中国の有名無実識別圏を警戒せよ

 
多少妄想が含まれますけれども、今日はこの話題です。

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12月12日、韓国国土交通省当局者は、韓国の航空各社に対し、中国が設定した防空識別圏を通過する際、飛行計画を中国に通知することを認めたことが分かった。

これまでは、提出しないように指示していたことから、従来の方針を転換した形。一応、韓国は、中国の防空圏拡大は認めていないのだけれど、中国への必要以上の刺激を避けるため、飛行計画の提出の判断は「自主的な判断に任せる」とした。

既に、大韓航空やアシアナ航空などが、中国当局に飛行計画を提出したという。

これについて、中国外務省の洪磊報道官は「飛行計画を提出すれば、中国側の領土と領空の安全維持に役立つと同時に、航空会社の安全な飛行を保障することにもつながる」と、歓迎する姿勢を示したのだけれど、対する日本は、12日、菅官房長官が「日本政府の方針を変えることはない。…公海上空における飛行の自由を不当に侵害する。関係国と連携し撤回を求める方針は変わっていない」と従来の方針を堅持する姿勢を守っている。

中国の防空識別圏については、設定直後に、空自や在日米軍機がこの空域を飛行し、何の邪魔もされなかった。おそらく今もそうだろう。

だから、中国の防空識別圏は、最早"有名無実"圏と化してしまっているといっていい。

だけどそれは、何の意味もなさないことを意味しない。現に、いくつかの国が、飛行計画を提出している。これは、中国が一方的に決めた"俺様ルール"に従ったということであり、中国の言い分を認めたということ。その意味では中国の防空識別圏という「名が有る」ことがほぼ確定しつつある。



また、この防空識別圏という"有名"化については、韓国が後押しした感がある。

12月8日、韓国国防省は、中韓がともに管轄権を主張する岩礁である離於島の上空を含む形で防空識別圏を拡大すると発表した。拡大した空域は、中国が設定した防空識別圏だけでなく、日本の防空識別圏とも重なっている。

韓国国防省は関係国に対し、十分な事前説明をしたといっているけれど、不審な動きをする航空機については、双方のスクランブル対象になるわけだから、事前説明されたからはいそうですか、という訳にはいかない。事実、韓国国防省は、偶発的な軍事的衝突の防止が最優先課題だとし、日中などと具体的な協議を進めていくとしている。

これについて、小野寺防衛大臣は、「韓国政府の措置は中国政府とは異なり、ただちに両国間で問題になるものではないと認識している。…民間航空機に特に影響はない。…むしろ日本の安全保障にプラスになる方向に向けて努力したい」と述べている。

また、12月6日、アメリカのバイデン副大統領は、韓国で朴槿恵大統領と会談し「朴大統領の説明と韓国の努力を評価する」と、緊密に協議を続けることを条件に、韓国の防空識別圏拡大を容認する考えを示している。

つまり、韓国の防空識別圏拡大及びその公言と、それらを日米が容認してしまったこと、そのものが、中国が勝手に防空識別圏の設定をしたことに対する免罪符というか正当性を与えることになった面は否めない。

当初の段階では、アメリカは韓国の防空識別圏の拡大は認めていなかったとの報道もある。12月2日、韓国紙のソウル新聞は、ワシントンの外交消息筋の話として、防空識別圏の拡大にアメリカが反対していると報じていた。



先日、バイデン副大統領が来日して、安倍総理と会談したけれど、その後の記者会見で、中国の防空識別圏設定は、「力による一方的な現状変更」であり、東アジアの緊張の高まりを深く懸念する発言こそしたものの、防空識別圏の撤回を求める共同声明は出なかったし、続く習近平国家主席との会談でも撤回要求はしなかったと伝えられている。

更に、12月11日、アメリカ空軍のウェルシュ参謀総長は、ワシントンで講演し、中国の防空識別圏の設定について、「中国以外の多くの国も防空圏を設定している」と述べているところをみると、アメリカは中国の防空識別圏の設定だけは黙認するけれど、その運用自身は認めない、という正に「有名無実」戦略に方針を定めたように見える。

