更に昨日のエントリーの続きです。
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昨日のエントリーの最後では、靖国参拝を切っ掛けとして、中国が日本包囲網を敷こうとしていると紹介したけれど、まだその包囲網は完成したわけじゃない。中国の投げる網には、ぽっかりと穴が空いている。東南アジアがそれ。
昨日のエントリーで、国際政治学者の六辻彰二氏が、海外メディアの報道を引用しつつ、「多くの日本人が思っているほど、外部からの日本に対する視線は、やさしいものではない」との見解を紹介したけれど、その引用している海外メディアは「ワシントン・ポスト」、「ニューヨークタイムズ」、「ロイター通信」、「テレグラフ」、「エコノミスト」、「フランス24」、「グッドモーニング・トルコ」、「ジャーナル・オブ・ターキッシュ・ウィークリー」、「インド・エクスプレス」、「ザ・タイムズ・オブ・インディア」、「アル・ジャズィーラ」と、見事に東南アジアからの報道が抜けている。
12紙もの海外メディアを取り上げているのに、東南アジアからは一つもないということは、要するに、彼らからは取り上げる程の目立った反応はなかったということなのだろう。
実際、今のところ、東南アジア諸国は安倍総理の靖国参拝に冷静な反応をしている。
インドネシアで最も影響力のあるコンパス紙は、昨年12月28日付の社説で「靖国神社には、現在は戦争犯罪者と見なされている数百人だけでなく、戦争の犠牲となった約250万人も祭られている」と、国に命をささげた人々のために参拝することは日本の指導者として当然だとする安倍総理の立場に言及。また、シンガポールのストレーツ・タイムズ紙も、安倍総理が参拝したのは、これまで摩擦を避けようと終戦記念日や春秋の例大祭で参拝を見送ったにもかかわらず中韓が強硬姿勢を崩さず「冷え切った中韓との関係に改善の見込みは少ないと見切ったためだ」とし、中韓の敵視政策が参拝の呼び水となったとの分析を披露している。
更に、政府の公式見解レベルとなると、ベトナム外務省が「日本が地域の平和と安定のために関係国と協力し、問題を処理することを希望する」と実に当たり障りのない発表をしているのみで、その他の東南アジア諸国は一様に沈黙を守っている。
こうした東南アジアの動きに、早くも中国は苛立ちを募らせている。
1月4日、人民日報は、「東南アジア、あなたはなぜ安倍に対し、秋のセミのように声も出せないのか」と題した記事を掲載し、日本が東南アジア諸国に金をばらまき、東南アジアは利益に目がくらみ義理を捨てたのだと非難している。
一体、東南アジアが中国に対して何の"義理"があるのか理解できないけれど、わざわざ機関紙で批判しなければならない辺り、相当、アテが外れたのではないかと思われる。おそらく工作が上手くいってないのだろう。
だけど、この中国の日本包囲網の動きにはどうやら裏があるらしい。
地政学者の奥山真司氏によると、最近、習近平主席が、アメリカの歴史学者エドワード・ルトワックの著書「自滅する中国」を読んで、日本を孤立化させる方向に動くことを決心したのだという。
「自滅する中国」は、中国の台頭がいかに自滅的なものかを解説した書籍。
ルトワックによると、中国は、基本的に外交関係よりも国内を優先させる傾向や他国との認識ギャップを埋めようとしない傾向が他のどの国よりも強く、摩擦を問題視しせず、他国からの悪印象にも鈍感なのだという。一方、周辺国は台頭する中国の脅威に対して、新しく合同で対処する方法を探ろうとして、互いにコミュニケーションを始め、結果として中国はその台頭するパワーを失ってしまうことになると指摘している。
確かに台頭するパワーそのものが、そのパワーを失う原因になるというのは"自滅"と呼ぶのに相応しいと思うけれど、なぜそんな間抜けな戦略を中国は採ってしまうのか。それについては、監訳者の奥山真司氏が、月刊日本7月号で次のように述べている。
―― なぜ中国は自らの首を絞めるような独善的な政策を行っているのか。このように、中国が国同士の対等な関係を理解できず、また、他国も自分と同じく現実的かつ日和見主義的に行動すると思いこんでいるのが自滅的戦略を取らせる原因だという。奥山氏は、最近の中国は独善的な行動を取るようになり、横柄な態度になってきたことについても指摘している。
奥山 それにはいくつかの理由がある。第一に、中国が歴史的に他の大国と付き合った経験がないからだ。中国はこれまで、中国大陸において唯一の大国として君臨し続けてきた。それゆえ、「対等」ということが理解できず、他国に対して「上下関係」で接してしまう。それは、中国の皇帝が外国の使節を臣下のように扱っていた歴史からもわかるだろう。
