「2+2」と2016年
10月3日、 日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が東京都内の外務省飯倉公館で開かれた。
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協議後の共同発表の全文はこちらで、公開されているけれど、内容は、有事の際の自衛隊と米軍の役割と連携について定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を2014年末までに見直すことや、中国に対し、国際的な行動規範を順守し、軍事の透明性を向上させるよう促していくことなどを確認した。
事前の報道では、共同声明にアメリカが「強い日本を支持する」との文言が入ると言われていたのだけれど、公表された全文にはそのような表現は見当たらない。ただ、直接的表現ではないけれど、「米国はまた、地域及び世界の平和と安全に対してより積極的に貢献するとの日本の決意を歓迎した」という部分がそれに当たるのかもしれない。
尤も、協議の中で、アメリカは安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて取り組んでいることについて、「歓迎し、日本と緊密に連携していく」と表明しているから、アメリカ側が日本の立場を歓迎していることは間違いない。
共同声明には、「二国間の安全保障及び防衛協力」として、具体的な取り組み内容が列挙されているのだけれど、中でも、防衛協力小委員会(SDC)に対し、紛争を抑止し、1997年の日米防衛協力のための指針の変更に関する勧告を作成し、2014年末、までに終えるよう指示したことは注目してよいだろうと思われる。
日米防衛協力のための指針とは、1978年11月に日米安全保障協議委員会(2プラス2)で了承された、日米軍事協力行動の研究・協議を進めるうえでのガイドラインのこと。
当時、冷戦下におけるソ連の日本侵攻に備え策定され、日本が攻撃された際の自衛隊と米軍の役割分担が記されていた。具体的には「日本への侵略の未然防止態勢」、「日本への直接武力攻撃への対応」、「極東有事の際の日米の協力」の3点について基本的な考えが示されている。
この指針は1997年に改訂され、朝鮮半島有事を想定し、日本有事に至る前の周辺事態での連携を明記。そして、去年末には再改定への協議を開始する予定だったところ、北朝鮮のミサイル発射などでずれこんでいた。
今回これの見直しを2014年末までに終えると期限を切った。これはいうまでもなく、2015年末に予定されている、朝鮮半島の戦時作戦統制権の韓国軍への返還、及び2016年の在韓米軍の撤退とリンクしているものと思われる。
今、韓国は2015年末の戦時作戦統制権の返還を延期してくれ、とアメリカに泣きついているけれど、アメリカのマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は、7月18日に 「2015年末となっている戦時作戦統制権(統制権)の韓国軍移管を、予定通り進めるよう指示した」と明かしている。
また、ワシントンポストは、上院軍事委員会委員長であるカール・レビン議員が7月30日、コティス・スカパロティ駐韓米軍司令官指名者に対する承認聴聞会で 「戦争が起きた時、韓国の国防に責任を負わなければならない最も主要な責任は韓国にあるとみることが重要だ」として「韓国は主権国家だ。主権国家は戦時には自らの国防に責任を負わなければならない」と話したとした上で、一部の官吏らは韓国が自身の国防に責任を負いたがらないことに対して不満を表出していると伝えている。
先日、韓国を訪れたヘーゲル国務長官は、戦時作戦統制権転換のために韓国軍が備えなければならない能力は何かとの記者の質問に、「最も重要な部分はミサイル防衛(MD)だ」とし、「情報・監視・偵察(ISR)と指揮・統制・通信・コンピュータ(C4)も韓国軍と議論しなければならない重要な部分」だと答えている。
また、10月2日のキム・グァンジン韓国国防相との会談でも、北朝鮮の核兵器による脅威について具体的な対応を協議し、北朝鮮が核兵器を使用する確実な兆候をつかんだ場合、米韓両国の軍が合同であらゆる戦力を動員して先制攻撃を行い、これを防ぐことで合意しているから、アメリカは、韓国の安全保障については、北朝鮮のミサイルが一番の脅威になると考えているものと思われる。
このように、アメリカは韓国からは手を引き、その分日本との連携を強めつつ、更に日本が安全保障の前面に立つことを歓迎している。これは大きな流れでみれば、アメリカが段々と太平洋から手を引いていくように見える。
極東地域に対するアメリカのプレゼンスが弱まれば、その分、他の国が影響力を強めようとするだろうことは火を見るより明らか。従って、今後、日本は安全保障の最前線に立たざるを得なくなることはほぼ確実。
このときの韓国の立ち位置が、日米側なのか、中国に飲み込まれているかは、重要なポイントになる。日本の防衛線を38度線に引けるのと、日本海で引くのとでは、日本の防衛の有り方が全然違ってくるだろうから。
今回の2プラス2では、「弾道ミサイル防衛協力」として、日米の弾道ミサイル防衛(BMD)の能力強化を確認し、2基目のXバンドレーダー「AN/TPY-2」システムを京都の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に配備することを確認している。
※1基目のXバンドレーダーは、青森県つがる市の航空自衛隊車力分屯基地に配備。
防衛省は、経ヶ岬分屯基地を選定した理由として、「日本及び米国に飛来する弾道ミサイルの探知・追尾能力の向上を図ることが可能な位置にあること」、「レーダーを日本海側に向けて使用することになるため、遮断するものがなく見通しがよいこと」、「上空に航空路等がないこと」、「周囲に電波塔や放送塔などがなく、電波環境がよいこと」の理由を上げているけれど、日本海に面し、半島にも近いこの位置にXバンドレーダーを配備する意味は大きい。
来年末の「日米防衛協力のための指針」の見直しがどのような内容になるのかについては注目すべきだと思う。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
特に, 佐藤正久防衛省政務官の再選直後の交代
の意味が分からない. 彼は国防の重要性を訴えて
上位当選したのではなかったか.
この副大臣・政務官の総入れ変えが決まった時期が
安倍晋三が政治的に敗北した時期になるのでは
なかろうか.
安倍氏は政治的に敗北したのか?
勿論, 消費税増の前と後では彼の言説の評価が
変わらざるを得ないし, 景気対策の数字が公表され
るまでの経済の落ち込みが否応なしに安倍敗北を
国民に感じさせることになる.
誰が仕掛けたのか知らんが(財務省ではない),
近衛内閣のどたばたを考えざるを得ない.
sdi
「オフショア・コントロール」戦略みたいな動きをしているように見えますね。
冷戦期は日本の自衛隊が盾で極東米軍が矛の関係でしたが、今度はどんな役割分担になるかですね。極東アジア戦力の立て直しを図るアメリカにとって、今回の消費税増税決断による安倍政権の不安定化は計算外でしょうね。日本の政権が長期安定政権でないと在日米軍の再配置も支障がでますし、なにより極東アジア戦略に関して日本の協力が得にくくなりますし、またぞろ政権交代でも起きたらたまらんでしょう。幸か不幸、自民党以外の受け皿が存在しないので自民党内での政権交代ですみそうではありますが。石破幹事長が勉強会を始めたそうです。党内政局は安倍後に向かってますね。
我々にできることは、政治家を見る目を養うことでしょう。威勢のいい発言やエキセントリックな言動をする人ではなく、本当に仕事のできる政治家を選ぶ目を養わなくてはなりません。出身とか経歴とかより、そちらのほうがよほど重要です。
白なまず