マレーシアを脅かす中国とダボスでの衝撃発言

 
昨日のエントリーのつづきです。

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1月26日、マレーシアのEEZ内のジェームズ礁に中国の艦艇3隻が侵入した。中国・新華社によると、侵入したのは、中国海軍の揚陸艦「長白山」と駆逐艦2隻で、ジェームズ礁を自国領だと主張する「主権宣誓式」を実施したという。

ジェームズ礁はボルネオ島の北側、南シナ海のスプラトリー(南沙諸島)最南端に位置する珊瑚礁性の暗礁で、ボルネオ島北西部のサラワク州からわずか80キロメートルのところ。

こんな、マレーシアの目と鼻の先を自国領として勝手に宣誓する。しかも持ち出してきた艦艇が揚陸艦だから、いつでも軍を上陸させることができるんだぞ、と言っているに等しい。これでは誰がみても、侵略の意図ありと映る。

ロイター通信はこれについて、中国とマレーシアの関係を特別だとしているマレーシアのナジブ・ラザク首相に平手打ちする行為だと報じるのも当然だと言える。

それにしても、中国の傍若無人ぶりは目に余る。中国海軍は、去年3月にもこの海域に艦船4隻で侵入して、マレーシア側に威嚇発砲している。このような行為は、安倍総理が繰り返し述べている「力による一方的な現状変更」の試みに他ならない。

先日のダボス会議に出席した中国工商銀行会長の姜建清氏は討論会の席で、「安倍首相は1914年の状況を引用し、日中関係を説明した。我々は心配すべきか」と問われ、「1914年に至るまでに日本は中国を侵略し、大戦後はさらに中国の領土を奪った。第2次大戦では、日本はアジアのナチスだった。…中国は平和を愛する国。武力衝突が起こるかどうかはすべて日本にかかっている」と答えた。

中国は大戦中の日本をして「アジアのナチス」だと、よく批判するけれど、今の中国が「現代のナチス」だと世界から見られているかもしれないとは考えないのだろうか。

地政学者の奥山真司氏がこちらで紹介しているのだけれど、ダボス会議で、中国政府高官が恐るべき発言をしたようだ。

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これは、ウェブ・ニュースメディア、ビジネス・インサイダー(Business Insider)を運営しているヘンリー・ブロジット氏が「Someone Just Said Something About The Japan-China Conflict That Scared The Crap Out Of Everyone」という記事で明らかにしている。

ブロジット氏はダボス会議で、クローズドのディナーの席に参加していた。その折、ゲストとして呼ばれた「ある中国政府高官」が、尖閣問題について問われ、「多くの中国人は、中国が尖閣に侵攻することによって地域で軍事的な優位を見せつけ、このシンボル的な島を確保することができると信じている。…日米に軍事的な対処をさせて、これが大戦争につながるというのも、実はそれほど悪いものではない。」と発言し、その場を凍りつかせたという。

あるビジネスマンがマイクに手を伸ばし、その高官に向かって「これって完全に狂ってると思いませんか?これって戦争を始めるってことですよ、尖閣なんてほとんど価値もないのに、そのために世界戦争を起こすってことですか?」と聞くと、高官は、「もちろんわかってます。でも尖閣の価値というのはシンボル的なものであり、そのシンボルそのものが極めて重要なのです」と返答したのだそうだ。

ヘンリー・ブロジット氏は、この頭の良さそうな中国高官は日本との戦争は望ましいと確信している様子で、大規模戦争につなげずに尖閣に侵攻して紛争を終わらせるということを正当化したと、結論づけている。正に驚くべき発言。
そして、ダボス会議と時と同じくして、その高官の発言を裏打ちするかのように、中国海軍がマレーシアのEEZに侵入し、ジェームズ礁を自国領だと主張した。

くだんの高官のいうように、中国政府が、日米との戦争をも恐れないのであれば、マレーシアなどまったく眼中にないだろう。これからも、当たり前のように"侵略行為"を行っていくことが考えられる。

おそらく、この中国高官の発言は瞬く間に、世界のトップエリートの間に広まっただろう。ゆえに、世界、とりわけ、中国に出資している欧州資本家達は、今後の中国の動きに相当な注意と警戒を払うのではないかと思う。

