10月4日と5日の両日、インドネシア・バリ島で、21ヶ国・地域の外務大臣、貿易担当大臣等が参加するAPEC閣僚会議が行われた。

日本からは、岸田外務大臣と茂木経済産業大臣が出席し、貿易・投資の自由化・円滑化や地域の経済連携の推進など、幅広い分野について意見交換が行われた。
会議後の共同声明はこちらで公開されているけれど、まず、12月の第9回WTO閣僚会議(MC9)にて、ボゴール目標の成果を確認することを宣言している。
「ボゴール目標」とは、1994年11月、インドネシアのボゴール宮殿での首脳会議にて採択された「APEC経済首脳の共通の宣言(ボゴール宣言)」のことで、APEC首脳はこの地域に自由で開かれた貿易投資を実現するとした宣言。
このボゴール目標に参画しているのは、全部で21の国および地域。オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、アメリカの5ヶ国(先進エコノミー)は2010年までに、そしてそれ以外の国・地域(途上エコノミー)は2020年までに貿易及び投資に対する障壁を削減し、財、サービスおよび資本の自由な流れを促進することを目標に置いている。
APECは2010年に、ボゴール目標の達成に関する中間評価を行った。評価は、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、アメリカの5ヶ国(先進エコノミー)に加え、自ら評価に参加することを表明した、チリ、中国香港、韓国、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、チャイニーズ・タイペイの8つの国・地域(途上エコノミー)の計13エコノミーを対象に行われ、「13エコノミーは地域の自由で開かれた貿易をある程度達成した」と結論づけられた。
ただ、各国首脳達は、なお敏感な分野で障害が残っているとし、2020年までに、21エコノミー全部がボゴール目標を達成することを確認し、2012年には、自由化と円滑化の個別行動計画(IAP)が提出され、新プロセスが開始されている。
ゆえに、APECにおけるボゴール目標は、自由貿易という意味において、TPPやRCEP、FTAAPの先輩に当たる存在。今回のAPEC閣僚会議で日本は、「FTAAPの育ての親としてのAPECの役割を重視し、TPPやRCEP等の地域経済統合に向けた交渉が進んでいることを評価した上で、日本が、これら地域経済統合の全てに関与している強みをいかして、各国の橋渡しの役割を担う」と述べている。
また、APECと地域の経済枠組みについても、成長戦略をはじめとする日本の取組がAPEC、ひいては世界経済の成長への貢献となることや、APECが安定し、一層の経済成長をしていくためには、地域全体で「航行の自由」をはじめとする「法の支配」が確立することが重要であるとした。。
これらは、言われてみれば、至極尤もなことで、海に面した国々の集まりであるAPECで、自由貿易を安定・確立させるためには航行の自由と法の支配は欠かせない。実際、会議の場で岸田外相は「人やモノを自由に移動できるようにすることが不可欠だ。APECは海で結ばれており、航行の自由を引き続き確保することは全てのメンバーの利益となる。…法の支配の確立が、経済成長の基礎になる」と述べたようだ。
これによって、日本は、APEC地域全体の経済成長は"自由と法の支配"によって為されるべきであると宣言したことになる。岸田外相は会議後、記者団に「私の意見に賛同したり、前向きな意見を発したりした国はいくつもあったが、詳細は控える」と述べているから、日本がTPP、RCEP、FTAAP全てに参加していて、各国の橋渡し役に適している立場でいることを考えると、日本は、今後のAPECを方向づけるに十分な影響力を発揮したといえるだろう。
同行筋によると、この岸田外相の「航行の自由と法の支配」発言を受け、フィリピンのデルロサリオ外相が具体例を挙げて中国を批判。これに対し中国外務省の李保東次官は、航行の自由を脅かす行為はしていないという趣旨の発言をし、岸田外相に対して、「個別の国が自分の政治目的を達成しようと宣伝しており、他人の共感は得られず、成功しない。…経済が主題であるAPECでは政治や安全保障などの問題は取り扱わない伝統がある」と批判したという。
まぁ、発言の自由が許されている限り、反論は好き勝手にできるけれど、自由貿易が成立する為には、政治の安定(法の支配)と安全の保障は必須の条件。いつ何時強盗・略奪されるか分からない"無法地帯"で商売は成り立たない。
既にどこかの国のせいで、APECの海は、その"無法地帯"と化しているのではないか。であるからこそ、岸田外相のいうように、いくつもの国が"自由と法の支配"に賛同を示したと考えるべきだろう。
従って、「航行の自由と法の支配」に関して、他国から具体例を挙げて批判されてしまうこと自体が既に問題なわけで、中国は、きちんと説明して相手を説得し、批判発言を撤回させるところまでいかないと、いくら反論しても空を切るばかり。
「自由と法の支配」という言葉は、安倍総理が何度も外遊等で口にしているけれど、この概念自体が既に、かの国に対する楔となって打ちこまれている。日本は「自由と法の支配」という世界観を掲げてAPECを主導することは、同時に日本の安全保障の一翼を担うことにもなる。
この記事へのコメント
白なまず
未蛙
八百万の神のお一人様キリストの造物主♪
白蓮経は太平天国の頃から禁教令の大陸周辺諸国に?
法とは観世音なりの平安仏教押し売りの安倍ちゃんとは?