しかし、現在の主権国家同士は、建前としてはお互い対等な関係にある。それゆえ、中国が今やっているようにあたかも臣下に対するかのような態度で接すれば、他国との間に摩擦を生んでしまうのも無理はない。
第二に、中国が外交政策の前提として「外国も自分と同じように現実的かつ日和見主義的である」という考えを持っているためだ。中国は孫子の時代から陰謀を廻らし騙し合いを行ってきた。彼らの外交政策では裏切りや騙しが最低限のマナーと言われるほどだ。
しかし、これは中国という同一文化内でしか通用しないものだ。孫子の『兵法』に出てくる主役級の人物も全て漢民族である。漢民族同士であればそれでもいいかもしれないが、それを異文化の外国に適用すれば、周辺国が不信感を抱くのも当然と言える。
もっとも、中国も当初は「平和的な台頭」を掲げて自制的な行動をとっていた。しかし、彼らの行動は二〇〇五年頃から変化し始め、二〇〇八年の金融危機の勃発以降、露骨に独善的なものとなった。共産党の幹部や人民解放軍の将校などといった支配層が「経済の総合力で中国の超大国への台頭が早まる」と判断したためであろう。
実際、それまでよく北京を訪れていた人たちは、中国がこれまでと異なり急に横柄な態度をとるようになったことに驚かされたという。
日中友好を表す言葉の一つとして「水を飲むときには井戸を掘った人を忘れない(喫水不忘[手穴乙]井人)」というのが引き合いに出されることがある。これは、周恩来が田中角栄の功績を讃える際に取り上げたことでも知られているけれど、中国の小学生はこれを毛沢東の故事として習うようだ。
だけど、今やこの言葉は死語になりつつあるという。ある某商社訪中団が北京市の幹部と商談したとき、この言葉を出して挨拶したのだけれど、北京市の高官は顔色ひとつ変えず「いまや北京市民は誰一人として井戸の水は飲んでおりません。いまわれわれは近代化を実現し、水道水を飲んでおります」と言い放ったのだそうだ。井戸なんてもう使ってないから、堀った人など知らないとなれば、それは横柄になったといわれるだろう。この分でいけば、その水道水を飲める水へと浄化している日本企業の存在が忘れられる日は遠くない。
そういう態度こそが、周辺国に嫌われ警戒される原因なのだけれど、それを指摘したルトワックの本を読んで、習近平主席が日本を孤立化させることを決めたのであれば、今後、中国は日本以外の国々を自分の味方につけるため、嫌われないようにその振る舞いを変えてくることは十分考えられる。
だけど、一口に、嫌われないように振る舞うといっても、そう単純な話とは限らない。孔子が説いた 「己の欲せざるところ、人に施す勿れ」 にしても、それは同じ文化圏、同じ思考をする人達の間だから成り立つ話であって、己の"欲せざるところ"は、全く考えの違う異民族に対しても同じになるとは限らない。これは正にルトワックが指摘していること。
だから、 「己の欲せざるところ、人に施す勿れ」が他民族に対しても成立するためには、双方ともに通じる価値観なり、代替物で行なうしかない。それは何かというと、身も蓋もない言い方をすれば、金や財。金は、いわば世界のどこでも通用する"世界共通の交換媒体"だから、これを媒介に使うことで、互いの欲するもの同士を交換することが可能になる。その意味において、金の世界においては、「己の欲せざるところ、人に施す勿れ」は成立する余地がある。だけど、金や財という代替物ではなくて、価値観となると少し勝手が違ってくる。
現在、国家レベルで、"世界共通の交換媒体"に成り得る価値観は、宗教を除けば、自由主義か共産主義の2つしかない。だけど、共産主義国家である中国の周辺国は、自由主義国家ばかり。だから、中国は、周辺国に「己の欲せざるところ、人に施す勿れ」を成立させる価値観は持っていない。
更にいうならば、共産主義以外の中国の伝統的価値観、即ち、陰謀や騙し合いが当たり前という彼らの思考も、自由主義とは反りが合わない。自由主義を保障するものは法であり契約。それを守るという前提で自由な取引が成立している。それを根底から覆す裏切りや騙しは自由主義の否定そのもの。
つまり中国は、国家が奉ずる価値観でも、伝統的な外交政策でも、自由主義の国とは相容れない。共産主義はここ数十年のものだから、捨てようと思えば捨てられるのかもしれないけれど、陰謀や騙し合いという思考形態となると、おそらく何千年も前からどっぷりとつかっているものだから、捨てようったってそう簡単にはいかないだろう。
