黄昏のオバマ
今日はこの話題です。
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1月3日、アメリカのオバマ政権が日本に対して、中国や韓国との関係改善に向けた具体策を求める方針でいることを複数のアメリカ政府高官が明らかにした。
先日の安倍総理の靖国参拝について、アメリカ政府が地域の不安定化を招くとして、「disappointed(失望)」を表明して注目を集めているけれど、複数の日米外交筋によると「特別に厳しい表現をしたのではなく、『がっかりした』という正直な気持ちを的確に表した」とのことで、やはり、同盟国であるアメリカの反対の立場が聞き入れられなかったことへの不満があるようだ。
いくつかのマスコミが既に報道しているけれど、去年の11月中旬に、衛藤晟一首相補佐官が訪米し、ラッセル国務次官補など、アメリカの要人らと、靖国参拝をめぐる意見交換をしている。この時、アメリカ側からは、「オバマ大統領が理解を示すことはない」、「日本の評判を落とし、日本のアジアにおける影響力低下を招く」と強く反対されたのだけれど、衛藤補佐官は、靖国参拝は選挙公約だと反論したと伝えられている。
また、元日に新藤総務相が靖国参拝したことを受けて、1月2日、ハーフ国務省副報道官が「われわれは日米関係の今後の方向性を注視している」と述べたところをみると、日本の思惑というか真意を探りたいと考えているのではないかと思う。
もちろん、こうしたアメリカの反応については、日本政府も先刻承知していて、1月3日、文化放送のラジオ番組に出演した菅官房長官は、中韓両国との関係悪化を懸念するアメリカの意向を事前に認識していたことを明らかにした上で、「米国のいろいろな方に会っている。行かない方がいいというのは彼らもあった。…首相は熟慮に熟慮を重ねて決断したと思っている。米国についてはそんなに心配していない」と述べているから、靖国参拝で日米関係が揺らぐとは考えていないものと思われる。
では、実際、中韓両国との関係改善はどうなるのかというと、もう向こうのほうが匙を投げた感がある。
昨年の12月30日、中国外交部の定例記者会見で、秦剛報道官は、安倍総理の靖国参拝について「中国は歓迎しない」とコメントしたのだけれど、この発言を受けて、清華大学当代国際研究院の劉江永副院長は、「安倍首相がもたらした日中関係の傷は小泉純一郎元首相よりも大きい」と指摘。また、黒竜江省社会科学院の日本問題専門家、ダー・ジーガン氏は「安倍首相は中国の信頼を失った、日中関係改善は安倍首相の後任を待たなければならない」と分析し、更に、香港・嶺南大学の安全保障問題の専門家、ジャン・バオフイ氏も「安倍首相在任期間中に日中関係が改善する余地はほぼなくなった」と述べている。
こうした中国国内の声から、1月1日、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、中国政府は安倍晋三首相在任期間中の日中関係改善を諦めたと報じている。
一方、韓国も諦めムード。
昨年、12月27日に韓国最大手紙・朝鮮日報が「靖国参拝で挑発した安倍首相、これまでの日本はない」と題した社説で、「『これまでの日本』はもう存在せず、海の向こうの『新しい日本』が頭をもたげつつある」と指摘。韓国内の知日派として知られる世宗研究所の陳昌洙氏は朝鮮日報に、「今後(安倍政権が続くと予想される)3年間の両国関係は厳しいだろう」との見解を述べ、「安倍政権が続く限り、日韓関係の改善は不可能」との諦め、あるいは絶望が漂っているという。
だけど、別に安倍政権は、中韓との首脳会談を拒否した訳でも、経済制裁をした訳でもない。安倍総理は、不戦の誓いの為、戦没者を弔っただけで、中韓に対しては、"実効的"には何もしていない。安倍総理は、対話の窓はオープンだと常々語っている。
中韓は、日本が思い通りにならないからといって、自分で勝手に対日関係を悪化させている。
そんな状況下で、アメリカは、日本に対して、中韓との関係改善に向けた具体策を求めるという。だけど、相手にその気がないのだから、安倍政権が続く限り、中韓との関係改善は論理的には有り得ない。となると、安倍総理に関係改善の為の何らかの妥協を迫るということなのか。
だけど、靖国参拝にしても、安倍総理は一昨年の就任直後や、昨年の8月15日。そして、秋の例大祭の参拝をも見送って、中韓への配慮を示した。だけど、それは何の意味もなかった。
