昨日のエントリーの続きです。

3月31日、北朝鮮は朝鮮半島西側の海上の境界線(NLL)付近で砲撃訓練を行い、海岸に配備した多連装砲など計約500発を発射。うち約100発の砲弾がNLLの韓国側海域に落下した。韓国国防省によると、北朝鮮は午後0時15分から3時半まで、計7カ所で8回に分けて訓練を実施。100ミリ海岸砲や122ミリ、240ミリロケット砲などを撃ったとしている。
韓国軍は報復として、K9自走砲で約300発をNLLの北朝鮮側に応射。境界線に近いヨンピョン島やペンニョン島では、軍の指示に従って住民たちが避難場所に避難しているという。
韓国軍は2月24日から、米軍と毎年恒例の合同軍事演習「キー・リゾルブ」と野外機動訓練「フォール・イーグル」を実施している。コンピューターなどによる米軍増援や指揮系統を確認する「キー・リゾルブ」は3月6日に終了し、「フォール・イーグル」は4月18日まで行われる。
「フォール・イーグル」は、米軍約7500人が参加、韓国軍と合わせて、およそ1万4000人という、この20年余りで最大規模の上陸訓練をこの日行っていた。
韓国国防省報道官は「北朝鮮の射撃訓練は計画された挑発だ」とし、「南北関係の主導権を握り、韓国軍のNLL防衛の意志を試そうとした」とコメントしている。
昨日のエントリーで半島有事に触れたけれど、実際にこんなことが起こってる。半島有事は遠い話ではないと警戒するに越したことはない。
昨年、日韓の外交・安全保障問題を主なテーマに、北朝鮮情勢や集団的自衛権の行使容認などについて意見交換するために両国で非公式協議が行われたそうなのだけれど、その場で、日本側の政府関係者が 「朝鮮半島で再び戦火が起きて、北朝鮮が韓国に侵攻しても日本は韓国を助けることにはならないかもしれない。…頭の体操だが、日本は米国に事前協議を求めて、米軍が日本国内の基地を使うことを認めないこともあり得るかもしれないということだ」と発言していたことが明らかになり、一部で話題になっている。
現在の日米安保条約は、1960年に改定されたものだけれど、その際、軍事行動に関して両国の事前協議・相互協力義務などが新たに加えられていて、事前協議については、第4条に規定されている。次に引用する。
第4条 (イ)日米安保条約の実施に関して必要ある場合及び(ロ)我が国の安全又は極東の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には、日米双方が随時協議する旨を定める。この協議の場として設定される安全保障協議委員会(日本側の外務大臣と防衛庁長官、米国側の国務長官と国防長官により構成(いわゆる「2+2」で構成)される会合)の他、通常の外交ルートも用いて、随時協議される。つまり、日米「2+2」で了解が出なければ、アメリカ軍は日本国内の基地を使うことはできない。
日本は1999年に周辺事態法を制定しているのだけれど、そこで規定されているのは、アメリカ軍に対する後方支援であって、直接戦闘に加わることを許していない(第3条)。また、昨日のエントリーで取り上げた、集団的自衛権行使容認についての素案でも、自衛隊を他国の領土、領海、領空には派遣しないとなっているから、半島有事において、自衛隊は直接関わることはない。アメリカ軍の後方支援をするだけ。
つまり、半島有事の際に、直接、韓国を助けるかどうかは、全てアメリカの胸先三寸に委ねられている。しかもそれは、日本との事前協議でOKを得なければならないという条件付き。
世間では、アメリカは2015年12月に軍事指揮権を韓国に移譲するまでは、しぶしぶながら助けるだろうという見方が大勢だと思うけれど、もし、今回の日本の「韓国を助けない」発言が、アメリカと示し合わせた上での発言だとしたら、そうではなくなってくる可能性がある。
もしも、アメリカが、半島有事の際でも、韓国を助けないと胸の内で決めていたとしても、軍事指揮権を持っている限り、傍観することは極めて難しい。だけど、半島で軍事行動を起こすための条件となる日本との事前協議で了解が出なかったら、いくら反撃準備を整えたところでどうしようもない。
つまり、アメリカは2015年の軍事指揮権移譲前に半島有事が起こってしまった場合に備えて、半島に介入しない名分(言い訳)として、日本にそう言わせたのではないか、と。
これなら、半島有事でも、アメリカ軍は、政府間での了解が出ないからという名目で、「我々は、在韓米人、在韓邦人の救出活動のみしかできない。残念だ(テヘペロ)」、という態度を取ることもできる。狡猾といえば狡猾かもしれないけれど、そういう冷徹な判断を下している可能性はある。
もしも、そうだとして、それを北朝鮮が感知していたとするならば、今回のNLLを超えての砲撃も、アメリカが本気で韓国を助ける積りがあるかどうかの探りを入れたという見方もできる。
やはり、半島有事は近いのか。
この記事へのコメント
泣き虫ウンモ
知恵比べでしょうね。
弁信
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13117586363
また最近になり、片山さつき議員がツイッターで以下の発言をし、一部で話題になっています。
https://twitter.com/katayama_s/status/448831844583092224
国連軍地位協定と日米安保条約との関係、半島有事の際に日本は具体的にどのような法的地位にあるのかといった問題は、日本の安全保障にとって極めて重要な問題であり、国民も正確な情報を知っておくべきであると思います。
日比野庵さんの分析を期待する次第です。
almanos
深月
この無人機騒動に見られる、北朝鮮と韓国の軍事技術&科学技術の差を考えると、「北主導の半島統合」という流れになるのかも…と想像されました。
※日本は壁を作って、ひたすら見守るのみ、と言う事になりますでしょうか…