すると、中国が周辺国に嫌われないようにしようとすると、もう"金"だけしかない、ということになるのだけれど、中国が価値観レベルで周辺国に嫌われないための策があるとするならば、考えられる方法が一つある。それは、自分よりも、もっと「嫌われる存在」を作り出すことで、相対的に自分の嫌われ度を薄めてやること。
人間は現金なもので、今の自分が不幸だと思っていたとしても、もっと大きな不幸がやってくれば、今まで不幸だったものを忘れてしまう。それと同じで、中国よりも、もっと悪辣で嫌いな国があれば、意識はそちらに向かう。そうなったら、結果として中国に対する嫌悪が薄れてくれる可能性が出てくる。
そこで中国は、70年前の戦争を持ち出して、日本を悪の国だと喧伝することで、自分よりも、もっと「嫌われる存在」に仕立てようとしているのではないか。日本が中国よりも嫌われる存在になれば、日本は孤立化することになるから、その時点で習近平の目論見は成就する。そんなことを狙っているのではないか、と。
だけど、中国よりも嫌われる国なんて、一体、世界にどれくらいあるのか。BBCが毎年行っている主要国を対象にして好感度ランキングでも、中国は大体、中位にランキングされている。しかも、BBCの調査での評価国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、中国、エジプト、フランス、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、インド、インドネシア、日本、ケニア、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、ポーランド、ロシア、韓国、スペイン、トルコ、イギリス、アメリカの25ヶ国で、東南アジア諸国は殆ど入っていない。
それに何より、毎年上位にランクインしている日本を中国より下にまで引きずり降ろすのは容易なことじゃない。
ただ、昨日のエントリーでも触れたように、東南アジア以外の国のメディアの論調は、必ずしも日本に好意的な訳じゃないから、実際にどう転ぶかはまだ分からない。だから、決して油断してはいけないし、中国が仕掛ける思想戦にはしっかりと対抗していく必要がある。
この記事へのコメント
素浪人
雪観僧
70年前の事を蒸し返されることを忌々しく感じる国々が多い中、中韓は自分たちが危険な火遊びをしている自覚がないように思います。
蒸し返されることによる怒りの矛先が、日本に向くのか、中韓に向くのか…
これからの日本の舵取りは、強い経済力としっかりした国家観を元にした外交力が必要となる。
共産党体制が続く限り、反日ロビーは続くでしょうし、倒れたとしても、反日教育を受けていますから、国力が回復すれば、再開するでしょうね。
10年20年のスパンで考える必要がある。
安倍総理後の事を考えねばならない。
国民の国防、外交に対する意識がどこまで高まるか?も重要ですね…
選挙の関心事になってくれればいいのですけど
泣き虫ウンモ
つまり、中華思想がある限り先進国入りは無理だということです。
古い考えを捨てるためには、どうしたらいいか真剣に考えるレベルにならないと、変革は無理かもしれません。
白なまず
wiki【漢民族】には、、、以下の様に書かれている。
漢族に典型的な遺伝的血統があるわけではなく、その実体は漢字の黄河文明を生み出した中原と周辺の多民族との間で繰り返された混血。ゆえに、異民族でも漢族の文化伝統を受け入れれば、漢族とみなされる。実際、漢民族は現代に至るまでの長い歴史の間に五胡、契丹、満州、モンゴルなど、多くの民族との混淆の歴史を経て成り立っている。現在の趨勢では、中国文化は漢字表記の漢語(中国語)を基本とする文化として収斂されつつあり、漢族の定義如何よりも漢族概念自体が漢族を形成しつつある。つまり、古代中世近代の漢民族概念と現代のそれとは別と考えるべきである。梁啓超が『新民説』で「自分が中国人だと反射的に思う人が中国人の範囲である」との言葉を残しているのは最も代表的である。
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また、現代でも漢字を使い続けているのは中国と日本、台湾で、朝鮮やベトナムは既に忘れているし、中国も簡略化した簡体字に変化して古代支那の文字を読める人は少ないだろう。つまり、古代支那人の価値観すら受け継げない所以である。彼らは論語を読めないし理解出来ない。
現
とおる
kazu