今日は、ごく簡単に…

このほど、世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会が、中国のレアアース輸出規制に反対する日米欧の主張を大筋で認める中間報告を出したことが分かった。
これは、2012年6月、日米欧共同では中国のレアアース、モリブデン、タングステンの輸出規制がWTOルールに違反しているとして提訴した件。
今回だされたのはこれに対する中間報告で、最終報告は12月になる見込み。中間報告の内容については、極秘扱いでまだ公表できないようなのだけれど、茂木敏充経産相は25日の記者会見で、「表情をご覧いただければと思います」と自信たっぷりにコメントしていることから、ほぼ日本の主張が認められていることが伺える。
昨今、日米は脱・中国製レアアースに向かっている。
日本企業は、中国以外でのレアアース調達先を求め、ベトナムに進出。また、リサイクルの推進ととレアアースの使用量を少なくする技術を開発し、今ではレアアース磁石を作るためのレアアース使用量のうち、十数%はリサイクル品で、殆どの企業がレアアース(ジスプロシウム)を減らした磁石を使用している。
新金属協会によると、日本でのレアアースの需要は、2007年の約3万2000トンから12年には約1万4000トンまで減少し、価格はピークだった11年の10分の1近くまで下落している。
一方、アメリカは、レアアースの自国生産に力を入れ始めた。9月20日、アメリカ下院は、戦略的重要性の高い鉱物資源の自国での採掘事業を強化するよう求める法案を可決している。元々アメリカは自国でレアアースを生産していたのだけれど、中国のレアアースのダンピング攻勢によって閉山を余儀なくされていた。それを再び採掘しようとしている。
法案を提出した共和党議員のロブ・ビショップ氏は「世界の主要なレアアース生産国である中国は輸出規制を行っている。米国が国内のレアアースの需要をまかなうために輸入に依存しなければならない状態は、国家の安全にとって巨大なリスクとなる」と指摘し、法案の成立によって米国内における鉱山開発を後押しすることができるとしている。
こうした動きをうけ、中国のレアアース輸出は激減。昨年のレアアースの輸出額は前年比66.1%減の9億600万ドルに止まり、関係者によると、「今年も減少傾向は止まらない。昨年夏ごろから、多くの関連企業は実質的な生産停止に追い込まれている。在庫を少しずつ減らしているのが現状だ」という状況のようだ。
中国製レアアース離れに加え、WTOで輸出規制したと判定されたら、今後、資源を盾に他国に譲歩を迫る"資源恫喝外交"がやり難くなる。
丸紅経済研究所の鈴木貴元シニアエコノミストは、「日本企業の中国への警戒を高めただけでなく、中国に対する世界の見方も変えてしまった」とコメントしているけれど、そうだろうと思う。
どうも最近の中国、特に習近平体制になってからの中国政府は、我田引水というか、強引に過ぎる印象が拭えない。
先日、中国の北海、東海艦隊所属のミサイル駆逐艦2隻とフリゲート艦3隻が、沖縄本島と宮古島間の海域を通過し、南海艦隊の艦船が、台湾の南にあるバシー海峡を通過して、西太平洋の演習海域に集結した後、大規模な合同軍事演習を行った。中国メディアは「三大艦隊が初めて同時に第1列島線を突破」と宣伝しているようなのだけれど、こんなことを繰り返して世界がどう見るのかを少しは意識しているのか。
今回の演習について、一説には、日本政府が、尖閣・竹島の領有を説明する広報動画を公開したことに対しての対抗措置だと言われているけれど、中国は、「日本は軍国主義化しつつある」と、その口で言っておきながら、自分達は大艦隊を派遣して大演習を行っている。一体どちらが軍国主義なのか。
空自の佐藤守・元空将は、中韓両国について、「中国の習近平国家主席も、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も動きが取れなくなっている。…中韓両国とも、経済的に行き詰まり、国内矛盾が噴出しつつある。軍事的に派手なことをやって、外に目を向けようとしている。だが、こういう挑発は世界のモラルに合わない。安倍晋三政権の動画公開は当たり前のことであり、中韓両国の反応が異常といえる。主要国は『こんな国か』と両国を相手しなくなる。今後、さらに孤立するだろう」と述べているけれど、これが普通の見方だろう。
9月になってから中国は、対日政策を見直し、経済面を中心に対日交流を拡大するという新たな外交指針を打ち出しているとの観測がある。何でも、中国指導部は当初、日本が、東日本大震災の復興や、福島原発問題、及び日中関係等々多くの難問を抱えていることと、過去6代の政権がいずれも1年で交代してきたことから、第二次安倍政権も1年くらいしか持たないと考えていて、尖閣問題も、安倍退陣後に新提案を出すなりして立て直そうとしていたようだ。
だけど、今になって、安倍政権が長くなりそうだということで慌てて戦略を練り直しているらしい。過去6代の政権が不安定だったのは、ねじれ国会で、法案が簡単に通らず、政局に成り易かったことに加え、政権担当能力のない民主党が最近まで政権についていたことが大きいと思うのだけど、過去6代が1年で交代していたからという、そんなことだけで、本当に中国指導部が安倍政権も1年しか持たないと考えていたのだとすると、なんとも間抜けな話。
習近平政権は、今、国内の汚職粛清と経済問題で、てんてこ舞いになっている。だから、それを少しでもカバーしようと、日本との経済交流を拡大しよとしているのかもしれない。
だけど、中国は「行くは易し、帰るは難し」の国。進出するのは容易でも、逆に撤退するとなると、税務当局が徹底したあら探しをしては、妨害し、処理が長期化することもしばしばなのだという。
もしも、中国が日本に対し経済交流を拡大するように方針転換したとするならば、その弱みに付け込んで、この辺りの撤退の条件についてルール化して、さっと撤退できるようにすべきだと思う。なんとなれば、レアアースではないけれど、そう要求する裏で、どんどん撤退を進めていって、気が付いたら、日系企業はいなくなっていたくらいのリスクヘッジがあってもいい。
ここ最近の中国をみれば、いつ何時、反日暴動が起きるか分からないことは誰の目にも明らか。そして、それは習近平体制が固まれば固まる程、何時でも何処でも起こせるようになっていく。店舗の焼き討ちだけならまだしも、邦人が人質になってからでは遅い。
習近平体制が弱くなっているとするならば、正に、その今が「脱・中国」の最大のチャンスだと思う。
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