だけど、これで、日本にとっては、相当危険なことになったと筆者は見ている。中国は一端手にした"名"は最大限に利用してくるであろうから。

12月4日、習主席の側近とされる海軍の諮問委員会主任、尹卓少将は日本に対して「われわれの防空圏の法的地位に挑戦しようとしている」と批判し、日本の民間機が飛行計画の提出を拒否して防空圏を通過した場合、着陸後に罰金を科す場合があるとの考えを示したと伝えられているけれど、今後、こういった対応をやってくることは十分考えられる。

だけど、そんな「嫌がらせ」レベルではなくて、筆者はもっと激しい手段を取ってきた場合を懸念している。

まぁ、これは多分に妄想ではあると思うけれど、例えば、日本に対して、因縁をふっかけて、去年のような反日暴動を仕掛けるとする。その時、邦人が中国から引き揚げようとしても、飛行計画を出していないと、直接関係のない便を持ち出して、離陸を認めない、あるいは着陸を許可しなかったらどうするのか。

日本の民間航空機の離発着を認めないとした瞬間に、中国にいる邦人は殆ど人質になったようなもの。実際は、飛行計画書を出している国の便に乗って、迂回して脱出するとかになるのだろうけれど、出国ペースが格段に鈍ることは間違いない。

そういうことをやって、日本にも「飛行計画書」をださせて、形の上で屈服させ、後から、防空識別圏の哨戒活動などを活発化させて、「実」取ってくる。"有名無実"を"有名有実"化してくるのではないか。

まぁ、こんな強硬手段に出るのは、ちょっと考えすぎなのかもしれないけれど、政府は最悪の事態をも想定しておく必要があると思う。邦人の引き上げができるうちに、何らかの手立てが要るかもしれない。



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この記事へのコメント

  • 白なまず

    おまけ動画です。自衛隊の兵器開発能力が紹介されています。

    【防衛省技術研究本部 案内The Technical Research and Development Institute, the Ministry of Defense Guidance 】
    https://www.youtube.com/watch?v=HquX1ZjGfPE
    2015年08月10日 15:21
  • opera

    問題を整理するために、未確認のものを含め、2・3の点について述べておきたいと思います。

    ・民間航空機の飛行計画の提出は、中国の領空に入るもの(要するに中国行き)については、今回の中国のADIZ設定とは関係無く従前から行なわれていたし、そうすることが国際的慣例(逆に日本の領空を通過する中国の民間航空機も、当然日本側に飛行計画書を提出している)。問題は中国の領空を通過しない航空機で、かつ今回の中国のADIZを通過するもの(例えば台湾行き)がどう扱われているか、という点(未確認)。

    ・韓国のADIZ設定については、日本側と重複する部分について何らかのアクションを起こす場合には、30分以上前に日本側に通告することを条件に認められたという報道(未確認)がありました。もともと日本のADIZも米軍が設定したものですし、韓国のADIZも(韓国軍が監視する能力が不十分で)最終的には米軍が管理するものなら、単に米軍の管理する空域が広がっただけということかも。

    ◎基本的な問題は、中国側に領空とADIZとの理論的区別について充分な理解が無いということ。また、民間航空機の飛行経路については、ネット上で誰
    2015年08月10日 15:21
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    支那が実際にアクションを起こせば, 日本は自衛隊増強
    がやり易くなる. 支那にいる日本人に危機が及ぶことが
    あるかも知れないが, 自己責任と言って言えないことはない.
    この点について国民の多くは賛同するだろう.

    もっとも, 支那がアクションを起こした瞬間に
    共産党政府の命運は尽きたことになろう.
    支那のこれまでの発展の多くには日本の力がある.

    その意味では早くアクションを起こしてもらった方が好ましい.
    多くの若ものが自衛隊に集参するだろう.
    2015年08月10日 15:21

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