今日は、ごくごく簡単に。

"テキサス親父"こと、トニー・マラーノ氏の連載記事が夕刊フジで始まった。「痛快テキサス親父」と冠したこの連載は、筆者がざっと読んだ限りでは、これまで、テキサス親父殿がYOUTUBEにアップしていた動画を翻訳して記事にしたように見える。
それでも、こうして連載記事ともなれば、今まで以上により多くの日本人にテキサス親父殿の主張が届くことになる。
栄えある第一回の記事は「安倍首相の靖国参拝『米国は何も言うべきではなかった』」 というもので、テキサス親父殿は、「米国が靖国問題をめぐる論争に足を突っ込み、中国と韓国の苛立ちを認めたことには腹が立つ。米国は彼らの苛立ちを一切無視して、何も言うべきじゃなかった。これが、この件に関する俺の考えだ。安倍首相は何も悪いことはしていない」と述べている。
1月8日、訪米した超党派でつくる日米国会議員連盟の中曽根弘文会長らは、ラッセル国務次官補やアーミテージ元国務副長官、マケイン共和党上院議員らと会談した。1月10日に訪問日程を終えた中曽根弘文会長はワシントンでの記者会見で、会談で、安倍総理の靖国参拝は「不戦の誓いを行うためだった」と説明し、「好意的に受け止めてもらったと思う」とコメントしている。
何でも、アーミテージ氏は、安倍総理の靖国参拝を「選挙公約を実行したまでで、もう終わったことだ」と、これ以上問題視すべきではないとの認識を示したようだ。
また、塩崎恭久事務局長も「大体納得いただいたのではないか」とし、オバマ大統領の4月の訪日に関しても「来るという強い印象を受けた。来ることを前提に話をする人が多かった」と述べている。
安倍総理の参拝この方、日本のメディアは、アメリカが失望してるとか、怒っているとかいう論調ばかりだったから、余り知られていないかもしれないけれど、テキサス親父殿の主張や中曽根議員からの報告からも分かるとおり、アメリカも決して一枚岩ではないことには注意を払う必要がある。
アメリカのアジア関連専門のメディアの一つに「ネルソン・レポート」というのがある。これは、ワシントンの政策コミュニティが関心を持つアジアに関する政治、経済・貿易、外交問題について、人事のゴシップから政策の行方に関するまで硬軟取り混ぜ、毎晩配信される会員制のニューズレター。
筆者のクリストファー・ネルソン氏は、アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」に所属し、特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタントを務めている。1970年から下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験を持ち、議会のみならず米政権の内情に詳しいとされる。
「ネルソン・レポート」は新聞を読まなくてもこれだけは読むという外務省関係者がいるくらい、その筋の人はみんな目を通しているらしく、外務省には、「ネルソン・レポート」が分厚いファイルに綴じこまれて棚に鎮座しているという。
安倍総理の靖国参拝については、その直後から参拝を非難する意見や投稿が次々と「ネルソン・レポート」で紹介されたこともあり、それを受けて、アメリカが怒っている的な論調を国内メディアが展開した可能性もなくはない。
だけど、「ネルソン・レポート」は靖国参拝批判だけでなく、理解を示す立場の意見も紹介している。
例えば、ケビン・メア元米国務省日本部長は、「ネルソン・レポート」に安倍総理を批判した人達の主張を取り上げ、それらへの反論という形で自分の意見を述べている。それはざっと次のとおり。
