譲歩した安倍総理と追いつめられた韓国

 
今日はこの話題です。

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3月14日、参院予算委員会で、安倍総理は、河野談話について質問をうけ、安倍総理は「安倍内閣で見直すことは考えていない」と明言した。

これは、自民党の有村治子議員から「河野談話の内容は歴史的事実と受け止めているか」との質問に対する答弁でのこと。

安倍総理は「この問題についてはいわゆる河野談話がある。この談話は官房長官の談話ではあるが、安倍内閣でそれを見直すことは考えていない。歴史に対して我々は謙虚でなければならないと考えている。歴史問題は政治・外交問題化されるべきものではない。歴史の研究は有識者や専門家の手に委ねるべきだと考えている」と述べた。

河野談話を見直さないということについては、3月10日に菅官房長官が見直さないと発言していて、安倍総理も同じ趣旨のことを述べているのだけれど、実は過去にも同じ趣旨の質問と答弁があった。2013年2月1日の参院代表質問での社会党の福島瑞穂氏からの質問及び答弁がそれ。次に該当部分を引用する。
○福島瑞穂氏:政府は、防衛大綱の見直しと中期防衛力整備計画の廃止、防衛費増額や自衛官増員、また、アルジェリア人質事件を口実にした自衛隊法改正や日本版NSC構想などを示しています。村山談話や河野談話の見直しは、アメリカを含めた諸外国からも憂慮されています。村山談話や河野談話を見直す必要はないと考えますが、いかがですか。

○安倍総理大臣:村山談話及び河野談話についてのお尋ねがありました。いわゆる村山談話は戦後五十年を機に出されたものであり、また、戦後六十年に当たっては、当時の小泉内閣が談話を出しています。
 我が国はかつて、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。その認識においては安倍内閣は歴代の内閣の立場と同じであります。その上において、しかるべき時期に二十一世紀にふさわしい未来志向の談話を発表したいと考えており、そのタイミングと中身については、今後十分に考えていきたいと考えております。

 また、河野談話については、昨日も国会にて答弁申し上げたとおり、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えております。この談話は当時の河野官房長官によって発表されたものであり、総理である私からこれ以上申し上げることは差し控え、官房長官による対応が適当であると考えております。
と、今回の安倍総理の発言と当時の発言を比べてみると、当時は、河野談話は官房長官マターであって総理が述べることではない、として、河野談話を見直す、或いは新たな総理談話で"上書き"できる余地を残していた。

ところが今回は、総理発言として見直すことは考えてないと述べている。「官房長官の談話ではあるが」と苦しい枕詞をつけてはいるけれど、従来より半歩くらいは踏み込んだ発言といえ、韓国へ妥協した部分にあたるのではないかと思われる。

というのも、今回の答弁は相当に練り込んでの発言だったらしく、12日に韓国に派遣した、斎木昭隆外務事務次官の帰国後、答弁内容を入念に打ち合わせ、韓国側に「国会審議を見てほしい」と事前通告までしたそうだから、国会答弁の形をとった韓国へのメッセージでもあったといえる。

さらに、今回の答弁については、外務省幹部が記者団に対して「きょうの首相答弁をどう聞いたか感想を聞きたい」と切り出し、24日からオランダで開かれる核安全保障サミットでの日韓首脳会談実現について「自然な形で接点が持てる機会があれば、それは大事だ」と自信を見せたというから、おそらく、アメリカにも話をつけているものと思われる。



実際、アメリカ国務省は、間髪入れず、14日に安倍総理の河野談話見直ししない発言について、「首相の発言を歓迎する」とする談話を出している。しかも、評価するとかそんなのじゃなくて、「歓迎」との言葉まで使っている。安倍総理の発言を強力に後押しする姿勢を見せている。

まぁ、裏を返せば、それだけアメリカが日米韓連携を強化したいと思っていて、日韓関係改善を強く求めていることの証でもあるのだけれど、少なくとも、日本として妥協できるギリギリのラインでカードを切って、ボールを韓国に渡した形になる。

もちろん、妥協といっても、河野談話を見直しする余地が消えたというだけで、日本の立場は従来通りで何も変わらない。そもそも、政府は、検証するとはいったけれど、見直しするとは言ってない。なのに、あたかも見直しするかのようにマスコミが煽って、韓国が反発したというのが実態で、そのタイミングでアメリカが仲介に乗り出した。