そして、日本にとっても、これは他人事じゃない。地図をみれば分かるとおり、この海域はシーレーン上の重要な要衝。もしもジェームズ礁が中国の手に落ち、この辺りの制海権を中国が握ったら、先日の防空識別圏設定と同じように、中国の許可なしでは、タンカーを通過させないようにしてくることなど、十分考えられる。

唯でさえ、原発が止まって、エネルギーを中東の石油に頼っている今の日本にとって、シーレーンが封鎖されることは死活問題。筆者はこれまで何度も、シーレーンの重要性とその確保について述べてきたけれど、いよいよ本格的に対策が必要になってきた。消費税云々よりこちらのほうが何倍も重要だと思う。

アメリカのオバマ政権が世界の警察官ではないと宣言した以上、手を拱いていたら、この辺りは無法地帯にならないとも限らない。集団的自衛権行使云々で揉めていられる時期はとっくに過ぎている。




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この記事へのコメント

  • 泣き虫ウンモ

    EEZ外でも、揚陸艦がきたということであれば、マレーシアにとっては宣戦布告ととらえてもおかしくないですね。
    英国にとっては、内か外かは重要でしょうね。
    外の方が都合がいいのでは?
    マレーシアの情報自体は、華僑やらイスラムの過激派から入手できるでしょうから、手の内は理解しやすいでしょうね。
    あと、中共は軍を掌握していないので、解放軍が暴走する可能性もありますから、要注意ですね。
    2015年08月10日 15:21
  • opera

    >消費税云々よりこちらのほうが何倍も重要だと思う。

     短期的にはそう見えるでしょうが、中長期的にはそうではないと思っています。最近の安倍首相は、国際社会(ウォール街やダボス会議での演説)において、中国の危険性を訴えると同時に、新自由主義的乃至グローバリズム的政策を日本が推進することをアピールする傾向があります。個人的には、これは失われる中国市場に対して日本市場がその一部を代替する意味を含む、多分にリップサービス的要素があると思ってはいますが、その内容は時代錯誤的にズレているし、中長期的に日本の国力を削ぐもので、国際社会にとってもありがた迷惑な話になりかねません。
     先のダボス会議の席上でも、ノーベル賞のスティグリッツ教授、サマーズ元米財務長官等が日本の消費税増税に批判的な見解を表明しましたし、最近ではIMFの一部委員や欧米の経済メディアでも、日本の将来の消費及び投資を抑制するとして、消費税増税に対する懸念が広がっています。また、日本ではほとんど報道されていませんが、先のダボス会議での重要な争点の一つは、オランド仏大統領に代表される国際金融批判でした。つまり、欧米諸国でもグローバリズム
    2015年08月10日 15:21
  • sdi

    中国の一部の高官には想像力が欠けている、と取られてももしかたのないエピソードですね。
    目先の利益にしか考えてない。ここで、「強硬にでたら、中国の国威が上がるし国内の不満も逸らせる」という算盤は弾くことができても、その後の日本やASEAN各国の反応、2手先や3手先のことまで考えていってるようには見えません。
    逆はまた真なり、です。日本は中国の言動に一々振り回されりる怯えたり妥協したりしては逆に危険です。ナチスドイツに一方的に妥協して、ひと時の平和に酔った「ミュンヘン会談」の轍を踏んではならないでしょう。あの妥協の結果、ひと時の平和の変わりにフランスは降伏後、主権を制限された上にドイツの戦争経済に組み込まれあげくに自国がナチスドイツに対する反撃作戦の戦場になりました。イギリスは自国の海外領土を質に米国から軍事援助を借り戦後も配給制をつづけるほど自国経済が困窮しました。目先の利益だけに目をくらまされては逆に大難を呼び込む、という歴史の教訓を忘れてはなりません。
    2015年08月10日 15:21
  • とおる

    第二次世界大戦後、国連の常任理事国であった中華民国(現在は、台湾)が、1971年に中華民国の意向に反して、常任理事国の席を中華人民共和国に変更させられたという事実を顧ると、将来、中華人民共和国が席を変更させられる可能性は皆無では無いように思えたりします。
    2015年08月10日 15:21
  • ななし

