悪夢の楼閣「中国の夢」

 
昨日のエントリーのつづきです

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中国の思想統制は、習近平体制になってから、増々加速している。

昨日のエントリーでは、東洋学園大学の朱建栄教授が当局に拘束されたことに触れたけれど、拘束されたのは、朱教授だけじゃない。9月になって、人民日報の東京支局長を務めた著名な記者や、日本で中国語の雑誌を発行している編集者ら少なくとも5人が、中国当局に拘束され、情報漏洩などの容疑で取り調べを受けていることが明らかになっている。

また、米国や台湾をよく訪問している中国政府系シンクタンクの研究者も拘束されたと見られ、外国人と親しい関係にあったり、人権の尊重など、欧米の価値観に共感を持ったりする知識人が集中して狙われているという。

何でも、「『中国の夢』という民族主義をあおるスローガンを掲げて登場した習近平政権にとって、外国の立場や価値観を理解し、それを国内で説明する知識人は邪魔な存在だ。見せしめとして何人かを拘束し、黙らせることが目的では」との観測もある。

何人かを拘束、といってもそこは中国。この夏に拘束された知識人らは少なくとも100人はいるというから、スケールが違う。日本でもアメリカでも知識人・言論人が100人も拘束されたなら、大騒ぎになる。

特に9月13日に、著名な投資家で企業家の王功権氏が拘束されたのは、大きな話題となり、国民的人気歌手フェイ・ウォンの離婚騒ぎと合わせて、中国本土では、「歴史的なブラック・フライデーだ」との声が上がったそうだ。

王功権氏は、共産党の財産公開や不公平な教育制度の是正など理性的かつ穏当な要求や行動で社会を変えようとする「新公民運動」を、人権活動家・許志永氏と共に推し進めてきた人物なのだけれど、彼自身は共産党政権そのものを批判したことはほとんどなかったという。

当局が彼を拘束した理由が「公共の秩序を乱した容疑」なのだそうだけれど、体制批判をするわけでもなく、ましてやテロ行為をした訳でもなく、ただ言論で、「法が定める市民の権利の実現」を求めただけで、公共の秩序を乱すとされるのならば、中国政府がいう「公共の秩序」とは、思想統制された結果としての秩序だということになる。

王功権氏は2011年にミニブログで、 「我々は文化大革命が中国社会に与え続けてきた影響を見くびっていた。我々は経済建設が中心だと思っていた。文化大革命は終わり、もうあの時代に戻る事はないと。しかし現実は違っていた。文化大革命の後遺症は重く、文革式思想はまだ顕著に我々に作用している。"誘導"、賛歌の歌唱、階級対立の推進、政治的異分子の迫害、法律に対する蔑視と蹂躙、暴力の擁護、冷戦思考など。至る所で目にする。」と呟いていたのだけれど、正に、現代の文化大革命が再び習金平主席の手によって行われている。

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習近平国家主席は、今年8月の会議で「思想宣伝こそがマルクス主義の指導的地位を揺るぎなくする」と強調し、メディアへの統制強化を通じて国民の思想を引き締める方針を示しているから、この路線はまだまだ続いていくのだろう。

習近平国家主席の粛清は、思想だけじゃない。国内の汚職に対してもそうで、容赦なくスキャンダル官僚を取り締まっている。8月4日、高級クラブで女性と遊び、ホテルに連れ込んだ容疑で、上海高裁の裁判長の身柄を拘束し停職処分にしている。

また、国有建設最大手の「中国鉄建」に対して、昨年に約8億3700万元(約134億円)に上った業務接待費についての調査を行ない、問題のあった社員1人を司法機関へ移送、8人を処分している。

このように、習近平政権は「蠅も虎も一緒に叩く」とばかり、粛清の嵐を吹かせているのだけれど、少しづつ綻びも見え始めている。

10月19日、中国広東省の地元紙「新快報」の陳永洲記者が当局に拘束され、同紙が連日記者釈放を求める記事を一面で掲載、抗議している。

「新快報」は今年5月から、湖南省長沙市の建設機械大手「中聯重科」について、利益水増しなど財務上の不正疑惑を15回にわたって報道していたのだけれど、「中聯重科」側は、インターネット上で「虚偽報道だ」と反論し、長沙市公安局に告訴していた。

10月18日、当局から呼び出しを受けた陳記者が広州市内の派出所に出向いたところ、待ち受けていた長沙市公安局の警官4人に車で連行、拘束された。

24日付の新快報は「すべては法の枠組みの中で解決すべきで、まず拘束し、後で取り調べるということはしてはならない。…関連記事をすべて調べたが、特別問題となる点はなかった」と、抗議している。

中央政府が汚職を粛清し、大手国有企業ですら処分しているのに、地方政府が、不正疑惑報道に対して、記者を拘束するのは辻褄が合わない。

中央政府の指示が地方政府に十分浸透していないのか、或いは対立しているからなのかは分からないけれど、こうした時に、「公共の秩序」を保つためにこそ「法」があり、「法の支配」が必要になる。どんな立場の人であっても、たとえ利害が対立しようとも、「法」に従うという前提がなければ、秩序はつくりえない。

その意味では、中国は新快報の主張どおり、「すべては法の枠組みの中で解決すべき」であり、「新公民運動」が主張するとおり、「法が定める市民の権利」を実現しなくてはならない。

中国は、「法の支配」を否定する限り、真の「公共の秩序」を手にすることはできない。




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この記事へのコメント

  • almanos

    習近平氏が行っているのは「勘違いした復古運動」そのものですね。しかも、毛沢東時代とは条件がまるで違う。かつて、共産党は共匪と呼ばれていました。結局の所。彼らは政権を取ったのではなく国を盗ったのであり、統治ができなかったのかも知れません。逆に言うとここまでしないと維持できないくらい状況が悪化しているという事でもあるのでしょう。年内に経済が破綻したら各地の民衆の暴動と、北京の現体制に見切りをつけた地方軍閥の群雄割拠で実質的な内乱状態に突入するかも知れませんね? 既に年内か来年かと言うくらい切羽詰まっているかも知れない。
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    内容には関係無いが, 今日の画像の女の子の服装は
    朝鮮の乳出しチマチョゴリのようだ.
    この様なファッションを好む女性がいるなら
    朝鮮で乳出し服が普通にあったのも不思議ではないかも知れない
    と思った.

    それにしても, 支那はどうやってソフトランディング
    する(できる)のだろうか.
    2015年08月10日 15:22

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