今日は、昨日のエントリーの続きです。

昨日の記事のコメント欄でopera様からいただいたコメントが重要かつ纏まっているように思えましたので、まずは、そのご紹介から始めたいと思います。次に引用します。
昨今のウクライナ情勢は、予備知識も乏しく視点も定まらないので、非常に分かりにくい問題です。民族問題や歴史的背景に立ち入るとほとんど理解不能になるので、最低限、近年の米露関係のアウトラインを眺めると、ネオコン主導で、テロとの戦争およびアメリカの一極覇権を追求したブッシュ政権時代に、ロシアの裏庭である(ウクライナを含む)旧ソ連地域に散々手を出していたアメリカが、オバマ政権になって「ロシアリセット」政策を打ち出して関係改善を図るもうまくいかず、もともと反露意識が強い旧ソ連各国からはアメリカの裏切りの声が上がっていて、何らかの対応に迫られていた、となるでしょうか。
以下、極最近の動きについて、某掲示板のコビペを編集して記載すると、
・欧米諸外国が開会式欠席を表明(アメリカはウクライナとソチに面する黒海にオリンピックテロ防止の為、軍用艦を置く事を明言)
・中国、日本が開会式出席を表明
・開会式前ロシア・中国とのトップ会議で尖閣を支持してくれたら北方領土を支持すると言われるも、日本とロシアで北方領土は協議中で二カ国間の問題と提案を断る
・ソチオリンピック開会式後、日本・ロシアと昼食会(首脳間で談笑する)
・オリンピック開催中にウクライナで(欧米主導の)クーデター発生
・アメリカ国務長官補の電話会議がYouTubeにアップされる
国連事務総長に話を通しクーデターを起こす。新政権の名前、EUは口出しするな等の通話が暴露される
・アメリカ軍用艦黒海のトルコ北部サムスンで座礁
・暫定政府を認めるか深夜まで協議(EUはサインをするがロシアは拒否)
・オリンピック閉会式
・韓国ADIZにロシア爆撃機通過
・暫定政府のクーデター部隊がポーランドで訓練受けてた可能性が浮上
・ウクライナ東部地域がロシアに救援要請
・非正規軍がウクライナ到着
・国連安保理緊急会議決裂
・キューバにロシア艦現る…
となります。
こうした流れだけみていると、ソチオリンピック期間中を狙って、アメリカ主導でウクライナにクーデターを仕掛けた(ロシアもこの動きを知っていた)という図式が見えてきます。
問題は、こうした動きをどれだけ日本側が知っていたかという点です。EUでも、ドイツ・フランスは独自のスタンスを維持しており、アメリカにべったりなのはイギリスくらいでしょうが、ソチオリンピックの開会式を欠席したのは、このことを知っていて少なからず関与していたから、とは言えるでしょう(韓国の欠席も国連を通じて知っていたからでしょう)。もっとも、個人的には、知っていたとしても日本の開会式出席は正解だったと思っていますが。
さらに、ロシアの反応(おそらくアメリカの予想を超えた断固たる迅速な対応)を受けて、米英を中心にロシアのG8からの追放や経済制裁等々が主張されていますが、これに日本がどう対応するのか。日露間の首脳会談レベルの凍結は当然としても、難しい判断が迫られます。とくに、米露新冷戦を演出して米中関係改善を図ろうとする勢力には、充分に警戒する必要があるでしょうね。opera様より
とまぁ、opera様の指摘どおり、ウクライナは難しい状況になったかなと思っていたのだけれど、どうやらプーチン大統領は幕引きの準備に入ったようだ。
3月4日、プーチン大統領は、ロシア西部のウクライナ国境付近で軍事演習を行っていた部隊に撤収を命じた。参加した兵士は7日までに配属地に戻ることを命じられたようだ。
この大規模演習は、ウクライナ情勢を受けて、プーチン大統領が西部から中央部地域で、ロシア軍に対して有事即応態勢を点検・演習するよう緊急命令を出した事がその発端。
有事即応態勢チェック・演習の対象は地上部隊、空軍、空挺部隊、宇宙防衛軍に及び、2月26日から3月3日にかけて約15万人というロシア軍の大半が動員される大規模演習だった。
この2月26日から3月3日というのは、ソチオリンピックの閉会式が行われた2月24日と、ソチパラリンピックの開会式が行なわれる3月7日の間に挟まれた期間。予め被らないように計算して設定した日程だと思われる。故に演習に参加した舞台に7日までに撤収せよという命令は、ソチパラリンピックの開会式に影響させたくない気持ちの表れだろう。
有事即応態勢チェックとして、ウクライナ国境に15万人も集め、それを撤収させるということは、プーチン大統領は、最早有事にはならない、と判断したということ。侵攻も素早いけれど、撤退もまた早い。プーチン大統領は、引き際を心得ている。
3月4日の時点で、ロシア軍は既にクリミア自治共和国の重要拠点を掌握していたのだけれど、プーチン大統領は記者会見で、「(クリミア自治共和国に)ロシア軍を投入する可能性は消えた」と述べ、クリミヤ自治共和国を併合する積りはないとした。
また、ロシア外務省高官は、欧米諸国に対し、先月ウクライナのヤヌコビッチ大統領と現在の新政権代表が締結した政治合意に立ち戻って履行するよう要求し、秋以降のウクライナ大統領選挙と親ロシア勢力が参加する連立内閣の樹立などを条件に協議に応じる用意があると述べているから、なんとかロシアの影響力を残しつつ、幕引きを図りたいものと思われる。プーチン大統領は、米露新冷戦までは望んでいない。