この辺りについては、昨年11月12日、小泉元総理が、現役総理が靖国参拝していないことについて「それで日中関係が良くなったか」と述べているとおり。参拝しなくても関係が変わらないということは、関係改善のボールは中韓が持っていることに他ならない。
だから、アメリカが、日中、日韓の関係改善に向けた具体策を求める相手は日本ではなくて中国と韓国。アメリカは、彼らにこそ、関係改善に向けた具体策を求めなくちゃいけない。そしてそれは実に簡単なことで、中韓が前提条件なしで首脳会談したいと言うだけでいい。日本側は窓を開けているのだから、彼らがただ対話の意思を示すだけでそれは実現する。
ゆえに、アメリカが日本に中韓との関係改善云々を求めてくるのではあれば、日本は、もう一段上の視点からの提示が必要になる。アメリカが欲しているのは、東アジアの安定化であって、日中、日韓の関係改善はその為の一つの手段にしか過ぎない。関係改善しなくても、安定するのであれば、それを選ぶことも一つの手。
例えば、米ソ冷戦時代を振り返ってみた時、もしも、あの時代の世界を「安定」していたと見るならば、東アジアでも"冷戦構造を取ることによる安定化"だって十分有り得る。そもそも、地域が不安定化するのは、一方の国の軍事力が増大して、戦力バランスが崩れることによって抑止力が失われることにある。
そして、現実は、中国が軍事拡張をして、極東地域の戦力バランスを崩している。彼らこそが不安定化の要因。だから、誤解を恐れずにいえば、中国が今のまま変わらないのなら、東アジアを安定化させる為には、日本が核武装して抑止力を持ち、中国との軍事バランスを取ること。それが究極的な答えになる。
身も蓋もない言い方をすれば、そうした核抑止力はアメリカがその肩代わりをしていたからこそ、東アジアの軍事バランスが取れて、安定化していただけであって、アメリカがその抑止力を発揮する気がないのなら、誰かがその任を継がなくてはならない。
その任を日本が継ぐというのであれば、中韓は兎も角として、アメリカを含めた世界に、日本は他国を侵略する意思も意図もないことを説明し、納得させる必要があるだろう。
それに、オバマ政権が日本に対して、中韓との関係改善に向けた具体策を聞くということは、東アジアの安定化についての主導権を日本に丸投げするという風に読めなくもない。それだけ、アメリカは世界に対する関心も責任も失いつつあるのかもしれないけれど、それがオバマ政権だけのことであることを願っている。
この記事へのコメント
almanos
sdi
これは指摘のとおりなんでしょう。同時に、アメリカは日本に対して「中韓の関係を改善したことで日本がどう得するか」と言う点で日本に対して恐らく何も提示できてないのではないでしょうか?
中韓両国に対するアメリカの影響力の低下、ということになるんでしょうね。
opera
(注:アレ=菅直人)
◇【新春特別対談】加瀬英明氏に聞く[桜H26/1/3]
http://www.youtube.com/watch?v=SMF5qXJRAtI
(但し、この番組は平成25年12月25日に収録)
日本では民主党政権の体たらくにより目が覚めた国民が少なくありませんでしたが、オバマ政権によってアメリカに対する幻想から目覚める日本人も増えてくるでしょうね。
他方、アメリカでも今後は以下で指摘されているような認識が広まってくるかもしれませんが、オバマ政権の主流派はまだまだでしょう。
http://twilog.org/daitojimari/date-131231
※変化球的なアメリカの動き
◇中国軍部がクーデターに成功、習政権を乗っ取っている … 米国防総省の衝撃的分析 日高義樹
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131226/dms1312260724003-n1.htm
◇ケネディ駐日大使も積極的に
スペインの江沢民への逮
ちび・むぎ・みみ・はな
周りが五月蝿いのだろう.
例えば,
日本に支那に投資させた上がりを狙っている勢力とか,
日本が米国の過去を正しく理解すると困る勢力とか,
...
米国には真面目で話しの分かる人も多いが, 表にいるのは
利得権益を守る連中ばかりなのかも知れない.
これからが日本の正念場になるだろう.
支那と半島はあきらめても米国はあきらめない.
安倍晋三がそれに耐えられなければ国民の支持は得られない.
逆に, 首相以上に国民が右であれば米国も首相を責められないのだから,
国民が更に日本の価値観を主張し, チベット・ウィグルの
民族自決(まさに大東亜共存の理想)を求めることが日本の安定をもたらし,
ひいては, (支那と半島を除く)アジアに新しい明日をもたらす.