ケネディ大使が架けた橋

 
昨日のエントリーの続きを極々簡単に…

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4月25日午前、国賓として来日していたオバマ大統領が離日。韓国へ向かった。

出発に先立って、オバマ大統領が滞在する東京都内のホテルに天皇皇后両陛下が訪れられ、オバマ大統領と面会。20分間にわたってお別れの挨拶をされた。

来日する外国賓客の区分で最も高位に位置する「国賓」は、国王や元首が対象となるのだけれど、皇居で「歓迎行事」が行われた後、両陛下との「ご会見」「宮中晩餐会」と続き、国賓が東京を出発するにあたっては、両陛下が「お見送り」される。

陛下は、外国の賓客と接せられる場合、相手国の勉強を徹底的にしてから臨まれると言われているけれど、そうした一つ一つの心配りが相手の心に何かを残していく。

発表が遅れ気を揉んだ共同声明もなんとかオバマ大統領が日本を離れる直前に発表され、ちゃんと尖閣防衛も明記された。

今回の会談は、日本にとって特に安全保障面で得るものが大きかったと思うけれど、その裏には、どうやらケネディ大使が大きな役目を果たしていたようだ。

独立総合研究所の青山繁晴氏によると、日米双方のインテリジェンスから聞いた話として、次の点を述べている。
・2月下旬~3月初、オバマの安倍不信が頂点に。安倍政権転覆の危機になっていた
・その後3月7日にキャロライン・ケネディー安倍会談があった
・そしてケネディ一時帰国。ホワイトハウスでオバマ-ケネディ会談を2人だけで2時間やった
・ケネディ「あなたは安倍を誤解している。軍国主義者やイデオロギストではなく安倍はリアリストだ。安倍が去年靖国に行っておいたのも今年の秋にある中国主催APECでの日中会談後に参拝すると、習近平のハシゴを外してしまう事になるからだ。安倍は集団的自衛権、辺野古移設等、実質的に日米同盟を強化しているではないか。4月訪日時に明治神宮に行って日本文化に敬意を示せ。尖閣は安保適用内と、大統領であるあなたの口から言え」
後で聞くと、ちょっと吃驚する内容。筆者は、これを読んだあと、2月下旬から3月頭辺りの日比野庵の過去記事を読み直してみたのだけれど、ケネディ大使をテーマにしたものとして、2/21に「劣化するアメリカとケネディ大使の誘い水」、3月8日に「ケネディ大使へのインタビューと『イルカ発言』について」をエントリーしている。



確かに読み返してみると、この頃はアメリカの態度について日本から反発があった時期であり、ケネディ大使についても批判の声が上がっていた。

青山氏によると、日本が少し反米に傾いたこの時期は、アメリカも同様に日本に対して不信感が高まっていたということになる。

それが、ケネディ大使の働きかけで一転。今回の日米首脳会談となった。今回来日したオバマ大統領のスケジュールを見ると、ほぼ、ケネディ大使の助言通りに行動しているし、前日の「寿司会談」もどうやらケネディ大使がセッティングしたらしい。どうやらケネディ大使のオバマ大統領に対する影響力は本物のようだ。

筆者はケネディ大使が着任する前の去年9月3日「ロビー活動する安倍総理とケネディ次期駐日大使」のエントリーで、ケネディ大使は、素人と呼ばれ心配されている向きがあるけれど、その"素"であることを逆に利用して、日本側に取り込んだ方がよい。そうすれば、オバマ大統領にホットラインを持つ"親日家"を得ることになる、と述べたことがある。

今回、ケネディ大使が青山氏が述べたような行動をとったのだとしたら、日本は正に、このオバマ大統領にホットラインを持つ"親日家"をゲットしているのかもしれない。

まぁ、ケネディ大使のこれまでの一連の発言を聞くと、あまり日本を知らないのではないかと思えなくもないのだけれど、オバマ大統領にここまで影響力を持つ人が駐日大使なのだとしたら、それなりに大切にした方がいいだろう。

ケネディ大使の存在は、オバマ大統領の外交スタッフが十分に機能しない時ほど、効いてくる。一時帰国してすぐにオバマ大統領と2時間も直接会談できる人が、そこらに転がっているとも思えない。その人が親日家で日本の意見を直接伝えてくれるのだとすると、長い時間と金をかけて行うロビー活動なんかとは比べ物にならない。

日米首脳会談後の共同記者会見で、安倍総理はオバマ大統領を"バラク"とファーストネームで呼んでいた。いつからそんな仲になったのか。

ここから先は、筆者の憶測にしか過ぎないのだけれど、前日の寿司会談に同席したケネディ大使は、安倍総理とオバマ大統領の仲を取り持って、お互いファーストネームで呼ぶよう勧めたのではないかと思う。

でなければ、あの場所でいきなり安倍総理が、オバマ大統領をファーストネームで呼べない筈。

そう考えるとケネディ大使は、今回のオバマ大統領訪日に当たって、それなりに日米の架け橋の役目を果たしたといえる。

いつの間にか、安倍総理は、アメリカ大統領とロシア大統領ともにファーストネームで呼べる存在となっている。安倍総理のこのポジションは、日本の経済力と地政学的位置を考えあわせると、世界が無視できない存在に押し上げる。今後の安倍外交に期待している。




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この記事へのコメント

  • sdi

    ケネディ大使が、日本という国について赴任以前より「知」ったことは事実でしょう。ですが、「日本を知った」からといって「親日家」とよぶのはどうかと思います。
    日本人がよく勘違いすることとして「知日イコール親日」という考え方です。これって見方によればとても傲慢な考え方ではないでしょうか?日本について詳しく知ったとしても「親日」になってくれるとは限らないのでは?
    ただ、日本人自身がそういう傾向に走りやすいみたいですね。赴任先の国に迎合して、その国の利害を日本に対して代弁するのが外交官の任務と勘違いするような方々がいるくらいです。
    我々はケネディ大使が日本という国についての知識を増やし、アメリカと日本の間の意思疎通を図る任務を果たしてくれるという点で十分満足すべきでしょう。
    2015年08月10日 15:20
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    ケネディ大使が外交の素人であるのは
    間違いないが, 安倍首相の言葉を聞く
    ことができた点は評価すべきなのだろう.
    この件については安倍首相のケネディ大使への
    手厚いケアが身を結んだといえるだろう.
    海外との付き合いという点では安倍晋三の
    血筋の良さを感じない訳にはいかない.
    軽薄リベラルの連中は親から相続する
    と言えば財産と利権しか考えないが
    (彼らが実際にやっていることだ),
    継承された血筋は危機にあって大きな働きをする.
    その最たるものが天皇である.

    二世議員がなん鱈かん鱈, もう止めて欲しい.

    ところで, 国会議員の選挙における人口比が
    何やら新聞に出ているが, 日本は日本国民と
    日本の国土からなるのであるから, 地域を守る
    という観点が国選には必要であろう.
    何でも韓でも多数決で決めると言うのは
    現在の人のエゴイズムであろう.
    国土に生まれる将来の日本人をもっと大事にすべきだ.
    2015年08月10日 15:20
  • 日比野

    sdiさん。どうもです。
    知日家≠親日家というのはその通りですし。ケネディ氏が親日家でないのは、これまでの発言で明らかです。知日家というのもまだ怪しいですね。大使である限りは日米のパイプ役を務めてくれることが第一で、まずは、そこに余計なバイアスを掛けないようにしていくのが大事でしょうね。
    2015年08月10日 15:20

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