「(この場に安倍非難のコメントを寄せた)ほとんどの人たちは安倍首相自身が参拝について説明した声明を読んでいないようだ。この人たちは安倍首相が靖国神社と同時に鎮霊社をも参拝し、『戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、および諸外国の人々の霊をも悼んだ』ことを無視している。安倍首相はこの声明でさらに『日本は二度と戦争を起こしてはならない。私は過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています』と述べているのだ」と、メア氏は、安倍総理の靖国参拝は「不戦の誓い」の為であり、歴史修正を意図したものではない、と反論している。これは、安倍政権の靖国参拝に対する立場と軌を一にするものであり、日米国会議員連盟の議員団がアメリカ側に説明して理解を得たとコメントしているのが本当であれば、このメア氏の見解に同意する人が他にもいるということ。
「この場(ネルソン・レポート)の論評者たちが完全に無視した、もう1つの極めて重要なポイントは、安倍首相が『ある人たちは、私の靖国参拝が戦犯を崇拝するためだと批判しますが、私が安倍政権の発足した今日この日に参拝したのは、政権1年の歩みと、二度と再び戦争の惨禍に人々が苦しむことのない時代を創るとの決意を英霊にお伝えするためです』と述べていることだ」
「この点はなぜ(この場の議論で)伝えられないのか。たぶん批判者たちにとっては、安倍氏を右翼の軍国主義者だとする決めつけにこの言明は合致しないからだろう。戦争で命を亡くしたすべての人に祈る。過去を反省する。不戦の誓いを新たにする。この種の特徴は極右の軍国主義者ではない。だから批判者たちはその安倍氏の言明を無視するのだろう」
「(安倍首相の参拝への)反対論のほとんどは、『米側のわれわれが参拝するなと告げていたのに、安倍首相が参拝した』ために怒ってしまった、ということのようだ。自分たちの命令に服従しない行動だからけしからんというのだろう。しかしこれはなんと傲慢な態度だろう。傲慢というのは、もちろんワシントンで安倍参拝に憤慨したり失望したと言う人たちの態度を指す」
「もちろん靖国神社の境内にある施設が、日本の戦争を客観的に見る立場からすれば不当だと言える面もある。特に遊就館の戦史展示が示す認識は、外部の観察者たちにとっては不快なだけでなく、滑稽ですらある。日本は第2次世界大戦では敗北した以外には間違ったことは何もしていないというふうに映る。だが、すべての戦死者の霊を悼み、不戦を誓い、戦争を反省するための靖国参拝が、遊就館の歴史観を自動的に受け入れているととらえるべきではない」
「この参拝を憤慨する人たちへの私の提言は『もう忘れなさい』ということだ。この参拝は日本が挑発的とか軍国主義的になることを意味しない。安倍首相が第2次大戦やその以前の時代の歴史を修正しようとしているわけでもない。日本がアジアで緊張を高めているわけでもないのだ」
「アジアの本当の緊張は、東シナ海や南シナ海での中国の軍事拡張や覇権的意図を伴った挑発によって起きているのだ。常軌を逸した国である北朝鮮の軍事挑発も緊張の高まりの原因だ。北朝鮮はまもなく弾道ミサイルに核弾頭を搭載する能力を獲得するだろう」
「米側の私たちが焦点を合わせて把握すべきなのは、神社への単なる参拝ではなく、安倍首相が就任からこの1年間に実際に成し遂げたことである。安倍首相は米国の歴代政権が長年の間、期待してきたことを現実に達成しつつある。日本の防衛費を増額し、平和と安全の維持に重要な役割を果たす日米安全保障条約における米国側の負担を減らしている。安倍首相のリーダーシップの下で、日本はアジア地域の脅威に対してこれまでよりも現実的な認識を抱き、その認識に沿った対応を実際に始めたのである」JBpress「『失望』だけではない米国の靖国参拝への反応」より抜粋引用
だけど、そのメア氏にして「参拝は日本が挑発的とか軍国主義的になることを意味しない。安倍首相が第2次大戦やその以前の時代の歴史を修正しようとしているわけでもない」と言わさしめているということは、逆にいえば、この部分が、アメリカ、ひいては先の大戦の戦勝国の"逆鱗"にあたることを意味してる。
「反撃する日本と中国の日本包囲網」のエントリーで、筆者は、「日本政府は、靖国参拝は、戦没者を弔い、不戦の誓いを新たにするものであり、戦勝国の歴史認識を引っくり返すものではないという立場をきちんと世界に説明して納得させないといけない」と述べたけれど、メア氏の見解はこれを裏打ちしていると言える。
