今日は、この話題です

3月24日と31日、韓国。ソウル郊外の坡州市の山中と、北方限界線(NLL)に近いペクニョン島で無人航空機が墜落されているのが発見され、分析の結果、韓国国防省が「北朝鮮から来た可能性が高い」と発表した。
ペクリョン島で墜落した無人航空機は長さ1.83メートル、幅2.457メートル、坡州で墜落した無人機は長さ1.43メートル、幅1.92メートル。機体はレーダーで探知しにくいポリカーボネート製で、儀装目的と思しき水色などで塗られていた。バッテリーに北朝鮮式のハングル表記があったことが、北朝鮮製とした根拠のようだ。韓国メディアは、機体下部に搭載されたカメラはニコン製或いはキヤノン製で、無人機は1回の任務で約2時間、150キロメートル程度を飛べると報じている。
韓国国防省関係者の話では、坡州の無人機は24日午前に韓国に入り、時速100キロ程度でソウル市中心部の大統領府上空に到達。北朝鮮に引き返す途中に坡州で墜落。操縦は、遠隔操作方式ではなく、搭載された飛行コントローラーに着陸地点の座標さえ入力すれば、後は自律飛行して帰還する機能を備え、動力として内燃エンジンを使っている。
この無人機が今回撮影した写真は193枚あり、中から、韓国大統領府や景福宮などを撮影した映像が発見された。ただし、画質は極めて悪く、グーグルアースなど公開情報より低い水準だったという。
しかも、取った画像を無線送信できるようにはなっておらず、帰還後にデータを回収する仕組みだったようだ。技術的な水準は低く、また機体サイズから爆発物などの運搬能力も小さいことから、韓国国防省は、現時点で北朝鮮がただちに無人機を対韓国テロに投入する危険性はないとしている。また、ペクニョン島の無人機は、海兵隊第6旅団など主要な韓国軍の基地・施設を写真撮影していたといわれている。
北朝鮮は1990年代初めから無人機開発に力を入れていて、中国や旧ソ連圏から設計図や試作機を持ち込んで改造したと見られている。例えば、中国の無人機「D-4」(ASN-104)を改造した「パンヒョン-I」「パンヒョン-II」や、シリア経由で導入したアメリカ製無人標的機MQM-107Dを改造した自爆型無人攻撃機「ストリーカー」。そして、ロシアから導入した短距離監視偵察無人機「プチェラ-1T」、「VR-3」も保有していると推定されている。
今回、墜落した機体については、ペクニョン島のがパンヒョンに似ていることから、その改良型ではないかとも思えるけれど、もう一方の坡州の機体は、エイのような形をしていることから、これまで知られている無人機以外のものも多数保有している可能性がある。
今回の事件は、青瓦台という韓国中枢部にまで侵入を許したばかりか、探知すらできなかったことが明るみになり、韓国に衝撃を与えている。また、ペクニョン島の無人機については、侵入を探知して、海兵隊がバルカン砲で対応射撃を行ったものの、撃墜に失敗していたことも分かった。
韓国政府の関係者によると、「海兵隊が最大射程距離2キロのバルカン砲を約300発発射した。だが、無人機の高度が5000~6000メートルと高かったため、撃墜できなかった」と説明しているのだけれど、ペクニョン島の機体と思われる「パンヒョン-I」「パンヒョン-II」の最大高度は3000m。計算が合わない。また、射程2キロしかないバルカン砲を5000m以上の標的に向かって撃つというのも変な話で、もしかしたら5000~6000メートルではなくて、5000~6000フィート(1524m-1828m)の間違いかもしれない。これなら辻褄が合う。
だけど、この場合は射程内で300発の砲弾を撃っても撃墜できなかったことになるわけで、これはこれで問題だろう。
韓国軍関係者は「小型無人機は、現在韓国軍が持っているレーダーでは探知できず、肉眼で発見して機関砲などで撃墜するしか方法がないため、困っている」とコメントしている。去年、韓国は、国内メーカ製の新型の低高度探知レーダーを開発しているのだけれど、北朝鮮のAN2低空侵入機やヘリなどが主な目標で、小型無人機は探知できない。その為、小型無人機も探知できる強力な高出力レーダーを導入し、大統領府や国防部、国の主要な電力施設などに配備すべきだと指摘する声が上がっている。
