
昨日のエントリーでは、中国がマレーシアのEEZに侵入したという話題を取り上げたのですけれども、コメント欄で、たまや様から「マレーシアEEZ内ではなかったようだ」とのコメントとソースを頂戴いたしました。真にありがとうございます。今日は、これについて少し…・

1月29日、ロイター通信は、マレーシア海軍のアブドゥル・アジズ司令官は、東南アジアの国が主張する海域を中国軍艦3隻がパトロールしたという報告を否定した。アジズ司令官は、中国艦がパトロールしたのは、マレーシアのEEZから1000海里(1852km)離れた海域だ述べている。
また、アジズ司令官によると、今回の中国の行動は事前にマレーシアとアメリカに伝えられていて、マレーシア側でも特に脅威とはならなかったという。
これが本当であれば、EEZ内に侵入されたにも関わらず、マレーシア政府が抗議の声も挙げず、アメリカも非難声明の一つも出さなかったことも合点がいく。日本も特になんのコメントも出していないけれど、或いは、マレーシアかアメリカから情報を得ていたのかもしれない。
マレーシアの目と鼻の先で「主権宣誓式」をしたと大言壮語したはいいけれど、本当はずっと遠くでパトロールしてました、なんて話は、先般の東シナ海の防空識別圏を設定するとの宣言直後に、空自のF15や米軍の爆撃機に悠々と通過され、スクランブルさえできませんでした、という"オチ"を何やら彷彿させる。口でいうことに実体が伴ってない。
では、なぜそんな、直ぐばれる嘘をつくのかというと、一つには、この記事を紹介して下さった、たまや様が指摘しているように、中国国内向けの宣伝というのはあると思う。
国内の不満を外へ向けるのは中国の常套手段。人民の怒りの矛先を外へ向けることで、国内統治を図る。よくある話。
あと、それ以外には、中国自身の国家戦略が関係していることもあるのではないかと思う。
習近平国家主席は、2012年11月の総書記就任以来、中華民族の偉大な復興をスローガンに「中国の夢」という言葉を、何度も口にしている。
では、この「中国の夢」とは何ぞや、ということになるのだけれど、去年5月、新華社通信は「多次元な『中国の夢』」という記事で、「国家の富強、民族の振興、人民の幸福の広大な願い」とし、政治、経済、文化、社会、民生、精神…など多くの次元があると述べている。
これだけみると、何処にでもある普通のスローガンのように聞こえなくもないのだけれど、習近平主席は、「中華民族の偉大な復興の実現は近代以来の最も偉大な民族の夢。この夢は強国の夢であり、軍隊から見れば強軍の夢だ」とも話している。
「強軍の夢」が「中国の夢」の範疇に入るのであれば、それも、国家スローガンであり、必然的に国内に周知徹底させると同時にその実現を目指すことになる。
では、人民に対して、中国軍がその夢を実現し「強軍」になったことを示すにはどうすればよいかというと、一番分かり易いのは、他国と戦争して勝つこと。勝利の姿を見せること。単純明快。
その意味では、東シナ海や南シナ海で、周りの島々の領有権を主張し、周辺国を威嚇しては、それを飲ませるなんてのは、その一つかもしれない。
だけど、現実は「強軍」だと胸を張って言えるほどにはなってない。大言壮語した防空識別圏とて、それを管理・維持する力がないことが明らかになっている。
それでも、国内に向かって「強軍」だ、と言い張ろうとするのなら、あとは嘘をつくくらいしかない。例えば、公海を普通にパトロールしただけで、シンガポールのEEZ内で「主権宣誓式」を行なったと宣言するように。要するに、中国政府は、口先と脅しと宣伝によって、人民に「強軍の夢」を見せようとしているのではないか。
だけど、嘘も永遠につき続けることは難しい。いつかはどこかで綻びがでるもの。"大本営発表"はいつまでも続かない。本当の姿が人民に知られたら、それは不満となって一気に噴き出す。
ゆえに、今は嘘が通用したとしても、いつかはその"嘘"を"本当"にしなければならなくなる。その文脈でみるとダボス会議で、例の中国高官が「尖閣占領はシンボルだ」といった意味が見えてくるように思えてならない。
そして、もしも、中国がそれこそ中華思想よろしく、周辺国はみな中国の属国になることが、"中華民族の偉大な復興"だと考えているのなら、周りの小国に属する島をひとつふたつ獲ったところで、中華民族が復興したなどとは、到底考えないだろう。
だとすると、一部で言われているように、尖閣なんて小島は中国に譲ればいいとか、共同管理にすればいいなんてことをしたとしても、平和は訪れない。それは侵略の始まりであって、終りではないから。
ならば、やはり、中国の宣伝は、嘘なのだ、と中国国内に知らせてやったほうがいい。嘘は嘘だと知らせるだけで、人民は共産党政府に騙されていたことを知り、内圧が高まる方向に流れていく。
去年の12月7日、駐中国日本大使館の堀之内秀久副大使が、北京で開催されたシンポジウムで、特定秘密保護法の成立で日本の軍国主義化が指摘されていることを受け、「日本の情報は中国よりもよっぽどオープン。これで日本が軍国主義だと非難されるなら、中国はとっくに軍国主義国家だ」と反論したのだけれど、そのニュースは中国国内でも注目を集め、「中国版ツイッター」には、大使への罵倒もあったけれど、「どうしてうっかり本当のことを言ってしまうのですか」とか、「『日本の情報は中国よりもよっぽどオープン』。この言葉には激しく同意する」という書き込みもあったそうだ。
中国の「強軍」の力の大部分を国内統治に向かわせる。そういう戦略だってあっていい。
この記事へのコメント
almanos
泣き虫ウンモ
そのための嘘は今後、ますます増えるのではないでしょうか。
ただ、やり過ぎると軍にも呆れられますので、どこかで実力行使に出てくる可能性も否定できませんね。
たまや
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=82576&type=0
疑惑!中国の月面探査船・嫦娥3号は月に到着していない―中国メディア