結果的に、日本は元のポジションに戻って、"河野談話を見直しする"というカードを、"河野談話を検証する"というカードと交換するのと引き換えに、アメリカの顔を立てつつ、韓国にボールを渡すことに成功した。これで、仮に日韓首脳会談が実現しなくても、「韓国側が努力しなかった」ということになる。

一方、ボールを渡された韓国は、条件闘争に打って出ている。

韓国日報の報道によると、12日にソウルで開かれた日韓外務次官会談で、韓国側は、日韓首脳会談を行う前提として、「従軍慰安婦問題をめぐる河野洋平官房長官談話などの継承」、「慰安婦問題を扱う次官級協議の開催」、「安倍首相の靖国神社参拝中断」の3条件を提示したという。

これが事実であれば、14日の安倍総理の河野談話を見直さない発言は、韓国の3条件のうちの1つを満たしたことになる。日本政府側が韓国側に「国会審議を見てほしい」と事前通告したことも、これを裏打ちしているとも受け取れる。

実際、14日に韓国の外交部当局者が「安倍首相が村山談話を含む歴代内閣の歴史認識を継承すると明確に言及した点をひとまず評価する。また河野談話を修正する考えはないと明らかにした点にも注目する」と話している。おそらく、3条件のうちの1つを満たしたと韓国も受け取ったということだろう。

だけど、それで引き下がらないのが、かの国。



3月18日、韓国外務省報道官は記者会見で、「慰安婦問題は非常に重大な人権侵害であり、被害者が納得できる方向で、早期に解決されなければならない。…「韓国と日本との首脳会談についても、日本が誠意ある姿を示し、建設的対話が可能な要件が整えられれば、対話しない理由はない。要件を整えるためには、日本側が歴史問題に関する真剣な措置を早期に取らなければならない。…誠意ある措置とは、慰安婦問題を解決する措置だ。河野洋平官房長官談話を見直さないことだけで、問題が解決するわけではない」と述べ、日本との首脳会談実現のためには、日本側の「誠意ある措置」が必要との見解を示した。

要するに、韓国は、先の3条件を全部満たさないと、首脳会談しない、とゴネているということ。全く持って図々しい。まぁ、これが外交交渉といえばそうなのだけれど、必要以上に妥協する必要は全くない。

3月18日、菅官房長官は記者会見で「日本の立場は全て明らかなので、理解を求めていきたい。それだけだ」と、河野談話を見直さないとする安倍総理の答弁で十分との認識を示しているけれど、当然だろう。また、韓国外交筋によると、日本側は「安倍首相が河野談話の継承を直接表明したのだから、次は韓国政府が誠意を見せるべきだ」とのことだから、菅官房長官の発言のとおり、安倍総理の見直さない発言で全てだ、ということなのだろう。

それにしても、先の石原元官房副長官の参考人招致以来、国内世論は随分変わった感がある。世論調査でも河野談話の見直しを求める声が6割近くに達し、共産党の志位委員長が、赤旗に「元「慰安婦」証言から強制性の認定を行った「河野談話」の判断は公正で正当なもの」という趣旨の論文を発表したら、志位氏のツイッターに多数の反論が寄せられ大炎上

はっきりいって、韓国がゴネればゴネるほど、嫌韓が増える構図になっているように思われる。あまり国民感情が突出するのはどうかと思うけれど、両国関係の正常化の為には避けて通ることのできない道。韓国が日本に甘えていられる時代は終わった。




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この記事へのコメント

  • NP

    今回の河野談話をめぐる安倍首相の一連の言動が分りやすく整理されていて読みやすい。

    そこで、河野談話の検証をするが河野談話の見直しはしないが安倍内閣の結論ということで見直しをしない安倍内閣は戦後レジームから脱却の意志を示していないし、美しい国を目指していても汚された国のままでよいと名言したと言えるでしょう。

    振り出しに戻ったのかもしれないが、どうも一歩後退しただけのように思えます。
    それはこの見直しをしないを野党、マスコミが大きく取り上げ日本国民や世界に印象付けたからです。