    仮に尖閣諸島が不法占拠されたところで、無人島であるし、とりあえず日本人が殺害されることはありません。一方消費税は毎年何万人も日本人を殺します。また、国内経済がボロボロになれば、当然国防にも支障をきたします。

    国外ばかり見て国内を見ないのは非常に危険です。
    シーレーンや石油を気にするのは、結局は国内を守るためですよね?
    2015年08月10日 15:21
  • 白なまず

    支那はブルネイの石油、天然ガスを手に入れたいのでしょうね。ところがブルネイは、東南アジアのイスラム教国で、イギリス連邦加盟国で、ASEANのメンバー。ここを占領する事は今の支那海軍は可能でしょうが、イギリスは認めないし、マレーシア、ベトナム、フィリピンも認めない、そしてイスラム圏の各国も認めないでしょう。そこへ現代の赤壁とばかりに魏が押し寄せてくる。呉蜀の連携で打ち破る。周瑜と孔明の役は、、、周瑜には当事国の軍の総司令官、孔明役で日本が物資、兵器、作戦を出し南シナ海の赤壁を奪還しつつ、北京を標的に北からプレッシャーをかけて牽制する。これで支那海軍は逃げ帰り、、、1800年前の事を相変わらず繰り返す支那人。最後には、日本に孫武の様な軍神が出現し、支那を封じ込め支那人の人口を減らす事で支那人は大人しくなる。支那人はイナゴと同じで数が増えると凶暴化して手当り次第食い尽くす。食べ物が無くなれば共食いもする。体も大きくなり凶暴化する。しかし、適正な数へ減少すれば、おとなしいイナゴに戻る。彼らの心の顕れは獣どまりで中々人間になれない。だから魂の選別でまたやり直しが待っている。また56億7千万年前に
    2015年08月10日 15:21
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    どうしたのだろうか.
    真っ赤な(嘘の)朝日や毎日(が嘘の)新聞が
    どう取り繕っても事実は国民に伝わらざるを得ない.
    支那は日本の自衛隊を本格的な国防軍と
    するために頑張っていってくれるのだろうか.
    それとも劣化毛沢東が益々劣化していることを示すのだろうか.

    とにかく, 正にヤクザとしか言いようがない.
    これからはヤクザ支那と言おう.
    2015年08月10日 15:21
  • たまや

    「主権宣誓式」を行ったかどうかはわかりませんが、マレーシアEEZ内ではなかったようですね。新華社に発表させた意図は、国内向けの既成事実化、日本への挑発、それとフィリピン・ベトナム・ブルネイに対しマレーシアのように中国へ服従せよと示唆したのではないでしょうか。

    Jan 29 (Reuters) - Malaysia's navy chief has denied a report that three Chinese navy ships patrolled an area claimed by the Southeast Asian country, saying the Chinese exercise took place hundreds of miles to the north in international waters.
    He said Malaysia and the United States had been informed of the exercises beforehand.

    http://in.reuters.com/article/2014/01/
    2015年08月10日 15:21
  • almanos

    この高官。自分がどんだけやばい事言ったか解ってないでしょうね。いくら内政が切羽詰まっていても、この発言で中国は「世界の現状を、自国に都合良く変更する為の戦争を辞さない」と宣言したも同然です。つまり、アメリカや欧州の既得権益も「邪魔なら奪うよ」と宣言したに等しい。オバマ政権は今頃頭抱えているでしょうね。内政に専念したくてもこのまま行けば太平洋を失うどころでは済まなくなる。北京が本気でこれをやる気なら早々に中共は「世界の敵」認定されてしまうでしょうね。まあ、綺麗に勝てる悪役として中共はうってつけになりつつある。中共に全てを押しつけて処分する「中国問題の最終的解決」と言うべき事態が始まるかもしれませんね。特に鳥インフルエンザの蔓延具合から見ても政権崩壊時の難民がパンデミックのキャリアでアル可能性が極めて高い。国境を接している国はパンデミック付きの難民を断固拒否するでしょうし。血生臭い事態が発生しそうです。
    2015年08月10日 15:21

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