商船三井差押さえ問題と法の出島橋

 
昨日のエントリーの続きを極々簡単に…。

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中国当局による商船三井の船舶の差し押さえは、少なからず波紋を呼んでいる。

韓国で2件の戦後補償訴訟の被告となっている三菱重工業の関係者は「非常に関心を持っている」と、当分は推移を見守る方針を明らかにし、自動車メーカーの関係者も「中国では何が起こるか予測しにくい。日本のイメージ悪化も心配だ」と話している。

4月21日、経団連の米倉会長は記者会見で「日中経済が補完関係にあることは中国側も同じ意見だろう。…経済関係をさらに強め、相互理解を深める交流をしていくべきだ」と述べている。

だけど、互いに理解することと、友好関係を結べるかどうかはまた別の話。相手の流儀だと理解はしても、それがいつも必ず受け入れられるとは限らない。

まぁ、フェリー沈没で大騒ぎしている、半島のかの国のように、その言動が理解の範疇を超え、"知れば知るほど嫌いになる"とまでは言わないにしても、国家という単位で違うということは、互いが100%同じではないことを意味してる。

相手の考えも流儀も人も文化も歴史も何もかも全て受け入れられたら、それは事実上同じ国になるということ。

過去の歴史をみれば、そうした事例はいくらでもある。ギリシャローマ時代からみれば、中東やヨーロッパは、何度国境線が変わっのか分からないし、中国だって、統一と分裂の繰り返し。現在でも、まさにウクライナがそうした状況にある。

だから、国家間の付き合いは、基本的に異なる相手との付き合いだという大前提があることを忘れてはいけない。

ゆえにこそ、その異なる相手との付き合いが成立するためには、互いに共通基盤となる何某かの取決めが必要になる。

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例えば、貿易を行うにしても、当事国同士で、いついつまでに品物を届けるという約束があり、それを果たした時に代価を払うといった、"取り決め"があり、互いにそれが守られるという前提(信頼)があって、始めて貿易が成り立つ。このときの両国で交わす"取り決め"は、いわゆる「契約」というものなのだけれど、これが両国を結ぶ共通基盤となって働いている。

この共通基盤があるからこそ、互いに異なる国同士であっても、その範囲内という限定付きで、付き合いが可能になる。

この限定された「契約」を、広く一般化させたものが、いわゆる「国際法」とか「慣例」と呼ばれるもの。

かつて、江戸時代に長崎に設けられた出島は、出入口として表門が設けられ、そこから、出島橋と呼ばれるたった一つの石橋で本土(江戸町)と結ばれていた。表門では番人が人々の出入りを厳重に監視し、それによって秩序が保たれていた。

それと同じように、今の世界も"法"という橋によって、互いの国が結ばれ、軍事力という"門番"がその橋を監視し、守っている。

だけど、この橋を渡らずに、海を越えて相手の国に乗り込んで勝手放題したらどうなるか。いたずらに混乱を招き、争いの原因ともなり兼ねない。そんなことをいつまでも許していたら、秩序は崩壊するほかない。

今回の中国の商船三井の船舶差し押さえも、そうした"法の出島橋"を使わずに海を渡った例だといえる。
※但し、昨日のエントリーのコメント欄でのsdi様の指摘(戦時賠償の枠組みを迂回)にも一定の留意は必要と思われる。…意外と相当闇が深そう…

今や、各国を結ぶ"法の出島橋"の監視を一手に引き受けていたアメリカがその力を失い、それに呼応して、橋を使わずに海を渡る輩が出てくる危険性が格段に高くなっている。

アメリカが門番をしなくなりつつある今の世界において、自分の橋を自分で守れるようにすることは、最低限必要な処置であることはいうまでもない。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    出島の仕組みだけでは駄目だった事分る事件が有名な「フェートン号事件」です。当時の仕事の合理化?投資の選択と集中で「長崎防衛」がなんちゃって状態であり、フェートン号事件で大失態した佐賀藩は独自防衛で長崎港の入り口にある伊王島に砲台(お台場)を作りその後同様な事件が起きないように防衛費を増やしつつ、裏ではちゃっかり密貿易で、、、まあそのお陰で外国の技術や情報を集めて幕末に日本を支える技術をものにしていたんですが、効率優先の運営方針では常時は良くても非常時には役に立たないのは明らかですね。支那朝鮮相手には2重3重の構えが必要だと思います。因みに当時の支那人は出島ではなく「唐人屋敷」が『現在の長崎市館内町の地である。周囲は塀と堀で囲まれ、大門の脇には番所が設けられ、出入りを監視した。ただ出島のオランダ人が厳重に監視されたのに比べ、中国人は比較的自由に出入りが許された。』とあり当時の欧米人の方が何倍も警戒していた様子が分かります。現在と逆ですね。

    【長崎伊王島の図 いおうじまのず】
    http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=255030
    2015年08月10日 15:20
  • opera

    >昨日のエントリーのコメント欄でのsdi様の指摘(戦時賠償の枠組みを迂回)にも一定の留意は必要と思われる。…意外と相当闇が深そう…

     「戦時徴用船史の闇」だの「底なし沼」だのと煽っているtwitterの発言を読んでみたのですが、正直に言って理解不能でした。確かに時効や損害賠償請求権に言及している点は、『日本法』の説明とするなら必ずしも間違ってはいません。しかし、今回の差押えは、中国の国内法によって中国の裁判所が出した判決に基づいているはずです。とするなら、中国の国内に日本と同内容の法律が存在していなければならず、少なくともそれを読んでみないと判断はできません。
     おそらくロジックはこうです。今回の問題は、条約や慣習法といった国際公法の問題ではなく、純然たる民事事件である。したがって、国際私法の観点から、不法行為に基づく損害賠償請求権に関する連結点は「加害行為が発生した地」である中国なので、中国の国内法を準拠法とし、これによって判断した、と。しかし、加害行為の発生時は中華民国統治下なので、法体系に断絶があります。これをどう説明するのか。さらに、そもそも中国国内に日本や西側先進国と同程度
    2015年08月10日 15:20

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