ロシアの天然ガスとエネルギー安全保障

 
今日は、ごく簡単に…。

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2月8日、安倍総理はロシア南部ソチの大統領公邸でプーチン大統領と会談した。北方領土問題や平和条約締結の交渉加速に向け、プーチン大統領が今年秋に来日することを確認。ソチで6月に開かれるG8首脳会議に合わせた個別会談に加え、日露次官級協議などハイレベルの対話を重ねていくことも合意した。

安倍総理は会談後の記者会見で「一日も早く困難な課題を解決して平和条約を締結しなければならない」と述べ、北方領土についても「次の世代に先送りしてはならない」と述べているから、任期中に何らかの解決にまで持っていきたいものと思われる。

また、会談では、ロシア極東・シベリア開発を含む経済やエネルギー分野の協力強化を確認し、重要閣僚で日露両国の経済課題を協議する「貿易経済政府間委員会」を開催することでも合意している。

ここ数年、シェールガスが注目を集め、世界的に開発が進んでいるのだけれど、ロシアはシェールガスがメジャーになることを嫌がっている。

アメリカでシェールガスが生産が開始されからというもの、アメリカのシェールガス生産量は増加の一途を辿り、2009年、遂に、ロシアは天然ガス生産量世界一の座をアメリカに明け渡した。その後もアメリカのシェールガス生産は伸び続け、2012年には、アメリカの天然ガス生産量の3割がシェールガスにになっている。

それに伴って、アメリカの国内供給量は大きく増加。同時に天然ガス価格は下落した。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、アメリカは、2017年にサウジアラビアを抜いて世界最大の原油生産国になるとされている。

ロシアのプーチン大統領は大統領就任前に下院で首相としての行なった最後の演説の中で「アメリカのシェールガス生産は世界の化石燃料市場の需給関係を再編することになる。ロシアのエネルギー企業はシェールガスの挑戦に対して準備することが必要だ。…ロシアは技術開発による新しい波と外からのショックに対し準備する必要がある」と述べているから、当時から危惧していたことが伺える。

プーチン大統領は、首相当時「欧州のシェールガス開発がロシアの国営ガス石油会社・ガスプロムにどれほど脅威になり得るか」という質問を受けたところ、急に不機嫌になり、ノートを乱暴にたぐり寄せて、「水圧破砕法」の手法を図に描いて示し、その図をペンでつつきながら「欧州各国の人々が、地下水汚染の可能性というその環境リスクを理解すれば、破砕法の使用は禁止されるだろう」と警告したという。

欧州諸国もシェールガス開発に乗り出しているのだけれど、特にポーランド、フランス、ウクライナは埋蔵量が多く、将来有望だと見られている。

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この中でのフランスは、議会が2011年に水平破砕による採掘を禁止する法案を議決し、既に試掘を開始していたトタルやアメリカ企業などの許可を取り消しているのだけれど、ポーランドとウクライナはシェールガス開発に力を入れている。

ポーランドは、国内で消費する天然ガスの約68%を輸入に頼り、その85%はロシアから輸入している。ポーランド政府は天然ガスのロシア依存度を下げる為に開発を進めていて、ポーランド国営ガス会社であるPGNiGがそれを請け負っている。最近はアメリカ・資源大手シェブロンなども参加して50ヶ所以上で試掘が始まっている。

また、ウクライナも天然ガスの輸入をロシアに頼っていて、2006年からの天然ガス紛争以来、1000立方メートル当たり400ドルという高値に悩まされていた。昨年末、ロシア・ガスプロム社と270ドルへの値下げ合意を取り付けたのだけれど、そうした背景からウクライナもロシアの天然ガス依存からの脱却を図っていて、昨年1月には、イギリス・オランダのロイヤル・ダッチ・シェルにシェールガス生産の許可を与えている。

だから、もしも、ポーランドやウクライナが、自前でシェールガスを開発し、自給自足するようなことになれば、ロシアは大きなお得意様を失うことになる。

そんな折に、原発が止まってエネルギー確保に奔走する日本がアプローチを掛けてきた。ロシアとしては売らない手はない。

今、ロシアは、シェールガスの出現によって、エネルギーに関しては少し弱気になっている。

昨年12月、プーチン大統領は、ロシアで液化天然ガス(LNG)の輸出を自由化する法律を制定している。その狙いは、アメリカのシェールガスに対する競争力を強化と、日本などアジア市場への輸出拡大を図るためとされている。