果たして、メア氏の見解がアメリカ政府のどの程度にまで同意されているのかは分からないけれど、少なくとも、これがスタンダード的に扱われるくらいまでには、ロビー活動をする必要があると思う。こんなもので安心するのはまだ早い。
この記事へのコメント
opera
◇「国家の輪郭」としての靖国神社 ― 首相の靖国参拝に求められる「論理」について
http://asread.info/archives/332
○靖国参拝「不戦の誓い」削除 自民党が2014年度の運動方針案を決定
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/08/ldp-yasukuni_n_4565461.html
(おまけ)靖国神社の由来
http://uminekodo.sblo.jp/article/46791894.html
http://ameblo.jp/3291038150/entry-1123030
sdi
なるほど、そういう意味での「ロビー活動をする必要があると思う」でしたか。
テキサス親父動画やネルソンレポートに言及されていたので、塩崎議員団訪米の成果に肯定的評価をされていたのかと勘違いしました。
今、安倍首相周辺含めて我々日本人が留意すべきなのは「一部の媚中派の反応を鵜呑みして毒餃子事件に関する日本の世論動向を読み違えた胡錦濤指導部の轍を踏んではならない」ではないかと思ってます。
泣き虫ウンモ
文化面に対しても認めるのが、保守本流。
米国の民主党は、外交を通して文化に顔を突っこみました。
国際法に違反するかしないか、どうでしょうか^^;
ちび・むぎ・みみ・はな
何かやっては耳を立てるのは家の猫のミミの様.
世界中で,日本のように正しいことと正しくないこと
の区別ができる国はそれほど多くない.
米国のメディアは polytical correctness に
真っ黒に染まっており, 主義の代弁者に過ぎない.
あるブログに触発され, 米国の Knockout Game を
扱った "White Girl Bleed A Lot" (C. Flaherty)
を読んでいるが, これによれば米国の新聞は日本の
真っ赤な(嘘の)朝日や支那様のNHKと変わらない.
何が同じかと言えば, 真実を伝えない点でだ.
結局, どの国でも, そうありたい「真実」を有難がる.
東田剛と言う人が言うように, 所詮「説明」は
虚しいものであり, 人は言葉よりは, その国の
立ち振舞で納得するものだ.
日本が国際的に積極的な貢献をすれば言葉は不要.
とおる
・慰安婦問題の正式謝罪要請 米歳出法案に盛り込まれる 背景に中韓ロビー活発化
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140116/amr14011620000008-n1.htm
ななし
了承の上で参拝した、と見るのが妥当です。
終戦の日だったか例大祭だったか忘れましたが、
中韓にすら事前に報告してるぐらいだから、
当然アメリカには事前に伝えています。
アメリカが「失望」を口にするのも打ち合わせ済みと
見るべきです。アメリカは親中なのだから、
中国よりの意見を言うのは当然だし、
また、日本を褒めても何も利益はないが、文句を言えば、
それを使って「譲歩」という名の貢ぎを引き出せます。
日比野
>すくなくとも、今回の訪米議員団が会談した相手は「国務次官補」、「『元』国務副長官」、野党の「共和党上院議員」です。ちなみに国務次官補及び国務次官補級の役職、アメリカ国務省では30を越えます。日本の外務省では局長クラス相当でしょう。例えるなら韓国から超党派議員団が訪日して、外務省のアジア大洋州局長、元外相の玄葉議員、野田元首相と会談したようなものではないでしょうか?日比野殿と違ってこの議員団の成果を私はあまり評価できません。
いえ、私も評価をしているわけではないですよ。ご指摘のとおり、会談した相手が"手前味噌"的人選にしか見えないですから。ですから、更なるロビーが必要だと書きましたし、長期にわたる情報戦への備えが必要だと思いますね。