ASEANと日米の安全保障戦略
更に更に、昨日のつづきです。
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10月10日、ASEANでの首脳会議が閉幕した。閉幕式では、来年初の議長国となるミャンマーのテイン・セイン大統領が「地域の平和と繁栄のため、われわれは結束することが大切だ」と述べて議長国就任への決意を述べた。
ASEANとの首脳会談に臨んだ安倍総理は、日本とASEAN諸国の経済交流、金融協力を進めるとともに格差是正、災害管理に対する支援を継続していくと述べ、ASEAN各国は、日本の支援を高く評価した。
特にASEAN側からは、日本との日本-ASEAN包括的経済連携(AJCEP)の年内妥結に期待する声が多くあがったようだ。
安倍総理が最初の外遊先としてベトナム、タイ、インドネシアのASEANを訪れたように、第二次安倍政権はASEANを重視する姿勢を打ち出しているけれど、これまで経済中心であったASEANとの協力関係を、安全保障にも拡大させようとしているフシがある。
今年1月のエントリー「安倍総理のセキュリティ・ダイヤモンド構想」で、安倍総理が「アジアのセキュリティダイアモンド構想」を打ち出していることを紹介したけれど、ASEANは丁度、このセキュリティダイヤモンドで囲まれた中に位置している。
つまり、ASEANはセキュリティ・ダイヤモンド構想によって、守るべき地域であることを示していて、それは、ダイヤモンドを形成する、日本・インド・オーストラリア・ハワイ(アメリカ)が担うということを示唆している。
既に日本は、日米同盟を結び、日豪安保共同宣言、日印安保共同宣言を出していて、日本をハブとする「セキュリティ・ダイヤモンド」の下地をつくっているから、ASEANも、日本の対ASEAN外交が、安倍総理のセキュリティ・ダイヤモンド構想を裏打ちする動きであると感じているだろう。
また、これは、アジアの前線から軍事力を引き、オフショア・コントロールにシフトしつつあるアメリカの戦略とも合致するから、アメリカもこれに乗ってくる。
10月4日、岸田外相は、APECを利用して、アメリカのケリー国務長官とオーストラリアのビショップ外務大臣と日米豪閣僚級戦略対話(TSD)を行ない、共同声明を出している。
外務省の発表(概要)を見る限り、日米豪戦略対話では、地域情勢としてシリアの化学兵器、イラン、北朝鮮の核問題について話がでていたようなのだけれど、岸田外相は海上の安全として、例の「力ではなく法の支配が重要」とのべた上で、尖閣と南シナ海問題について取り上げたようだ。
共同声明には、ちゃんと「東シナ海における現状を変更し得る、いかなる力による又は一方的な行動にも反対」と「南シナ海における平和と安定、国際法の尊重、妨げられない貿易及び航行の自由」の文言が入っている。だから、日本の主張は共同声明に反映されていて、岸田外相は、日本の国益とセキュリティ・ダイヤモンド構想の足場固めを進めたといえる。
さて、アジア戦略を大きく転換しつつあるようにみえるアメリカなのだれど、その戦略が、オフショア・コントロールへの移行だとすれば、これまで以上にアメリカは同盟国や友好国に対して気を使うようになると思われる。
なぜなら、アメリカがその軍事力の主体をアジアの前線から、グアムに引くとするならば、その抜けた穴は、同盟国や友好国に肩代わりして貰うことになる。そのときでも、それら国々にアメリカの意向を反映させる形で"コントロール"したいのであれば、彼らの機嫌を損ねることは御法度。
彼らとの協力関係を強化して、トータルとして、国益を確保したほうが得策。だけど、それは同時に、今後も協力関係を維持又は深化してもらえるのかを、今一度、確認しなければならないことも意味してる。
日本に対しては、アメリカは、先日の「2+2」会議に、国務長官と国防長官を揃って来日させているし、両名は、千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れ献花もしている。そして、強い日本への支持表明。
今年2月に日米首脳会談を行おうと事前調整して時点では、日本の集団的自衛権行使容認にオバマ大統領が支持を表明することについて「中国を刺激する懸念がある」として難色を示していた。それがわずか半年かそこらで、この変わり様。
アジアの安全保障の枠組みは大きく変わろうとしている。
この記事へのコメント
sdi
AJCEPはTPPとRCEPの共通国のまとまりです。ASEAN側にしてみれば保険という意味合いありますね。
また日本に対して「TPPとRCEPの両方に対して歩調を合わせて対処しよう」という意思表示とみることができます。TPPのアメリカ、RCEPの中韓に対抗する役割を期待されていると考えても良いでしょう。
直近の利益ばかり追っていつのまにか味方を失っていく、という顛末に陥ることは避けたいですね。