昨日のエントリーの続きです。

3月30日、北朝鮮は、朝鮮中央通信(KCNA)を通じて「アメリカが再び挑発してきた場合に対処し、敵には想像もできないほどの、次の段階の措置も全て準備している。核抑止力を強化するために新たな形態の核実験も排除しない」と「新たな形態の」核実験を示唆する声明を発表した。
これは、先月行われたオランダ・ハーグの「核安全保障サミット」閉会直後の26日に北朝鮮が、事前通告なしに日本海に向けて、中距離弾道ミサイル「ノドン」2発を発射したことを受け、国連安保理事会が28日に非難声明を発表したことに対する声明と見られている。
そして4月4日、北朝鮮のリ・ドンイル国連次席大使は、記者会見し「我々は新しい形態の核実験を実行することを明確にしたい」と更に一段踏み込んだ発言をしている。ただ、肝心の実験の内容や進捗状況などは明言せず、「それが何であるかについては、見守ることをお勧めする」と何やら意味深なコメントをしている。
北朝鮮は過去、プルトニウム型の実験を行っているのだけれど、巷では、早や、この「新たな形態」が何を意味するかを巡って、「地下核実験以外での実験だ」とか、「水爆実験なのか」、とか、「ウラン型」だとか、「ブースト型」だとかいろんな推測が為されている。
「ブースト型」というのは、小規模な核融合で発生させた中性子で核分裂の効率を上げるタイプのことで、コンパクトで強力な爆発力があり、1950年代にアメリカなどで実験が行われた。小型で強力な核弾頭を持っているとなれば、他国への大きな圧力となる。
また、北朝鮮は、自国内で天然ウランが採れ、秘密裡に核物質が調達できることに加え、他国に核技術などを輸出する際の選択肢が増えることから、ウラン型の核実験を行いたい思惑もあると見られている。
ただ、ウラン型となると高濃縮ウランが必要になるのだけれど、昨年8月、アメリカのシンクタンク・科学国際安全保障研究所は、衛星写真を分析した結果、北朝鮮の寧辺にあるウラン濃縮施設の規模がかつての2倍になっていたと発表している。
ソウルの東国大学で北朝鮮を研究している高宇煥教授は、今回の北朝鮮の声明について「ウランの高レベル濃縮技術に進展があったことをほのめかすものだろう」という見方をしている。
そんな中、4月4日、韓国紙、東亜日報が韓国軍高官筋の話として、3月末から、北朝鮮が、北東部の咸鏡北道・豊渓里の核実験場と平安北道・東倉里のミサイル発射基地で、人員のほか、核実験やミサイルに関連するとみられる装備物資搬入の動きが、継続的に確認されていると伝えている。中でも、豊渓里では坑道の補修・拡大作業が行なわれ、東倉里でも、大型の長距離ミサイルを打ち上げるための発射台拡張工事が最終段階にあるとしている。
米韓当局は、今月中に北朝鮮が核実験と長距離ミサイル発射の準備を終える可能性が高いとみているのだけれど、これらのことから、やはり、北朝鮮は、核実験と長距離ミサイル発射実験を"同時"に行うことによって、核弾頭付ミサイル技術があることを世界にアピールする狙いなのではないかと見る。
それぞれは別の実験であっても、同時に行えば、外交的には「核弾頭付ミサイル」と解釈される。しかも事前に「新たな形態」と宣言している。「新たな形態」を枕詞にして、ミサイルを発射されたら、たとえ核弾頭搭載技術を持っていないとしても、外交的ブラフ効果は間違いなくある。
そして、今や北朝鮮の内部では、金正恩の独裁にむけた粛清が進んでいる。
2月28日、韓国在住脱北者のラジオ局「自由北韓放送」は「崔竜海が監禁されて取り調べを受けている」と伝え、失脚した
可能性があるという噂が立った。
崔竜海氏は、昨年、北朝鮮のナンバー2であった張成沢氏の失脚・粛清後、新たにナンバー2の座についたと目される人物だったのだけど、金正恩の指導体制に違反した疑いが持たれたからだとか、軍経験のない崔竜海氏について、快く思っていない軍幹部たちにひきずり下ろされたのではないか、とか、いろんな憶測が為されていた。
ただ、3月9日に実施した北朝鮮最高人民会議の選挙では、この崔竜海氏が当選したと発表されているから、失脚したというわけでもなさそうだ。それでも、2013年に金正恩氏の随行回数が最も多かった崔竜海氏は、今年に入って、随行回数がぐっと減って、僅か3回。これをもって、既に金正恩から遠ざけられているのではないかという観測もある。
筆者は去年の12月「ナンバー2不要の金正恩と北朝鮮の混乱」のエントリーで、金正恩は、絶えず幹部を入れ替えて、政権内部に「ナンバー2」作らないことで、結果的に自らを脅かす存在を育てないようにしているのではないか、と述べたことがあるけれど、そうだとすれば、これは、金正恩独裁体制の強化であると言えると同時に、何時寝首をかかれるか分からない脆弱な体制であるとも言える。
だけど、こうした独裁者によって、朝鮮半島が統一されたとしたら、韓国内で金正恩に反対するものは根こそぎ血の大量粛清されるかもしれない。それくらい怖い国。
今の北朝鮮は、貧しいから、「あの程度」の軍事挑発で済んでいるのであって、韓国を併合して、下手に国力をつけてしまったら、とんでもなく危険な存在になることを忘れてはいけない。
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