今日は、もうこの話題しかないですけれども、細かい分析は後に譲るとして、ごくごく簡単に雑談で…

10月1日、安倍総理が官邸で記者会見し、消費税率を来年4月から8%に引き上げると表明しました。予想どおりとはいえ、残念ですね。
会見の全文はこちらにありますけれども、安倍総理が「直近のデータによれば、民間給与は僅かに上昇傾向に転じましたが、景気回復の実感はいまだ全国津々浦々までには波及してはいません。」と述べていますから、まだデフレ脱却したという認識は持っていないようです。そして、その状況下での増税には「消費は落ち込み…財政規律も社会保障の安定も悪い方向へと行きはしまいか」と、そのリスクも認識しています。
その上で、安倍総理は、「経済再生と財政健全化は両立しうる」として、増税を決断しました。けれども、両立させるためには、何某かの対策が必要で、安倍総理は、大胆な経済対策がそれだと述べました。
その「経済政策パッケージ案」については、こちらに簡単な解説がありますけれども、項目だけ拾うと次のとおりです。
◆家計向けの政策経済対策については、一部に一過性のバラマキではないか、という批判があったように思いますけれども、それに対して、安倍総理は「社会保障の充実や安定などのためにお願いする負担を緩和しながら、同時に将来にわたって投資を促進し、賃金を上昇させ、雇用を拡大する。まさに未来への投資です。企業収益の増加が賃金上昇、雇用拡大につながり、消費を押し上げることを通じて、さらなる企業収益につながっていく、経済の好循環をつくるための投資を進めます」とし、一過性のものではないと答えています。
・低所得者向けの「簡素な給付措置」
・「住宅ローン減税継続」と「すまい給付金」
・「自動車取得税の廃止」と「自動車重量税」
◆企業向けの政策
・「所得拡大促進税制」の拡大〜賃上げ促進税
・規制緩和のための「国家戦略特区」創設や各種法案の策定
・「設備投資」や「研究開発」を促す控除
・「復興特別法人税」の1年前倒し廃止
確かに、企業向けの政策には「賃上げ促進税制」であるとか、「先端設備」への投資には税控除を行うなど、企業収益を増加させる方向の政策が並んでいます。
けれども、経済は企業側、サプライサイドだけ充実しても、それだけで良くなるわけではありません。需要もそれに応じて増えていかないと、お金が循環していかないからです。
いくら、企業収益が上がるように企業減税をしたところで、それ以上に消費が落ち込んで、売れなくなってしまえば、企業は商品を、作るだけ、持っているだけで赤字になります。その赤字を減らそうとすると、供給を絞るようになりますから、結局元の木阿弥です。
ですから、それを避けるためには、消費側、すなわち家計側にむけた経済政策が消費を促進させるものでなくてはなりません。それも、企業の供給能力を上回るほどの需要を生み出せるものであるのが望ましいのですけれども、今回の政策では、正直物足りないというか不十分ではないかと思います。
なぜなら、家計向けの政策で、現金給付或いは減税を行うとしていますけれども、現金給付は一回限りであり、減税は自動車や住宅ローンといった高額商品を買う場合に限られているからです。
現金給付にしても毎月貰えるのならまだしも、一回限りのものであれば、一度使えばもう終わり。次はありません。そして、自動車減税や住宅ローン減税にしても、一人で何台も車を買う人はそうはいませんし、何軒も家を持つ人なんかもっといません。
つまり、サプライサイドに対する手厚さに比べて、消費者側に対する手当がそれに釣り合っていないように見えるのですね。おそらく、お金の流れは、消費者の所でスタックしてしまい、資金循環が滞って、デフレ脱却の大きな足枷になると思います。
ただ、その打破として、唯一可能性が考えられるのは、各企業が、給与を上げることなのですけれども、仮にそすなったとしても、殆ど全ての企業が一斉に給与を上げるようでない限り、効果は薄いと思います。なぜなら、消費増税は広く遍く、全ての消費者に対して行われるからです。
例えば、ある好業績企業が従業員の給与を上げたとします。けれども、その給与が上がった人が全体の数%しかないのであれば、消費を刺激する効果は、いうまでもなく、限定的なものになります。
そもそも、全ての企業が黒字を出して、その全てが給与を上げるなんてことはまず考えられませんし、万が一、そうなることがあったとしても、それは黒字を出した企業から順番に行われる筈です。
したがって、企業に対する「賃上げ促進税制」がうまく機能したとしても、それが効果となって目に見えてくるまでには、それなりに時間が必要になります。けれども、その一方で、消費増税は、最初からずっと100%の消費者にのしかかっているのです。これは消費者の消費マインドを低下させ、デフレ圧力になります。
つまり、消費を促進させるための筈の今回の政策は、その効果が限定的になる可能性がある上に、効果がでてくるまでに長い時間が必要であるため、それまでの間に消費増税負担によるデフレマインドが、景気刺激策を追い越して進んでしまう懸念がある、ということです。
したがって、増税と経済対策というブレーキとアクセルの両踏みという今回の政策は、一見、綱引きのように働くようにも見え、それほど景気は悪化しないのではないかという意見もありますけれども、その肝心のブレーキとアクセルの"利き"には、大きく差があるということに留意しなければいけないと思うのです。
この記事へのコメント
sdi
「景気の『気』は気分の『気』」でもあります。今回の消費税増税は、上がり調子になりかけていた日本の消費者や労働者の気分に冷水を浴びせかけたようなものです。ここまで財務省に主導権を握られてしまっては「一過性のものではない」という安倍総理の発言に、どれだけの有権者が信頼をよせるでしょうか?これから、消費税増税の影響がわかってくるにつれ増えてくるであろう地元の支持者や有権者からの「ご意見」に晒される自民党の県連や地方支部の方々は大変ですね。まあ、いちど経験済みですけど。
mony
零細とはいえ事業をしている場合は売上に伴ってかかるので、かなり大きな
数字になると思います。それがなけなしの利益を食い潰したら設備投資どころか
人件費削減に動くのではないでしょうか。
彼に期待した自分が情けないですが、さりとて他に人もいないし・・・
結局「誰がやっても同じ」ってやつになるのか。
そら
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ああ
白なまず
ちび・むぎ・みみ・はな
やって良いところはやらせてもらえて,
増税は止められない.
ちょっと勉強した国民に見透かされるとは
安倍晋三の政治力とはこの程度なのか.
色々ともっともらしく説明があるのかも知らんが,
その有力な経済再生の切札なるものも発表されない
内に増税とは, およそ常軌を逸している.
リーマンショックで追い出された麻生氏の
怨念が見えたような気がする.