弾薬供与の波紋と積極的平和主義

 
昨日のエントリーのつづきです。

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12月24日、韓国国防省報道官は記者会見で、南スーダンに派遣した韓国軍が自衛隊から弾薬の譲渡を受けたことについて、「平和維持活動をする中で、現地で必要な物品をお互いに協力して補充することはよくある。どの国とも行うことができる」と述べ、そもそも銃弾は不足していなかったとして、日本からの提供はあくまでも、事態の長期化に備えた「予備」だと、何も問題ないことを強調した。

だけど、韓国国内では、日本から弾薬の提供を受けたこと自体が波紋を呼んでいるようだ。韓国の大手通信社ニューシースは、24日付コラムで「過去の日本を人間に例えるなら、何十年も町内でレイプと殺人を繰り返し、他人の財産を奪って奴隷として働かせていたような『極悪非道』の者である。…一生保護観察しなければならないような要注意人物に武器を持たせたばかりか、それに私たちが『弾丸をちょっと貸してくれ』と言い出したのだから、世論に火がつくのも当然だ」と、過激な言葉で韓国政府の対応を非難している。

要するに、彼らは、安倍政権が今回の弾薬供与を利用して「武器輸出三原則」を破り、「積極的平和主義」の拡大を目指すのではないかと警戒しているということ。

確かに、今回の弾薬供与は"例外"としながらも、「武器輸出三原則」を破ったことは事実だし、その"例外"なるものは、過去には、中曽根政権時代のアメリカへの技術提供と、小泉政権時代の弾道ミサイル防衛システムの共同開発の2つだけ。

これらは、どちらも日本の国防に直結するイシューだったのだけれど、"例外"とするハードルを下げない限り、今回の供与は、建前上は、それらに匹敵するものだということになる。

12月23日、今回の供与について、菅官房長官が談話を発表しているけれど、政府は「国連からの要請」および、「緊急の必要性・人道性が高い」ことを理由に例外措置とする見解を示している。

つまり、"例外"の箍が緩んでいないのならば、今回の弾薬供与を持って、日本政府は、国際社会における緊急性や人道性を求められる事項は、日本の国防に直結しうると判断したことになる。ある意味において、「一国平和主義の殻」を破って顔を出したように見えなくもない。

ゆえに、おそらく世界は、これが「積極的平和主義」の一環だと受け止めるのではないかと思われるし、それを選りに選って「韓国」にアシストされるとは、何とも言葉がない。



韓国は、日本の積極的平和主義にも、集団的自衛権の行使にも、目を血走らせて反対していたけれど、現実の紛争というリアリズムの前には、そんな戯言など消し飛んでしまう。

事実、韓国は、今回の弾薬補給にしても、日本だけでなく、アメリカからも供与を受けている。アメリカはアフリカ司令部配下部隊の5.56mm弾3400余発、7.62mm弾1600発を12月22日に韓国軍に送っている。

それほどまでにして、弾薬を集めなければならないほど状況は切迫しているということ。戦時における武器弾薬補給は一分一秒を争うのは言うまでもない。

韓国政府は、今回の弾薬供与の提供について、日本側に公表しないように要請していたという。その理由は明らかではないけれど、反政府軍に弾薬が十分でないことが知られることによる危険を減らしたかったという思惑もあったのではないかと思う。

だけど、日本政府は、官邸主導で提供と官房長官談話による公開に踏み切った。

これは、提供の要請が国連からあったことに加え、弾薬が、韓国隊の隊員及び避難民等の生命・身体の保護のためのみに使用され、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の管理の下に置かれるという、いわば「非軍事行動」にあたることを考慮したのかもしれない。ただ、今回の事例は、もしかしたら特定秘密保護法でいう、何が"特定秘密"にあたるのかを図る一つの指標になるかもしれない。

逆にいえば、特定秘密法案が可決した今だからこそ、こうしたことが「公表」されるようになったともいえ、その意味では、安倍総理が述べていたように、「特定秘密保護法によって、透明性が増した」とアピールできると思う。

それにしても不思議なのは、武器輸出三原則を守れ、だとか、集団的自衛権の行使で、戦前に戻るなとか、いつもの批判を繰り返す、サヨクやマスコミがこの件に関しては静かなこと。

どんな事情で、ダンマリを決め込んでいるのかは分からないけれど、この件を黙認したということは、人命や人権を守るための武装および武器使用はOKだと認めたことになる。その意味では、国内マスコミは、リアリズムな判断をしたということになる。

これで、もしも、今後、同じような別の事例が起こったときに、マスコミが批判したとするならば、それは明らかなダブルスタンダードであり、国民は、その背後にある意図を見抜かなくちゃいけない。

マスコミは自分達は、「不偏不党」だと看板を掲げてみせるけれど、それが本当にそうなのかどうか。今回の弾薬供与は、マスコミに大きな睨みを利かせる布石になるだろう。




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この記事へのコメント

  • ス内パー

    ん? 今回の弾薬補給を公表『しない』ことで備蓄不足とみなされ惨劇にあうリスクはあるでしょうが弾薬補給後に公表することになんのリスクがあるというのです?
    リスク的にはむしろ最善手に近いかと。

    政治的な韓国と野党のメンツはどうあがこうが潰れますので公表しようがしまいがそれも無関係でしょうし。
    2015年08月10日 15:21
  • opera

    今回の件に関する率直な感想は、「韓国との外交的裏ルートが潰れているというのは本当のようだし、少なくとも安倍政権は再構築するつもりがないんだな」というものでした。つまり、慰安婦問題が典型ですが、従来の日韓関係は表面的には日本に強硬な態度を示しつつ裏では頭を下げて日本側の譲歩を引き出す、という韓国の二重外交が成立していました。これは、日中間の尖閣棚上げ論と同様に、日本側の一方的な譲歩か発言の自粛で成り立っていましたが、ほとんどの場合、日本側に不利益で外交上の禍根を残す結果になっていました。そして、日本の反日マスゴミが実態を知りながらこれに便乗し政府批判を行なうという構図も存在していました。
     安倍政権は、従来の日中韓にあったこうした構図を明確に拒否するという姿勢で一貫しているように見えます(中国はこの問題の深刻さに今年の春頃に気づいた節がありますが、韓国はまだ充分に理解していないかも)。軍事的にも韓国軍に既に弾薬が渡った後なら要請の公表も問題は無いでしょうし、特定秘密法もまだ直接には関係していない気がします(施行は1年後)。
     また、武器輸出三原則は、それが単なる政治的指針に過ぎないとい
    2015年08月10日 15:21
  • sdi

    日々野殿指摘の通り特定機密保護法を元に、「機密に当たらない」として公開したというなら、決定プロセスで軍事面でのリスクが考慮されたのでしょうか?
    また、韓国側の要望を無視する形になることの外交面でのリスクは?。私は今回の公表には賛成出来ません。
    2015年08月10日 15:21
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    単に南朝鮮が泣き付いてきたからに過ぎないし,
    この件が今後のマスコミに何らの牽制になるとも
    思えない.

    支那様のNHKや真っ赤な(嘘の)朝日や毎日(が嘘の)新聞
    のメンタリティは全く支那や半島と同じなのだから
    彼らがダブルスタンダードだと思う訳もない.

    最近の半島の様子を見ればそう思わざるを得ない.

    我々が思うように相手も思うと考えるのは,
    国際的には通用しない. と言うよりも, 日本の
    メンタリティーこそ世界では希少種であり
    保護対象に値する.
    2015年08月10日 15:21

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