    たしかに米国に言われて安倍コメントがあり、韓国へボールが投げれた形でもそれを韓国が認めなければ、つまり立場が日本より韓国が強いということに成るのでしょう。
    中国なら謝れば負けという常識に韓国は近いでしょうから韓国の3条件、全て配慮してももっと蔑まれるのは日本となるのではないかと思います。
    2015年08月10日 15:21
  • お返事ありがとうございます

    例えば、維新の代表、石原議員は脱原発に反対、現憲法破棄との意見ですが、それで党内がまとまるかと言えば又別です。早々に退陣をと仰っているのですから、それなら誰がと気になります。
    2015年08月10日 15:21
  • トオリスガリ

    たまや様

    言いっ放しではだめでしょ。で、誰を総理にしたいかまで言わないと。
    2015年08月10日 15:21
  • ナポレオン・ソロ

    >ななしさん
    >>自民党が発表し、歴代首相が踏襲してるものを、自民党が撤回・見直しすると思ってるのですか?
    その通りですね。 それをやっちゃあ、十数年かけて日米間で作り上げた「普天間合意」を勝手に反故にしたハトポッポと同じレベルになって終います。 其れより、此処は「慰安婦云々は、政治問題ではなく歴史認識問題であるから、その検証の結果を待ちたい」とする方が切り返しとして優れて居ると思います。

    >>対中ODAを復活させ、竹島単独提訴は凍結、竹島の日の政府主催式典も凍結。明らかに左翼政権でしょうが。
    全くそうは思いません。 対中ODAの復活は、混迷を極めるシナ内部の親日、否、日本と利益を共有する派からの要請に応えたもので「捨て金の使い方」の一つだと認識してます。 竹島関連は、国内経済が危機的で沈没寸前の対韓より、寧ろ内国問題の方が重いので敢えて急ぐ必要はない。 韓国問題では、敢えて日本から動く必要は何もなく、韓国が悲鳴を上げるのを俟てばよい状況でしょう。

     もし仰る様に安倍政権が左翼政権なら、寧ろ、ウクライナ問題では反米行動を起こしていたのではないですか? そも、あなたの仰る理想
    2015年08月10日 15:21
  • ななし

    自民党が発表し、歴代首相が踏襲してるものを、自民党が撤回・見直しすると思ってるのですか? 安倍晋三は1次内閣の時に、従軍慰安婦について謝罪してます。

    >新たな総理談話で"上書き"できる余地を残していた。

    こういう重箱の隅をつついて「後で売国を撤回するはず」なんていうのが売国を容認し、売国を加速させているんです。売国しかしてない政権が、日本を保守するとでも思ってるのですか? 対中ODAを復活させ、竹島単独提訴は凍結、竹島の日の政府主催式典も凍結。明らかに左翼政権でしょうが。

    「犯罪者を無罪放免にして釈放すれば、態度を改めるはず」なんて発想は、子供でも信じません。
    2015年08月10日 15:21
  • たまや

    これが外交だ、と言われればそうなのかもしれないが、この譲歩は全く評価できないですね。

    確かに彼は首相のタイトルで「見直しする」とは発言していません。でも「議員」として何度も見直しに言及しています。Comfort Womanの名前を大きくしたのは紛れもなく安倍「議員」です。その見直し姿勢に対し、新自由主義の思想や反故にした数々の公約に対して目をつむってでも支持してきた人が多数いるのではないでしょうか。

    最悪なことに、この譲歩が「従軍」慰安婦に対する「お墨付き」になってしまい、失ったものは大きすぎる。Comfort WomanからSex Slaveへ格上げされたこと、世界で建立される慰安婦像を非難できなくなったこと、慰安婦20万人説を否定できなくなったこと、米国のポチであることを世界に向けて公言したこと、朝日新聞が慰安婦を捏造したと言えなくなったこと・・・

    「安倍内閣では否定しない」のだから、早々に退陣していただきたい。
    2015年08月10日 15:21
  • 泣き虫ウンモ

    漢字を捨てた国に、どこまで通用するのか理解しかねますね。
    深い思考をする時は、母国語ではなく英語で思考するという話もあります。
    日本語からハングルになったときに、どこまで日本語が通用するのか疑問に思いますね。
    嫌な予感もするのですが^^;
    2015年08月10日 15:21

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