その意味では、クリミヤ自治共和国の重要拠点を抑えたロシア軍は、新政府に対する牽制にもなるから、こちらの兵は、新政府の出方を図りながらの撤退になるのではないかと思う。
2011年10月のエントリー「EUも中国もブロックする三日月」で、ロシアは、ヨーロッパや中国にバラバラに吸収されていく恐れを持っていることについて触れたけれど、今回のウクライナの政変は、ウクライナより一層EUに近づくことを意味するから、プーチン大統領も、本音としてはそれを食い止めたいと思っている筈。でなければ、親ロシア勢力が参加する連立内閣の樹立なんていう訳がない。
筆者は「EUも中国もブロックする三日月」のエントリーで、あの辺りを一大経済圏にすることができれば、それを阻止する三日月の壁となると述べたけれど、その可能性は残されているのか。
3月3日、日米欧など主要7カ国(G7)の財務相は外貨不足が指摘されるウクライナに「強力な金融支援を提供することに結束してコミットしている」と経済支援を強調する共同声明を発表している。どうやら、国際通貨基金(IMF)が中心となって、ウクライナへの政策提言や追加融資を実施していくようなのだけれど、政策提言まで出来るのなら、やり方によっては経済成長の目はあると思う。
筆者としては、日本の新幹線とその鉄道技術を輸出することで、ウクライナを経済圏の核とする手があるのではないかと思う。
黒海に面したウクライナは、ベラルーシと並んでロシアとEUを結ぶ玄関口に位置している。ウクライナには国有のウクライナ鉄道があるのだけれど、それは周辺各国と連結している。
例えば、ベラルーシのベラルーシ鉄道、モルドヴァのモルドヴァ鉄道、ロシアのロシア鉄道、スロバキアのスロバキア国鉄、ハンガリーのハンガリー国鉄、ポーランドのポーランド国鉄にルーマニアのルーマニア国鉄とほぼその周囲の国々と鉄道連結している。
一見鉄道網が充実しているように見えるのだけれど、いくつかの問題がある。それは鉄道の軌道幅。例えば、ポーランド、スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニアといった周辺国では1435mmの標準軌が主流なのだけれど、 ベラルーシ、モルドヴァ、ロシア、そしてウクライナは1524mmの広軌が採用されている。その為、境に際しては機関車の交換と客車・貨車の台車の交換をしなければならず、非常に効率が悪い。
また、ウクライナ鉄道の列車の多くはソ連時代の古い低速な車両で老朽化が激しく、高速化もままならない。それならば、広軌と標準軌共に使える、新幹線のフリーゲージトレインを開発してウクライナに輸出すれば、貨車の交換も要らなくなるし、スピードアップも計れる。一石二鳥。
日本でも、標準軌と狭軌間のフリーゲージトレインの開発が進んでいて、2月26日に、国交省の技術評価委員会が、約7万キロの耐久走行試験などの結果を踏まえ「基本的な耐久性能の確保にめどがついた」と判断。実用化に向けた最終段階の試験に入るという。
だから、ウクライナへの経済援助を使って、広軌と標準軌のフリーゲージ新幹線車両の開発をしてもいい。
それによって、ウクライナとロシアとの経済交流が活発化し、あの地域が一大経済圏になるのなら、プーチン大統領にも貸しをつくることにもなる。日本にも災い転じて福となすしたたかさがあってもいい。
この記事へのコメント
opera
他方、ロシアがウクライナに軍事的に介入したことで、日本にプラスになる面もあります。というのも、前回のウクライナの新欧米政権時代に、旧ソ連時代の軍事技術が、ウクライナを通じて中国に駄々漏れになっていたからです。
日本のウクライナへの経済的関与は、ちょっとした縁もあり、充分にあり得るとは思いますが、情勢が落ち着いた少し先の話になるのではないでしょうか。
白なまず
ちび・むぎ・みみ・はな
中東にしても中途半端に手を出して問題を
複雑にして解決不能にしてしまう.
エジプトは, リビアは今どうなっているのか.
事の始まりは西側の手によるクーデターであり,
安保理で議論すれば米国の立場はあるいまい.
米国が断固たる軍事的処置を取ることはできない.
オバマ大統領にはその気もないし,
オバマ大統領の指示では人手不足の米軍は機能しまい.
単にロシア憎しなのだろうが, 米国が感情で
動くとロクナことはない. 日本が一番良く知っている.
ロシアが迅速に手を打たなかったなら,
ウクライナ全土に紛争が広がって国民が一番困っていた.
現時点では安倍首相を最も良く理解しているのが
プーチン大統領なのであるから, 安倍首相も
単純に米国の経済封鎖に加わる愚は犯さないと思う.
クリミアを安定化させることでウクライナの
他の工業地域も目が醒めて落ち着いていくだろう.
この形が尖閣のすきを狙っている支那を抱えている
日本としても一番好ましい.
騒いでいる地方は農業地域と聞くが,
EU側は最終的には加盟を拒否するだろう
という見方が強い.
泣き虫ウンモ
自由を得たから、経済的に苦しいから売りましょうじゃ話になりませんし、共産主義とは何なのかを理解していませんね。
○国より落ちる国は存在しないと思っていましたが、ヤバイ国ですね。
だからこそ、露が乗り出したということでしょうか。
現地に行って話を聞いたり、見たりしないと真実は分からないでしょうけども。