今日はこの話題を簡単に…
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3月6日、小野寺五典防衛相は、訪日したヘーゲル米国防長官と防衛省で会談した。その要旨はこちらにあるけれど、日米同盟の重要性の確認や日米防衛協力の指針の見直し、そして在日米軍再編などについて話し合われ、アメリカの日本防衛義務の範囲に尖閣が含まれているかどうかの確認も行なわれたようだ。
というのも、今回の日米防衛相会談に先だって、日本側は尖閣有事を想定し、日本防衛義務を再確認するようアメリカに繰り返し求めていた。勿論、これは例のウクライナ問題が影響している。
アメリカは1994年12月にブダペストで開催された欧州安全保障会議(CSCE)の首脳会議の席上で、ウクライナ及びロシア、イギリスなど核兵器保有国と安全保障に関する覚書を締結している。
当時はソ連崩壊後間もない時期で、ウクライナなどソ連から独立した諸国には、大量の核弾頭が放置されていた。中でも、ウクライナが引き継いだ核弾頭は桁違いに多く、数千発に及び、世界第3位の核保有国となっていた。
ソ連崩壊の混乱に乗じて、核弾頭が拡散することを恐れたアメリカなどの諸国は、ウクライナに対し、核拡散防止条約(NPT)への加入を迫ったのだけど、ウクライナは、核弾頭を破棄する代償として安全保障体制の確約を要求、各国がそれに応えてNPTへの正式加盟にこぎつけた経緯がある。このときの覚書は、後にブダペスト覚書と呼ばれるようになった。
ところが、例のロシアによるウクライナへの軍事介入とクリミヤ併合に当たって、アメリカは軍事介入せず、ブダペスト覚書を事実上、失効させてしまっている。
アメリカは、覚書とはいえ、文書になったものを簡単に反故にしてしまった。そんなことをされるのなら、日米安保だって本当に機能するのか怪しいとなる。従って、日本からの日本防衛義務の再確認要請は当然だし、また、ヘーゲル国防長官の訪日の背景には、同盟国を守る姿勢とアジアを重視する「リバランス」戦略の推進をアピールする必要性があった見られている。
会談でヘーゲル国防長官は、日本の集団的自衛権に関する憲法解釈変更について「アメリカは支持している」と明言。一段と強い支持を表明し、更に、北朝鮮対策として、2017年までにイージス艦2隻を日本へ追加配備し、計7隻態勢へ増強する計画を表明している。
これについては、元空自空将の佐藤守氏は、「ロシアのクリミア併合で、欧州はガタガタになった。米国はNATO(北大西洋条約機構)にテコ入れせざるを得ない。こうしたスキを狙って、中国が東シナ海や南シナ海で強く出てくる危険性がある。オバマ政権としては『日米同盟は健在だ』『東アジアを日本とともに守る』という意思を示す必要があった。イージス艦の増強は北朝鮮対策ではなく、対中牽制だろう。加えて、日本に『東アジアの平和と安全に責任を持ってくれ』とメッセージを送っている。日本の政治家を目覚めさせようとしている」と指摘している。
佐藤氏は、今回の会談について、対中牽制だという見方をしているけれど、その辺りのアメリカ(国防省)の考えについては、会談後の共同声明に少しその後が見える。声明で、小野寺防衛相、ヘーゲル国防長官はそれぞれ次のように述べている。
小野寺防衛相:尖閣諸島に関する米国のこれまでの立場を確認し、東シナ海における力を背景とした現状変更の試みには反対するということで一致をいたしました日本側は尖閣も日米同盟による防衛義務の範囲内であることと、力を背景とした現状変更の試みを許さないことを確認しているから、最低限の目的は果たしたとみていいだろう。
ヘーゲル国防長官:今回、私はハワイに寄ってまいりまして、ASEAN10カ国の防衛相と会談し、次は中国を訪問いたします。小野寺大臣と私はこの両方の訪問についても、ある程度詳細に意見を交換する機会を得ました。…また、アメリカにとっては中国と建設的な関係を築くことが関心事であるということ、日本にとっても重要である旨強調させていただきました。
対するヘーゲル国防長官の発言で注目したいのは、今回の会談は、アメリカがハワイでASEAN10カ国の防衛相との会談を踏まえた上で行なわれていることと、ヘーゲル国防長官は、日米防衛相会談の後に中国に行くということ。これは、日米のみならず、ASEANとも連携して中国に対抗するという意思表示と受け取れる。それだけ準備をして中国に行くということ。
それほど重要なヘーゲル国防長官の今回のアジア歴訪に韓国が含まれていないことが何を意味するかなんてここでは触れないでおく。
そして、声明での質疑応答で、「中国に対して、どういう力を持っての背景をした行動に対してメッセージを出すのか」という質問に対して、ヘーゲル国防長官は次のように答えている。
