバマ大統領の表情をみると、本心ではシリアへの軍事介入などしたくないのではないかという気がしてならない。だけど、シリア内戦が長期化する中、自らレッドラインだと警告した化学兵器を使った疑惑が持ち上がり、国際秩序の維持が危うくなった。これを放置すれば、もっと大変なことになる。故に、止む無く(嫌々)軍事介入をやろうとしているのではないかとさえ。
G20での日米首脳会談でも、安倍総理が「国際社会の幅広いコンセンサスを得ようとする大統領の努力を評価する」と述べているけれど、これなんか、安保理決議を取ってくれというクレームを入れた見返りに会談がセットされたと白状しているようなもの。安倍総理はこの機会に、シリア以外の問題点についても幅広く話し合ったといわれている。安倍総理は、シリア問題で、貸しを作りながら、懸念事項について話し合う機会を得た。
それでいて、安倍総理は、G20で軍事介入の賛否について態度を明らかにしなかった。中立のポジションから動かなかった。中立を保ったまま得点を取った。実にしたたか。
しかも、安倍総理は、G20でロシアのプーチン大統領とも会談を行っている。会談内容はこちらで公開されているけれど、外務・防衛閣僚級「2+2」の開催や安全保障・経済分野の協力の他に、シリア問題についてもちゃんと話し合っている。つまり、日本はシリア問題についても、アメリカとロシア双方とパイプを持つポジションにいる。
今の所、アメリカとロシアは首脳同士が直接会談することができているようだけれど、今後両国の関係が拗れた場合には、日本が仲介役を果たすことだって考えられる。シリア問題において、日本は難しい判断を迫られる反面、結構おいしい位置にもいる。
更に、安倍総理は、そうした外交をする"合間"に、中国の習近平国家主席と、韓国の朴槿惠大統領と数分間の立ち話をして、国際社会に日本は対話の扉を開けている事をアピールした。ここでも、小さな得点を積み重ねている。
極力失点を抑えて、少しづつ得点を重ね、気づいたら、相手の奥深くに入りこんで国益を確保する、「と金戦法」。中々大したものだと思う。
それに引き替え、韓国の朴大統領はG20で、ドイツのメルケル首相と会談し、「日本は歴史を見つめながら未来志向の関係を発展できるよう取り組んでほしい」と述べた。折角の首脳会談の機会に直接関係のない第三国を取り上げて一体どうしたいのか。
もちろん、それ以外にも議題は多々あっただろうけれど、シリア問題を始めとして、世界が緊迫しているときに、何十年も前の話題を取り上げるなんて、空気が読めないにも程がある。メルケル首相もさぞかし面食らっただろう。朴大統領は、安倍総理とは逆に、壮大に失点を重ねていると言わざるを得ない。
得点や失点は、たとえ一つ一つが小さなものであっても、積み重ねれば大きなものになる。それが外交ともなれば、国益に与える影響は馬鹿にならない。
安倍総理には、これからも着実な外交を期待している。
この記事へのコメント
sio_sh
答えは、原発や汚染水問題を収束させられる技術を政府は既にケッシュ財団から受け取っているからだ。
www.onpa.tv/2013/05/13/789-3
この技術があれば、原発収束や放射性廃棄物処理に何十年何百年もかかることはありえない。本当にすぐにでも収束に取り掛かれるのだ。
プチ農
オリンピックも東京に決まって、安倍ちゃんも強運です
opera
2年前と言うと、オバマがアジア・太平洋重視を強調していた頃です。アメリカが中東情勢から目を背けている時期に、事態は深刻化していたということでしょう。
中東情勢は日本にとっても、安全保障上の死活的問題です。それだけに、アラブ諸国の「本音」を直接聞いておく必要があったのではないでしょうか。
安倍総理の外交政策に、少しずつ独自色が出て来たような気がします。
ちび・むぎ・みみ・はな
やりたいのはケリーであり, その後ろにいる者達.
興味があるのは, シリア攻撃が「誰の得」になるか?
見かけ上は混沌としているように見える. だから,
中東が混沌としている方が好ましいもの達は誰か
といい変えても良い.