
今日は極々簡単に…

12月7日、オーストラリア政府が日本に対し、豪海軍の新造潜水艦12隻の建造計画について、日本に推進システムの技術供与を求めていることが分かった。
オーストラリアのジョンストン国防相は「アボット政権は、防衛分野で日本と緊密な協力関係を築くことを望んでいる」とし、日本が持つ非常に効果的な潜水艦技術を、オーストラリアの新造潜水艦に導入したい考えを示している。
オーストラリアの次世代潜水艦開発計画については「豪に輸出される『そうりゅう型』潜水艦」のエントリーで取り上げたことがあるけれど、オーストラリアは日本の潜水艦技術を高く評価している。
非常に長い海岸線を国土に持つオーストラリアは、海岸線を守るために、航続距離が長い艦船を必要とするのだけれど、今の時代の軍事における海の主役は潜水艦。機動能力といい、隠蔽性といい、攻撃能力といい最も強力な装備の一つとなっている。
オーストラリアは、21世紀に入ってから、その国防戦略を「本土防御」から「越境防衛」に転換し、より長い航続距離とより高い電子兵装、そしてより多くの武器積載を潜水艦に求めるようになっていて、今回の新造潜水艦建設計画もその一環。
本当はこれくらいの長々航続距離を持ち、且つ、多機能・重武装の潜水艦となると原潜が第一候補になる筈なのだけれど、どうやらコストの面で、原潜には手が出ないらしく、通常機関では最高の能力を誇る日本の「そうりゅう級」潜水艦に非常に強い興味を示しているという。
もっともこれは、昨日・今日出た話ではなくて、2012年9月の日本とオーストラリアの防衛相会談で装備技術協力を中心とした防衛協力を進める方針を確認しているし、2013年2月には、潜水艦技術の供与を防衛省が検討開始したとの報道もあった。
だから、今回のオーストラリアの要請は、いわば"催促"のようなものだとも言える。
先日の中国の防空識別圏設定に関して、オーストラリアがはっきりと反対の意思表明をしていたけれど、もしかしたら、潜水艦技術の供与で、日本の機嫌を損ねてはいけないなどと考えたというのは、下衆の勘繰りか。
まぁ、技術を供与したはいいけれど、それが第3国に横流しされては堪らない。オーストラリアはついこの間までは親中のラッド政権で、9月の総選挙で親日のアボット政権に代わったばかりという事情を考えると、安易に技術を出さなくて良かったと思う。
ただ、中国牽制を考えると、ASEAN、オーストラリアの海軍力増強は歓迎すべきこと。慎重な判断が必要だけれど、もしも、技術供与するのなら、それに見合うだけの何かが欲しいところ。少なくとも、今以上の安全保証連携を進めるべきだと思う。
潜水艦といえば、先日、ハワイ・オアフ島南西沖の深さ約700メートルの海底で、旧帝国海軍の伊400型潜水艦が発見されたとの報道があった。
伊400型潜水艦は全長約120メートルあり、姉妹艦の伊401、402と合わせて当時世界最大の潜水艦。燃料補給を行わずに世界のどこへでも到達できる能力を持ち、800キロあまりの爆弾を搭載できる翼折りたたみ式の水上機・晴嵐3機を格納。潜水母艦とも呼ばれていた。
だけど、伊400型潜水艦は大戦当時は限定的に運用されたのみで終戦を迎えている。今回発見されたのは、調査のためハワイに送られていたうちの5隻のうちの1隻で、これらの伊号潜水艦は、ソビエト連邦に技術情報が漏洩する恐れを封じるため、アメリカ海軍の手によって撃沈・海没処理されたもの。
その当時、アメリカ軍当局は、潜水艦の埋葬場所など知りたがる人など誰もいないだろうと判断して記録を残さなかったという。
今回、伊400を発見したハワイ大学の研究チームは1992年から、これら沈没した"サムライ潜水艦"の探査を行っていて、2005年に伊401を、2009年に伊201と伊14を発見している。今回の伊400は4隻目の発見になる。最後に残る伊203も、そのうち発見されるだろう。
アメリカ海洋大気局(NOAA)の専門家によると、伊400型の斬新な設計は、それまで対艦兵器としかみなされていなかった潜水艦の用途を一変させるもので、「第2次世界大戦後の潜水艦は、この方向で実験と設計の変更が行われ核の時代の弾道ミサイル発射能力を持った米軍潜水艦に行き着いた」のだそうだ。
日本は、70年も前に、それほど先進的な構想を持って、当時世界最大の大型潜水艦を建造し、運用していた。その伝統と技術は今でも脈々と受け継がれているものと信じている。
この記事へのコメント
白なまず
今日のおまけ動画です。イ400の全てが分かり、しかも作戦に参加した潜水艦乗りの経験記録特撮映画です。
【さらば海底空母イ-401 幻のパナマ運河大爆撃 1983】74分
http://video.fc2.com/ja/content/201308116XLaptWQ/
わがしきしま
ちとく
ちび・むぎ・みみ・はな
イ号は「役立たず」として評判が悪く, むしろ
Uボートのように小型の同一形式の潜水艦を多数
建造すべきだったという声が高い.
これは戦闘機でも同じで, 設計技術と製造技術はあっても
大量生産と維持管理の体制がなければ使い難いだけになる.
もちろん, 運用面でも解決すべき問題は多い.
潜水艦乗りの第一の声は潜水艦を艦隊決戦の前衛に
するなということ. 米国潜水艦は運搬船の攻撃に
徹して使われており, 被害に対する効果が高い.
結局は海軍上層部の計画能力の不足, あるいは
連合艦隊長官のサボタージュとも思える無計画さが
多くの高機能装備を無駄にし, 神風攻撃隊を生み出した
といえると思う. 未だに連合艦隊長官を称える本が
出てくるのは, 米国ではFDR大統領を未だに称える人が
いるのと同じ現象だ.
sdi
オーストラリアに日本が潜水艦技術を供与するのは、「日本」にとってはメリットだらけでほとんどデメリットなしです。オーストラリア海軍が太平洋を縦断して日本近海で海自と対峙する