「訪中の目的について申し上げたいと思います。中国の国防大臣のご招待を受けて今回、数日間訪問するということになっています。そして、直接中国の指導者層と、いろいろな問題について対話させていただくことになっております。…大国は大国なりの強い責任を担っているわけです。中国は大国の一つであると。大国であるがゆえに、新しい、そしてより広範な責任も付いてくるわけです。その権限をどのように使うか、軍事力の配備等も含めまして、ぜひ、この点について全て洗いざらい中国側とお話ししてみたいというふうに思っております。とまぁ、ヘーゲル国防長官は、かなり正直に発言しているように思う。中国に対して、「近隣諸国をその規模に関わらず尊重するようにと話しかけたい」だなんて、昨今の中国の行動は覇権主義だと認識していることが伺える。また、その例としてウクライナ問題を挙げているところをみると、やはり、ウクライナ問題はアメリカにとって相当インパクトがあったことは間違いない。
特に透明性の問題です。…どういう意図があるのか、それぞれ政府が何をやっているのか、なぜやっているのか、意図は何なのかということです。こういう方面についてよりオープンに透明性を上げることができればできるほど、政府間としてよりよい、全員にとっていいということです。…できれば、これによってコンフリクトのリスクが下がることを願っております。
第二に対話という話なのですけれども、対話もいろいろな理由があって重要なのです。対話だけで問題が解決できるわけではないのですけれども、対話なしには問題は解決できないということです。
…お互いの見解を表明する。わかりやすく直接に正直ベースでお互いで話をするということです。…中国に対しては近隣諸国を尊重するようにと話しかけたいと思います。力を背景とした行動というのは、非常に危険極まりないコンフリクトにつながってしまうということです。どんな国、どんな国民も敬意を持ってしかるべきなのです。規模にかかわらず、尊重されるべきであるということです。そして尊重の念がない、力を背景としていろいろ動きがヨーロッパで起こっているわけです。特にウクライナ問題でロシアの状況を見てみますと。そういったことをつぶさに見ているわけですので、それだけ注意深くならなくてはいけないと。そしてはっきりと全ての国がならなくてはいけないということです。」
そして、言葉どおりヘーゲル国防長官は、4月8日、北京で常万全国防相と会談し、東シナ海上空での防空識別圏設定について、「事前の協議もなしに、係争となっている島の上空に、一方的に防空識別圏を設定する権利は、中国にはない。…日中間の係争において米国は日本を守る」と宣言した。
これに対し、常万全国防相は「自ら日本との争いをかき回すようなことはしない。しかし中国政府は領土を保護する必要があれば、武力を使用する準備はできている。…米国は日本の行動を油断なく警戒しなければならないし、日本政府に対し寛大になり、支援してはならない」と反論しているけれど、これまで散々、日本を貶めるキャンペーンをはってきたのに、ここまではっきりアメリカに言われてしまって、内心は相当ショックを受けているのではないか。
とはいえ、アメリカも国防総省と国務省とでは中国に対する態度が少し違うし、ヘーゲル国防長官も日米防衛相会談で、「アメリカにとっては中国と建設的な関係を築くことが関心事である」と強調したと言っているから、中国に完全に敵対する積りはないのだろうと思われる。
今月、オバマ大統領が国賓待遇で来日する際、ミシェル夫人は同行しないと発表されているけれど、先月末、中国に一週間も滞在したミシェル夫人を日本に連れて行かないというポーズを取ることで中国に対して、完全敵対の意思はないというメッセージなのだろう。オバマ政権は日本と中国とそれぞれ微妙にバランスを取りながら対応しようとしている。
ただ、昨年末、韓国を訪れたバイデン副大統領が、韓国の朴槿恵大統領と会談した際、「米国の反対側にベッティングするのは良いベッティングでない」と最後通牒を突きつけているけれど、そのアメリカ自身が何にベッティングするのかを明らかにしなければならない羽目に陥っている。
事なかれで済ませたいオバマ大統領にとっては、何とも皮肉めいた状況ではある。アメリカの「ショー・ザ・フラッグ」は如何に。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
クリミア編入は両国の了解に基づくもの.
ロシアはネオナチが騒ぐウクライナに
は関わりたくない筈.
ネオナチ側には, 逆に, ロシア人迫害
でロシアとの緊張関係を拡大して NATO
をひきずり込む作戦があるかも知れない.
EUの民主主義が如何程かが問われよう.
外交音痴のオバマ大統領 ― 従米派
には困ったことだろうが, 日本の独立を
考えるならばチャンス. 尖閣が取られると
日本の防衛体制が如何に律令政治, つまり
決まり事ばかりで実質には何も動かないこと,
になっていたかが国民にはっきり分かる.