
今日も、雑談エントリーです。

4月9日、北京を訪れたアメリカのヘーゲル米国防長官が中国の習近平国家主席と会談を行いました。
会談で、習主席は「複雑な国際情勢を背景に、中米両国の協力分野はより広くなっている。中米両軍の関係は両国関係における重要な一環である。双方は中米両国の新しい大国関係の下で新型軍事関係を発展させるべきだ。また、双方は衝突や対立をせず、互いを尊重するという原則を堅持し、実務的な協力を進め、意見の食い違いやデリケートな問題をコントロールすべきだ」と述べています。
これに対してヘーゲル国防長官は「今回の訪中は中国側と一緒にオバマ大統領と習主席が合意した米中両国の新型軍事関係の樹立を推進するためだ。双方は率直で建設的な対話を行った。21世紀における世界の発展は主に米中関係により決まる。中国側との対話を強化し、相互信頼を増進させ、さらに両国の軍の関係発展を推し進めたい」と応じました。
ヘーゲル国防長官は「双方は率直で建設的な対話を行った」と言ってますけれども、これは、先日行われた日米防衛会談の後の記者会見で、ヘーゲル国防長官が訪中の目的として、直接中国の指導者層と全て洗いざらい、正直ベースで話をすると述べていました。ですから、この言葉通りであれば、少なくともアメリカ側は本音で話をしたものと考えられます。
筆者は4月9日のエントリー「日米防衛相会談とショー・ザ・フラッグ」で、アメリカはいよいよ自らの旗幟を鮮明にしなければならなくなっていると述べましたけれども、やはりその方向に向かって動き出しているように見えます。これについては、ヘーゲル長官の発言後、米軍幹部がこれに追随する発言をしています。
例えば、4月9日夜、アメリカ太平洋艦隊のハリー・ハリス司令官がオーストラリアのキャンベラで行われた、オーストラリア戦略政策研究所の会議で、「中国が積極的に軍拡を進め、軍事の透明度が低いこと、さらにアジア地域での態度が次第に強硬になっていることを私は懸念している」と述べ、中国が東シナ海に防空識別圏を設定したことについて「一方的で危険な行為だ。日本と東シナ海の島をめぐる問題がある中では、挑発行為にあたる…中国の隣国苛めが地域の緊張を引き起こし、対抗のリスクをもたらした。国際法を無視した、または国際法とは無関係な海洋に関する主権主張を含むことであり、そのため、米国が太平洋とインド洋に存在し続ける必要性が高まった」と発言しました。
そして、翌11日には、在沖縄米軍のウィスラー第3海兵遠征軍司令官がワシントン市内で行った講演で、中国軍が尖閣諸島に上陸して占拠した場合「奪還するようにとの命令があれば、実行できる。…尖閣諸島を大きな島だと思っている人がいるが、実際には極めて小さな島の集まりだ。…脅威を除去するために、兵士を上陸させる必要すらないかもしれない」と畳み掛ける発言をしています。
ヘーゲル長官が正直ベースで話をすると口にした上で、日米安保による日本の防衛義務があると発言し、それに続いて、太平洋艦隊(第3艦隊+第7艦隊)と沖縄海兵隊のトップが揃って、こうした発言をしたということは、海と陸からそれぞれ中国を牽制したことを意味します。しかも、その原因が中国の隣国苛めだというのですから、実に分かり易いというか、何というか、少なくともアメリカ国防省はおもいっきり旗幟を鮮明にしたと言えます。
この辺りについて、キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏は「どうやら米国は中国との対決が不可避であることを覚悟し始めたようだ。だからこそ、少しでも対話を続け、透明性を高めたいのだろう。その目的は、誤解や誤算によって生ずる可能性が極めて高い米中(または日中)間の軍事衝突を最小限にするための紛争回避メカニズムの構築である」と述べています。
要するに、腹の探り合いをしたり、気を遣ったりすることはもう止めたということなのでしょう。これまでのオバマ政権からはちょっと考えられないような態度変化なのですけれども、或いは、国防省側からの強い要請にオバマ大統領が折れただけなのかもしれません。
けれども、こうした変化も、やはりウクライナ問題が影を落としていると思うのですね。あれから、アメリカというかオバマ大統領の態度が変化し始めたように見受けられます。ロシアに対して経済制裁制裁だとぶち上げてみても、プーチン大統領は全く怯んでいませんし、EUも足並みが揃いません。日本も米露で両天秤に掛けるような微妙(絶妙)な位置取りを取っています。これまでのアメリカ中心の国際秩序が崩れつつある。そういう危惧を持っているようにも見受けられます。
まぁ、シリア問題辺りから、怪しかったといえばそう言えなくもありませんけれども、ウクライナ問題で決定的になった感じですね。
アメリカという箍が外れることで、地域大国が地域覇権を求めて蠢き始めたといったら、言い過ぎかもしれませんけれども、そんな雰囲気を感じます。
逆にそういう状況だからこそ、アメリカにとっての日本の重要性が高まったのではないかと思うんですね。
アメリカ国外で空母の母港があるのは、横須賀だけです。ですから、いつぞやのエントリーで述べたような記憶がありますけれども、丁度地球の反対側に位置する日米ががっちりスクラムを組むことで、アメリカ機動艦隊は地球のほぼ全域をカバーできてしまうんですね。
ですから、軍事的にみれば、アメリカが世界覇権国でいられるか、地域覇権国に墜ちるかどうかは、日本の協力が得られるかどうかに掛かっていると思っています。
たとえ、アメリカが世界の警察官であることを止めたとしても、太平洋地域で米軍と自衛隊が"一体"となって軍事行動をするのであれば、事実上警察の役目を果たすことになります。
同様に米軍と豪軍、米軍とサウジ軍が「一体」となって軍事行動を起こせる体制を取るならば、継ぎ接ぎではあるかもしれませんけれども、今の世界秩序をキープできる可能性はあると思いますね。
日本の集団的自衛権もこの辺りにも絡んでくると思うのですね。これを、日本が世界秩序を護る一翼を担うようになると捉えるか、アメリカのいいなりになって戦争する国になると捉えるかは人それぞれかもしれませんけれども、アメリカが自身のプレゼンスを落としたことで、逆に日本の価値が多少なりとも再評価されつつあるのかな、とも思っています。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
国防長官が表に出てきたと言うことに,
オバマ大統領のレームダック化の深まり
が現れているように思える.
要は, 国務長官や副大統領は出ていくな
という議会の圧力があるのではないか.
安倍政権はTPPに入れ上げているが,
米国ではオバマ政権に対する不信感
が広まりつつあると言うことに思えるので,
全く無駄な努力と言う他無い.
TPPより, 尖閣諸島防衛の具体化が重要.
国防長官は「取り返せる」と言うが,
支那の目的は紛争の具体化で尖閣諸島を
係争地とすることにあるのだから
国防長官の言は日本を安心させるもの
では全く!無い. メディアが盛んに
報道する背後にある反日的思惑に注意が
必要だと思う.
日比野
>北米大陸の外のことへの関心が薄かったのでしょうが、外交・安全保障政策の行き詰まりがそれに拍車をかけてるように見えます。
外交に関心がないならないで、いっそのこと、国防省に丸投げしてくれたほうがまだマシのような気がしてきますね。ここまでグダグダですと。
sdi
泣き虫ウンモ
内向きになるということは、そういうことです。
摩擦を避けるということは、中国との戦争を避けるということです。
核を持つ国どうしで、どうして軋轢を嫌がるのか説明して欲しいぐらいです。