今回の問題を重くみた韓国政府は、3月28日、大韓民国航空会など関連機関にラジコン飛行機に対する徹底した管理・監督と関連規定の遵守を頼む内容の公文書を送付。ソウル・釜山地方空港庁は無人飛行装置の運営実態に対する全数調査を開始している。そして、4月3日に、無人機関連緊急会議を開き、国内無人飛行機運営実態に対する全数調査とともに、特定性能以上の無人航空機に対しては重量に関係なく政府に申告するなど安全管理を強化する方針を出した。
韓国の航空法では、無人航空機と無人飛行装置に対して、登録・申告手続きを設け、申告しなければ最大で懲役6月または罰金500万ウォンを、飛行計画の承認を受けずにむやみに飛ばせば最大200万ウォンまでの罰金を課しているのだけれど、重さ12㎏以下の無人飛行体については不要としていた。その申告基準を今後引き下げるという。
今回墜落した機体の重量が13~15kgであることを考えると、このサイズで申告がないラジコンは、もう片端から迎撃するということなのだろう。
また、4月2日に、大統領府で国家安全保障会議(NSC)常任委員会を行ない、北朝鮮に対する報復措置について検討。大統領府の上空まで北朝鮮無人機が入り込んだことを、相当深刻な状況として、真っ向から張り合おうという意見まで出たと伝えられている。その中には、韓国の無人機による平壌侵入作戦などが検討されていると言われているのだけれど、そうしたとして、果たしてどれほどの効果があるのか、ちょっと疑問。もしも、侵入し返したとして北朝鮮側にたちまち発見されて、撃墜されたら恥を晒すだけ。金正恩の居場所と姿を撮影して、世界中継してみせるくらいのことをすれば、牽制にはなるとは思うけれど、そうして張り合う以前にもっとやっておくべきことは山程ある。
4月2日、在韓米軍のカーティス・スカパロッティ司令官は、アメリカ連邦議会下院国防委員会の聴聞会で「韓半島で軍事衝突の危機が高まったら、兵力を速やかに移動・配置して備えなければならない。しかし予算削減が計画通り進められると、在韓米軍や将来の兵力増派に問題が生じかねない。…韓半島は、アフガニスタンに続き米軍が最優先にしている戦場。在韓米軍は韓半島と米国の利益を守るために備えているが、有事の際、後続部隊の増派に問題が生じれば非常に心配。…偶発的な事態が発生したとき、米軍の増援兵力が韓半島に速やかに増強配置されなければ、北朝鮮に防衛体制を構築する時間を与えることになり、韓米連合軍の作戦時間が長引いて味方の被害も増えかねない」とアメリカ国防予算削減によって韓半島有事の際に後続の米軍増派が困難になると懸念を示している。
筆者は、4月1日のエントリー「韓国がアメリカに切り捨てられる日」で、在韓米軍は2015年の軍事指揮権移譲前に半島有事が起こってしまった場合に備えて、半島に介入しない準備を進めている可能性もある、と述べたけれど、これまでアメリカが予算削減とは関係なく在韓米軍の規模は維持され、韓半島の防衛に問題はないという立場を取っていたことを考えると、今回のカーティス・スカパロッティ司令官の発言は、アメリカが半島有事に介入しない可能性が低くないことを示唆したともいえる。
日本からもアメリカからも距離を置かれつつある韓国。日本は有事への備えを急ぐべきだろう。
この記事へのコメント
ス内パー
首都及び主要機能を「より中国に近い」という理由でソウルに置くのもアホですがソウル陥落時に使用する仮首都がない(正確には機能していない)上に軍人以外にそれを危惧する人材がいないのが痛いです。
ぶっちゃけ首都がソウルでなければあの程度問題にもならないのですよね……
泣き虫ウンモ
アイデアが無いのは、中韓の致命傷でありロシアより酷いかも知れない。
少なくとも、ソ連には思考がありましたね。