中国の月着陸とルナリング

 
今日は簡単に…

画像
 ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします。

12月14日、中国の無人月探査機「嫦娥(じょうが)3号」が月面への軟着陸に成功した。月面着陸は、1976年の旧ソ連による「ルナ24号」以来37年ぶり。世界でも旧ソ連、アメリカに次いで3カ国目。

12月2日に打ち上げられた嫦娥3号は、12月6日には月周回軌道に投入され、高度を徐々に下げ、近月点が15kmになったところでエンジンを逆噴射する動力降下段階に移行、月面までの高さが数メートルになったところで、エンジンを停止し、月 の引力により自由落下、「虹の入り江」に着陸を成功させた。翌15日には、搭載していた探査車「玉兎(ぎょくと)号」を月面に降ろし、探査を開始したようだ。

玉兎号は、重さ約140キロの6輪無人探査車で、4台のカメラと地中レーダー、そして、2本の掘削用ロボットアームを使い、遠隔操作などで、3ヶ月以上かけて月の土壌や岩石、地殻を調査する。また嫦娥3号本体には、月面から天文観測を行うための望遠鏡本体と反射鏡回転台及び極端紫外カメラを装備していて、地球の大気圏の各層や、地球の周囲の粒子群の構造を測定することになっている。

観測データは嫦娥3号搭載の通信システムにより地球に送られるのだけれど、月は夜になると、マイナス150℃にもなり、それが地球時間で2週間続く。何もしなければ、機器が凍り付いてしまう為、放射性同位体元素熱源(RHU)とよばれるヒーターで保温したまま"冬眠"して過ごし、朝になると活動を再開する。

月の夜は、アメリカの探査機でもたった1回しか過ごしたことがないらしく、嫦娥3号を3ヶ月に渡って、運用するために、この放射性同位体元素熱源が開発されたのだという。中国が嫦娥3号による月面探査に成功すれば、この技術は今後の月面探査のキー技術になると見られている。



中国は2020年前後に独自の宇宙ステーションを建設する目標を掲げるなど、宇宙開発に力を入れているのだけれど、今回の月着陸は、2003年3月に国家プロジェクトとして始まった「嫦娥計画」の中の一つ。

嫦娥計画は大きく「探査計画」、「着陸計画」、「滞在計画」の3段階に分かれていて、今回の嫦娥3号の月着陸は「探査計画」に当たり、今後は嫦娥4号の着陸、嫦娥5号によるサンプルリターンが計画されている。

更に、「着陸計画」では、宇宙飛行士を月面に送り込んでの各種実験。「滞在計画」では月面基地の建設と宇宙飛行士の長期間の滞在が計画されている。

中国が月面探査に乗り出す狙いは、核融合発電の燃料になる「ヘリウム3」の獲得のためだとか、月の軍事利用だとかいう声も出ているけれど、月面探査の分野で、日本が中国に遅れを取ってしまった。2007年に探査機「かぐや」を月で周回させた時には、丁度2013年ごろには後継機を月に着陸させる構想もあったようなのだけれど、いつの間にか尻すぼみになってしまった。

中国は、今回の嫦娥3号月着陸成功を大々的に報じたのだけれど、中国国内では、その偉業を讃える一方で、「月に行ったら、大気汚染はなくなるのか?」とか、「汚職や医療、教育といった問題を解決するのが、月に行くより難しいってことがこれでわかったな」といった不満の声もあがっている。

そんな国内事情を反映してか、中国政府が2020~30年頃としている「嫦娥計画」の着陸・滞在計画について中止を検討しているという声もあるようだ。

中国誌、新民週刊は、上海宇宙技術研究院関係者の話として、「貧富の格差などが社会問題となる中、宇宙への資金投入に懐疑的な見方が広がっている。…戦線を拡大しすぎれば、得るものより失うものが多くなる」と、宇宙ステーション建設以外の計画を調整していることを明らかにしたと伝えている。

ただ、中国は、第二次大戦後、通常兵力そっちのけで、核兵器開発に大量の資金を傾斜投資してきた過去があるから、月にそれだけの価値があるとみれば、人民など無視してやってしまう可能性がある。見方によっては、それだけ戦略的だとも言える。

画像


月開発といえば、先日、テレグラフ紙など、多くの海外メディアが、清水建設の月面に太陽光発電所を建設する「ルナリング」構想を取り上げ、海外で大きな話題となっているようだ。

このルナリング構想については、去年の1月に「風と月と太陽と」のエントリーで取り上げたことがあるから、詳しくは述べないけれど、日本は、「はやぶさ」が小惑星イトカワからのサンプルリターンを成功させているのだから、やる気になれば、月着陸でも探査でも出来る筈。ここは、しっかりと国が予算をつけて、宇宙開発もアベノミクスの一環として検討してみてはどうかとも思う。

まぁ、それでも、月をぐるりと太陽電池パネルで囲むなんて、壮大すぎて、ちょっと非現実的ではないかと思えなくもないけれど、月のぐるり(外周)は、10917kmで、北米大陸の東西4517kmの2倍とちょっと。だから、月面上で建設用の無人作業機器を作るところまでいければ、丸っきり夢物語ではないようにも思う。

財政の問題はあるだろうけれど、国家プロジェクトとして何を目指すのかは今後の日本にとっても重要なこと。

画像



画像

この記事へのコメント

  • 白なまず

    almanosさんの話に便乗して、、、
    地球温暖化とやれでツバルなんかが海没すると言われているので、これに乗っりソロモン諸島からツバルのエリアにODAで清水建設にGREEN FLOATを建設してもらい。地元住民と共存しながら、ロケット開発、リゾートでNASAのケネディ宇宙センターの様なロケット打ち上げを観光の柱の一つとして、この地域の雇用と医療と教育を共有し、同時にASEAN諸国の技術力を引き上げる地域にできると思います。この地域に支那が出場てきているようなので、一気にこの地域を全部親日国にすれば、、、支那朝鮮は相当頭に来るでしょうね!

    【太平洋上の赤道直下に浮かぶ「環境アイランド」】
    http://www.shimz.co.jp/theme/dream/greenfloat.html

    【台風の発生地域(メカニズム)】
    http://fnorio.com/0042Typhoon1/Typhoon1.htm
    2015年08月10日 15:21
  • sdi

    これは、成し遂げた中国を賞賛すべきでしょう。無事に着陸した上に無人地上探査機まで発進させたのですから。
    中国の宇宙関連予算が日本のそれを抜いたのはとっくの昔ですが、その成果が現れたということですね。悔しいですが、これが現実です。現実から目を逸らしていては何もなりません。現実を見つめてどう立て直すか考えて実行にうつしましょう。
    2015年08月10日 15:21
  • almanos

    確かに、独裁国家の利点ですね。そういう所は。ソビエトもそうでしたし。日本がやるとしたらまず毎度途中で刊行が止まってしまう佐藤大輔氏の「遙かなる星」にあるみたいに「低軌道圏を生活圏にする」からやるべきでしょうね。その為にはしつこいですが「旭日のガルガンティア」は必須かもしれませんが。後はロケットガールをやれば完璧でしょう。後、中国が開発したと言っている技術は昔、ボイジャーに搭載していた「放射性同位体熱電気転換器」と同じなのではと思います。だとすると再発明したのかNASAからパクったのかでしょうが。この際、現実に「ソロモン宇宙協会」を立ち上げてしまっても良いんではと思いますね。ええ、ガルガンティアもそこで造ればうるさい役人絡みの問題もクリアできるし。
    2015年08月10日 15:21

この記事へのトラックバック