
更に昨日のエントリーの続きです。

10月8日、中国の崔天凱駐米大使は、ワシントン市内で講演し、日中間の歴史問題に関して「日本は米国が投下した2発の原子爆弾のみにより第2次大戦に敗れたのではなく、平和を愛し、ファシズムに反対した中国や米国を含む連合国とその人民に敗れた。…(日本の一部の政治家は)米国の反発さえ買わなければ何をやっても良く、他の国々の不安は気にする必要はないと信じている」と批判し、日米両国が「防衛協力のための指針」の再改定に合意したことについて「アジア太平洋地域を有望な市場と見て協調の道を歩むか、紛争の危険に満ちた潜在的戦場と捉えるか、二つの見解が存在する」と指摘し、「(日米両国が)誤りなく選択するよう望む」と述べた。
中国とASEAN(ベトナム/フィリピンなど)との間での南シナ海の主権争いについて、先日、アメリカの東アジア・太平洋担当のダニエル・ラッセル国務次官補が「国民感情と歴史を問題解決の拠り所にすべきではない」と述べているけれど、どんなコメントはどこ吹く風とばかり、中国は「感情と歴史」を振りかざしている。
この崔駐米大使の発言に対して、9日、菅官房長官が「自らの国の立場だけに立って、まさにプロパガンダの一つではないかとさえ思えるような発言だ。論評するに値しない。」と厳しく反論しているけれど、当然だろう。
だけど、口も出し、手も出す相手に対して、口で反論するだけでは不十分。言い合っている間に、相手は既成事実をつくって有利に歩を進めていく。
10月8日、アメリカのオバマ大統領は、記者会見で、政府機関閉鎖の影響で東南アジア歴訪を中止したことについて「訪問すべきだった」とし、自らの歴訪中止で「中国が自らの考えを主張しやすくなった」と述べているけれど、現に、外遊しなかっだけで、そういうことが起こっている。
正直、一頃と比べて、世界に対するアメリカの影響力は後退した。それは、オバマ大統領自身が、アメリカは世界の警察官ではない、と宣言したことに象徴的に表れている。
今やアメリカはアジアの最前線から、ゆっくりと軍事的に手を引こうとしている。事実、朝鮮半島からの米軍撤退や在沖海兵隊のグアム移転などが計画されている。だけどその一方で、TPPに見られるように、経済的な関与を深めようとしている。
3月27日のエントリー「TPPとオフショアコントロール」で、オフショア・コントロール戦略を取り上げ、アメリカは内々に、この戦略に移行しようとしているのではないかとン述べたことがあるのだけれど、ここ最近の動きをみると、益々その感を強くせざるを得ない。
オフショア・コントロールは、「中国による第1列島線内の海洋の使用を拒否すると同時に、それらの島嶼を防衛し、その領域の外側の空域及び海域を支配する」という戦略だけれど、これを行うためには、何も最前線に軍を置いておく必要はない。第1列島船内に速やかに戦力投入できる体制が整っていればよく、その投射戦力が圧倒的で、中国をして侵略を諦めさせるものでありさえすれば、オフショア・コントロールは成立する。
オフショア・コントロールは、中国の領空へ侵入せず、「決定的な勝利」は求めない。その意味では、オフショア・コントロールとは、「永遠の現状維持」戦略だともいえる。
この「永遠の現状維持」は中国だけに適用されるわけじゃない。アメリカは、半島にも適用しようとしているフシがある。
10月3日、日米の「2+2」の後の記者会見でアメリカのケリー国務長官は、「北朝鮮の行動は国際的な慣例や基準に違反しているものの、もし北朝鮮が非核化に対する誠意を表せば米国は対話に応じる用意がある。しかし、米国が一方的に譲歩することはあり得ず、これは北朝鮮の核開発計画の継続を防ぐためのものであるということを北朝鮮は明確に理解する必要がある」と述べ、米朝不可侵条約締結の可能性に言及している。
こんなことをいってしまったら、北朝鮮は勿論のこと、中国も、アメリカは本気では、戦争する勇気なんてないのだと、ナメてかかるのではないか。
今後中国は、益々、東アジアや東南アジアに対して、挑発と侵略を強め、アメリカをアジアから完全に追い出しに掛かるのではないかと思う。中国のA2/ADは正にそれを体現するもの。
それに対してアメリカは、オフショア・コントロールによってで、A2/ADを実現させまいとしてる。つまり、今後10年か20年の間に、インドからASEANを経由して日本に繋がる沿岸部において、中国とアメリカとの間での主導権争いが繰り広げられると思われる。
今は、自由主義圏側にいるASEANとて、アメリカによる安全保障が担保できないとなれば、中国に飲み込まれる危険はうんと高まる。
日本にとっても、ASEANを失えば、シーレーンを失うことにも繋がるから、ASEANの未来は、日本の運命にも大きく関わっている。その意味では、TPPはアメリカとASEANを繋ぐ鎖になる可能性がある。
果たして、ASEANをTPPの陣営につなぎ留めておけるかどうか。沿岸に知的財産権という"壁"を築いて、海賊版という"怪獣"の侵攻を食い止めることができるかどうか。そして、パシフィックリムを一大経済圏として繁栄させる未来を作り出せるか否か。
アメリカだけが、"イェーガー"であった時代は終わりを迎えつつある。
この記事へのコメント
白なまず
戦国武将は経済、情報、軍事力、、、など様々な人事をつくしても戦いに勝つかどうかは時の運として占いを真剣に行ったり、神仏に加持祈祷などを行っていた。現代の科学万能の科学宗教を信仰している秀才君では此れからの激変の時代、不測の事態で右往左往して勝利する事は難しいだろう。勝負に勝つためには運が必要だ。この事を知る企業や経営者、例えば新聞社や警視庁でも信仰する神社があり、粛々とお祭りし、場合によってはお祓いなどを行っているようである。現実的に状況分析上完璧でも、天災などの不測の事態が起こり、不利になったり、戦いに負ける事も十分ありうる。その事をふまえると「預言」の有難さは信じるものにとっては神業であり、最後の決断の理由になる。支那人も当然占いや預言を信じていないふりをしていても、内心そうとう気にしていると思われる。そういう意味で支那朝鮮人にたいして心理戦としてオカルトを使うのも一つの手ではないかと思う。つまり、日本には決して勝てない事、日本人を呪う者は神から呪われる事、などと思わせればそう簡単には手を出さなくなるし、日本の味方になりたがるはずである。事実、先の戦争では日