この法律によって、プーチン大統領側近のセチン氏が社長を務める政府系石油企業ロスネフチと、ガス大手ノバテク社の2社が輸出権を獲得することになった。ガスプロムはウラジオストク郊外に年間生産量約1500万トンの新工場を建設する予定で、ノバテク社は北部ヤマル半島で年1650万トン、ロスネフチは極東サハリン州で当初年500万トンの生産を計画しているそうで、2018年から19年にかけて生産を開始する見通しだという。

まぁ、2018年には原発もある程度再稼働しているとは思うけれど、エネルギー安保的には、エネルギー供給先は沢山持っていたほうがいい。日本もこういう時に、しっかりと食い込んで、天然ガスが安いうちに大型商談を取ってこれるようにしておくべき。

今話題のシェールガスにしても、先頃、大阪ガスがアメリカ・テキサス州南西部のシェールガス鉱区の権益を330億円で取得したものの、3300メートル以深の地層に問題があり、現在の掘削技術ではコストが掛かりすぎてペイしないことが報告されたり、せっかくガス井を掘っても、従来ガス田よりも、うんと早く枯れたりする問題が顕在化している。

この辺りの問題については、筆者は、昨年4月に「シェールガス革命の罠」で指摘していて、何を今更感がしなくもないけれど、巷の報道で取り上げられたということは、いよいよ、シェールガスも怪しくなってきた可能性がある。

それを考えると、従来型ガス田の供給先を確保しておくことは、大事なことだと思う。




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この記事へのコメント

  • sdi

    日本が本気で脱原発路線にすすむ覚悟を選んだ場合、原発の穴を埋めることができるのは火発のみ。中でもLNG発電の比重がかなり高くなるのは容易に想像がつきます。そのときの輸入先の一つとしてロシア、というのは現時的な選択肢です。
    日本が国家の主要エネルギー源としてLNGを選択した場合、今の国内の輸入・供給・販売体制は全面的な見直しをしなくてはならんでしょう。卸元を一社にまとめるくらいのことをしないと、国内配給網の効率が悪すぎるしロシアとの交渉で各個撃破されてしまいます。今の日本国内の輸入・販売体制のままロシアからパイプラインを引いてそれを発電所や都市ガス供給網に直結させるのは、私は反対です。ロシアに全面的に依存するような事態になることも賛成できませんね。
    2015年08月10日 15:21
  • 泣き虫ウンモ

    ユーチューブの映像は途中までしか見ていないのですが、ホルムズ海峡は口で封鎖できるというのは、その通りですね。
    ホルムズ海峡を通過しないインド洋ルートとか、カナダと米国の太平洋ルートとかロシアの北極海ルートですか? 散らしたほうがいいでしょうね。
    インド洋ルートは、アフリカですね。
    中国の権益に挑まないといけませんけど。
    2015年08月10日 15:21
  • ヤポンスキーにもグラスノチエお

    シエールガスは採掘コストが高いうえに枯渇が早くて天然ガスの様に安定した価格で安定した供給を安定した長い年月で続ける事が不可能、の様な気がします。

    シエールガスブームはエタノール燃料ブームの様に金儲けの道具として利用された感が有りそうですね。
    因みに自然エネルギー発電のコストも実は高額で自然発電先進国ww独逸では風力発電の会社が採算が取れずに倒産したそうで、やはり此方も安定した低価格電力を供給し続けるのは不可能です。

    と成ると残すはあれしか有りません。
    そう原子力発電です。
    何時までもウジウジして原発を稼動させない日本、その間に原油の輸入コストは跳ね上がり日本経済の景気上昇を阻み続ける。

    貿易で損失を出している金の全ては原油の購入料だと正々堂々報道しろ売国マスゴミ。
    2015年08月10日 15:21
  • almanos

    ロシアとしては「設備更新と運用さえできれば」という所でしょうね。で、その為の資材は日本製が大半を占める。でも、サハリン2の件があるから信用して取引できない。これはプーチンの失敗です。そこをどう挽回できるかでしょう。でも、シェールガス自体は先が見えている。というか中共と欧州で経済破綻が起きれば需要減による価格下落は避けられない。で、メタンハイドレード採掘が実用化すれば更に悪化する。シェールサンドからもっと環境負荷が低い、低コストの採掘手段が出ない限り3年以上保たないでしょうね。特殊な微生物をシェールサンド層にばらまいてオイル状にして普通の油田掘削技術で掘り出せる様にするとかしないと。このまま行くとアメリカではシェールガス、オイルで賑わっている所は水が汚染された上にサイレントヒルのモデルになった「セントラリア」みたいな事態になる町も出るかもしれませんしね。
    2015年08月10日 15:21

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