ダボスのストーカーとクレーマーとカウンター
昨日のエントリーと少し関連して…
今回のダボス会議でも、安倍総理は韓国に対して、地味に関係改善のパフォーマンスをしている。
1月22日、韓国の朴槿恵大統領が、ダボス会議の定例総会で「創造経済と企業家精神」をテーマに演説したのだけれど、そこに突然、安倍総理が現れ、最前列で朴大統領の演説を聞いている。
もちろん、これは当初の予定にはなかったのだけれど、安倍総理のダボス会議参加日程の前倒しによって、予定より早く会場入りした からということのようだ。日程の前倒しの理由については、はっきりしたことは分からないけれど、もしも朴大統領の演説を聞くために前倒ししたのだとすると、ほんの少しでもチャンスがあれば、それを活かそうとする、したたかさを感じる。
尤も、安倍総理は、朴大統領と直接会うことはなく、会場を離れたのだけれど、講演の傍聴後、記者団に対して「韓国と世界が進むべき方向について素晴らしい講演をされた。…日中韓が世界経済を引っ張っていく立場にあるという観点から話し合うべきだと思う」と首脳会談の開催を呼びかけ、「朴大統領の講演場を訪れたおかげで、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部(省に相当)長官と久しぶりに握手を交わすチャンスがあった」とも述べている。
因みに、安倍総理が称賛した朴大統領の講演というのは、実はそれほど大したものではなかったようで、海外のマスコミは朴槿恵大統領の基調講演に関する報道は殆どしなかったようだ。
実際、その場にいた、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの堀義人氏は「朴大統領のスピーチは、『企業家精神』にフォーカスをしたもので、一般論に終始して、力強さを感じなかった。疲れているのかな、と感じさせた。拍手もまばらなものだった。周りでも、スマホやタブレットをいじっている人が多かった。」とツイートしているし、同じく、この席に参加したJPモルガン・チェースインターナショナルのジェイコブ・フレンケル会長は「朴大統領が市場開放・創意性・ビジョンと関連して強力な意志を表明したが、この内容はまるで音楽のようだった。…参席者は朴大統領がした話を詳しく読みとって原則について勉強しなければならない」とコメントしている。
「まるで音楽のようだった」なんて、流石、外国人は皮肉が効いた言い回しが上手いものだと感心する。さぞかし眠かったのだろう。したがって、安倍総理の称賛コメントも多分にリップサービスではないかと思われる。
無論、韓国側も安倍総理のパフォーマンスには感づいているようで、韓国の外交関係者の間では「首脳会談を要請した後に靖国神社に参拝した安倍首相の柔軟ジェスチャーではないだろうか」という評価が出ているという。朝鮮日報は、24日付の記事で、侵略の歴史を否定し、靖国神社を参拝するなど隣国の自尊心を踏みにじる行動を続けていながら、相手側の行事に一方的に出席し、しきりに「大統領に会いたい」とアピールするのは稚気に等しい、と、安倍総理の外交を「ストーカー式外交」だと批判している。
だけど、そんなことをいうのなら、朴槿恵大統領は、外遊先でひたすら対日批判を繰り返す「告げ口外交」をしている。相手を貶める「告げ口」と、たとえパフォーマンスであったとしても、会談したいとアピールする「ストーカー式外交」と、どちらが世界にいい印象を与えるかなんていうまでもない。
また、地味にいい仕事をしているのは、安倍総理だけじゃない。同じくダボス会議に参加している下村博文文部科学相もそう。
21日夜、下村文科相は、韓国の経済人連合が主催する「2014韓国の夜(Korea Night)」に出席したのだけれど、韓国側の一部関係者が日本政府要人の出席に驚いて会場に気まずい雰囲気が漂う一幕があった。
韓国側の一部からは、「(突然の出席は)外交的欠礼ではないか」などという声もあがったそうなのだけれど、実際は、韓国の経済人連合が運営するビジネスグループのリストに下村文科相の名前が入っていて、リストの全員に招待状が送られていたから、正式な招待に応じて出席しただけで、別に非礼でもなんでもない。
だけど、それ以上に筆者が注目したいのは、日本政府関係者一行がイベントが始まる午後7時30分より20分も早く到着して待っていたこと。国際的イベントで、20分も早く来るのは、もしかしたら当たり前のことなのかもしれないけれど、普通に考えて、世界から何十カ国も集まる大きな会議だと、そこら中で各国が「自分の国の夜」イベントを開催している筈で、それに出席しようと思ったら、どうしたってスケジュールは分刻みになるはず。それをわざわざ20分も前に行っているなんて、誰の指示かはわからないけれど、かなり意図的な行動のような気がしてならない。
勿論、そこには「日本は韓国との関係改善をしたいと思っているのですよ」というパフォーマンスの意図もあるだろうけれど、それでも、その裏には、韓国を優先して、自分のところのイベントに参加して貰えないという、いわば"割り"を食った他の国もある筈で、傍からは、そこまでしてでも、関係改善を望んでいるのだという風に映るのではないかと思う。
「韓国の夜」で、下村文科相は、朴大統領との握手を試みたのだけど、"異常なほど韓国側の警備"が下村文科相に対してシフトされて、近づくことさえできず、尹炳世外相とも会えなかったようなのだけれど、このイベントに出席できた時点でアピールという意味では仕事をしたといえる。
だけど、下村文科相は、ダボス会議の関連会合で、韓国で慰安婦問題を担当する趙允旋・女性家族相と立ち話をした際、日韓にモンゴル、中国を交えた元寇の共同研究を提案し、「共同研究の端緒にしたいと尹炳世外相に話したい」と伝えたという。
この提案は、地味にグッジョブな案。
元寇はいうまでもなく、鎌倉時代中期に、当時大陸を支配していたモンゴル帝国と、その属国である高麗王国によって二度に亘り行われた対日本侵攻。だから、これを研究することは、中韓が日本を侵略した歴史を、互いの"共同認識"とすることになる。
中韓はいつも、日本に侵略されたと批判ばかりするけれど、そっちも日本を侵略しようとしたことがあるだろうと示すことで、カウンターパンチになる効果も期待できる。しかも、この共同研究にモンゴルを参加させるというのがミソ。
仮にこの共同研究が行われたとしても、中韓のこれまでの言動を見る限り、日本の主張は捏造だ、とて全く受け付けない可能性が十分考えられる。
これまで、何度か日韓で歴史の共同研究が行われてきたけれど、日本側の研究者が資料に基づいて論を展開しようとすると、韓国側は立ち上がって、「韓国に対する愛情はないのかーっ!」と、怒鳴ったというのは、関係者の間ではよく知られた話。
だけど、共同研究にモンゴルを加えるということは、日中韓の3国の他に第4の目を視点を加えることになり、中韓の主張を牽制する役割を果たすのではないかと見る。しかも、モンゴルは元寇の当事者だから、もしも彼等が、日本への侵略行為を認めたら、その時点で、中韓がいう日本は侵略国家だという主張は、同じロジックで日本から反論されることを"共同研究"という形で残されることになる。
果たして、この提案を中韓が受けるかどうか分からないけれど、下村文化相は、地味にカウンターパンチを放つ良い仕事をしていると思う。
この記事へのコメント
almanos
白なまず
泣き虫ウンモ
そもそも、どこの国も自虐史観につながる、あるいは否定につながるようなものは採用したくないわけで。
政府が歴史をつくるのではなく、純粋に学問的に話し合える場を設けたほうがいいのかな?
それでも、いろいろあるかと思いますが^^;
イデオロギーの問題もありますし。