沈没するフジテレビと危機のNHK


フジテレビがちょっとした危機におちっている。

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2012年度の視聴率争いで、テレビ朝日、日本テレビに負け3位に後退。そして、今年8月のゴールデンタイム、プライムタイムの視聴率争いでは、とうとうTBSにも抜かれてしまい、4位に転落した。

視聴率が低迷した理由は連続ドラマの不振だという指摘がある。プライムタイムでフジは5つの連ドラを放映しているのだけれど、そのうち3つが平均視聴率では一桁。低視聴率に苦しむフジテレビはとうとう、伝説の長寿番組であった「笑っていいとも!」の終了を決めた。関係者によると、「局の視聴率低迷を脱却するための亀山社長の決断」だそうだけれど、相当苦しいのだろう。「笑っていいとも!」だけでなく、その他にも打ち切りを噂される番組があるという。

そんな中、追い打ちをかけるように起こったのが、先日発覚した「ほこ×たて」のヤラセ問題。10月20日に放送された「絶対命中スナイパー軍団VS.絶対逃げるラジコン軍団」で、内容を制作側の都合の良いように編集されていたことを、ラジコン側で出演した広坂正美氏がネットで告発、大騒ぎとなった。フジテレビは事実関係を調査するとして「ほこ×たて」の放送自粛を決めたのだけれど、他にもやらせはあった、と後から後から出てきて、一向に収まる気配がない。

過去、このようなヤラセに近い問題で思い出すのは、関西テレビの「発掘!あるある大事典Ⅱ」で、納豆にはダイエット効果があると、実験結果のデータを改竄して放送した件。

当時、この問題について、放送倫理・番組向上機構(BPO)は、「ジャーナリズム産業の基本の放棄であり、視聴者の期待を裏切り、放送界全体の信頼性を損ない、ひいては言論・表現・報道の自由を危うくする出来事と言わざるを得ない」との声明を出し、放送界全体が抱える構造的な問題としてとらえるべきだと指摘した。そして、事態を重くみた日本民間放送連盟(民放連)は、関西テレビを約1年間の除名処分とした。

こうした前例を考えると、今回の「ほこ×たて」は更に厳しい処分が下されるのではないかと業界では噂されているようだ。

もしも、フジテレビが、民放連から除名されると、 民放連加盟社しか放送権利がない番組は一切放送できないのだけれど、その中には、オリンピックとサッカーワールドカップの放送も入っているのだという。来年はソチ五輪とブラジルW杯があるから、もしもこの時、フジテレビが民放連を除名されていたら、これらが放送できないことになる。視聴率が計算できる重要コンテンツを共に失うことは、痛手どころの騒ぎじゃない。

マスコミは、政府が検討を進めている秘密保全法案について、表現の自由を侵すものだ、と反対しているけれど、ヤラセをしている人が言っても少しも説得力がない。BPOが「あるある大事典」の問題について「放送界全体の信頼性を損ない、ひいては言論・表現・報道の自由を危うくする出来事」とした。だから、マスコミが、表現の自由、報道の自由を謳うのであれば、「ほこ×たて」に甘い処分を下すことはロジック的には有りえない。そんなことをしたら、ダブルスタンダードの誹りは免れない。



報道に対する批判に危機感を覚えているのは、フジテレビだけじゃない。

来年1月に任期が切れるNHKの松本正之会長は、「放送の公平・公正について」と題した資料を作成し、幹部に配って徹底を呼びかけ、会長任命権を持つ経営委員会や、政府関係者への説明にも活用しているという。資料には、原発問題について「特定の立場に立つようなことはあってはならない」とし、尖閣・竹島問題については「日本の領土であるとの立場を明確にし、機会あるごとに日本の立場を発信」するとしている。

このような資料を作った背景には、政財界から「NHKは反原発報道に偏っている」「人事・賃金改革だけで、抜本的な改革が不十分」といった批判があり、それを払拭するためではないかと見られている。

NHK会長の選任には、経営委員会定数12人のうち9人の同意が必要で、NHK幹部には、「自身の評価を落とすような"誤解"を払拭したいのだろう」と、続投に向けたアピールと見ている人もいるようだ。

経営委員会は、現在定数に対して2名の欠員があり、更に、12月には3人の任期が切れるため、都合5人が新たに選出される予定になっている。この5人は今の臨時国会中に国会同意人事で決まるのだけれど、10月25日、政府は衆参両院の議院運営委員会理事会で、その5人の人事案を提示している。

それによると、新任の委員は、小説家の百田尚樹氏、長谷川三千子・埼玉大名誉教授、中島尚正・海陽学園海陽中等教育学校長、本田勝彦・日本たばこ産業顧問の5人。

百田氏は、この冬に映画化される「永遠の0」の著者で、安倍総理も愛読者の1人。8月には月刊誌で対談するなど親交が深い。本田氏は、安倍総理が少年時代に家庭教師を務めた人物で、現在は首相を囲む経済人の集まり「四季の会」のメンバーの一人。また、中島氏が校長を務める海陽中学校は、安倍総理のブレーンで、「四季の会」のメンバーでもある葛西敬之JR東海会長が設立に尽力している関係から、葛西氏の推薦などがあった可能性がある。そして、長谷川三千子氏は保守派の論客として知られ、百田氏とともに、昨年9月の自民党総裁選で安倍総理を応援した経緯がある。

と、このように、今回の経営委員人事は、いずれも安倍総理に近いとみれられている。

筆者は「安倍総理の本心の見抜き方とアベノロイドミクス」のエントリーで、安倍総理の本心は、人事に表れるのではないかと述べたけれど、今回の経営委員人事は思いっきり、これに該当するように思われる。

マスコミにもとうとう、改革の波が押し寄せてきた。




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この記事へのコメント

  • とおる

    「イオンの偽装米」と「阪急阪神ホテルズ、ザ・リッツ・カールトン大阪の虚偽表示」を比べれば、「イオンの偽装米」が少ない報道。
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    嫌韓流デモのとき、フジテレビのトップが「嫌なら見なければいい」と放言しましたが、その通りに視聴者が行動したわけですね。
    2015年08月10日 15:22

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