今日は、この話題です。

1.同じ穴の狢
STAP細胞論文不正問題が拡大、波紋を呼んでいる。
4月24日、STAP細胞論文不正問題の調査委員長を務める理研の石井俊輔上席研究員らが執筆した論文に改竄があるとの疑義が指摘されたことが分かった。
論文は、乳癌を抑制するタンパク質に関するもので、平成20年に理研などのチームが英学術誌に発表し、石井氏は責任著者の一人だった。
問題とされたのは、遺伝子を調べる実験結果の画像で、その一部を入れ替え、改竄したのではないかと指摘されていた。
これを受けて、石井氏は発表論文をすべて検証、指摘どおり説明の順番になるように、図を入れ替えていたことを認めた。
石井氏は「オリジナルのデータがあり、不正な改竄ではない」と否定した上で「疑義を指摘された以上、その部分を突かれると理研や委員会に迷惑をかける。調査委員長がこのような隙を作ってはいけない。不本意だが本日、理研に委員長の職を辞したい旨を伝えた。慰留されても意志は固い」と25日付で、調査委員長を辞任した。学術誌側も、論文そのものに不正がないことを認め、訂正を承諾しているという。
あれ程、小保方氏論文が切り貼りだなんだと責め立てていた癖に、当の自分がやっていたなんて、出来の悪いコントにも程がある。
2.飛び火する切り貼り検証
そして、こうした切り貼り、コピペ疑惑は更に拡大し、とうとう、iPS細胞の山中教授の身にまで及んだ。
これは、去年の4月頃にインターネットで指摘されていたらしいのだけれど、山中教授が2000年に発表した、ES細胞で重要な遺伝子の機能についての論文に2ヶ所の画像が酷似していることと、遺伝子の働き方を示す実験データの図表に不自然なところがあるとの書き込みがあったという。
こちらにその辺りの検証が纏められているのだけれど、まぁ、よくぞこんなところを見つけてくるもの。
山中教授は指摘を受けると直ちに調査を開始。段ボール5箱分の実験ノートを提出していた。山中教授は28日に記者会見を行い、当時の実験ノートから元データが見つからなかったことを明らかにした上で「データ管理が不完全だった」と陳謝。同時に「研究結果は複数の研究者により再現されており、研究者倫理の観点から適切でないことをした記憶もない。…画像を切り貼りするような技術はなかった。そうする必要も理由もない」と、論文内容そのものについては、一点の曇りもないと不正を否定した。
小保方氏以外にも切り貼りしていたという事例が明らかになったにも関わらず、それでも生データがあり、実験ノートがあれば不正ではないというロジックが通用するのなら、同様に、小保方氏が生データを提出するなり、第三者立ち合いのもとの再現実験をやるなりすれば、小保方氏の論文も不正ではないことになる。
小保方氏側の弁護団は4月20日、理研調査委員会に対する不服申し立ての「理由補充書」を理研に提出、2冊の実験ノートやパソコンの保存データをもとに「STAP細胞が用いられた画像であることは疑いがない」と主張している。そして、30日には、理研が規定で、研究不正と定める"捏造"や"改竄"の定義について、解釈を明らかにするよう求める質問状を提出している。
理研は自身の研究者が切り貼りした論文を出し、それを不正ではないと主張する以上は、この質問状にきちんと回答し、世間を納得させる必要があるだろう。
この「論文コピペ」問題、一体、何処迄がセーフで、何処からがアウトなのか。
3.倫理と剽窃
アメリカのソフトウェア技術専門誌に「Software Testing,Verification and Reliability (STVR)」という季刊国際誌があるのだけれど、その共同編集長で、ジョージ・メイソン大学教授のジェフ·オファット氏は、今年4月「グローバル化 - 倫理と剽窃」という論説をSTVR誌に寄稿している。
オファット教授によると、近年、コピペ発見ツール(重複したテキストをハイライト表示するツール)のお蔭で、盗用が発見され易くなり、STVR誌では、毎年10~20の投稿を、盗用を理由に拒否しているそうだ。
オファット教授は、盗用にはいくつかの種類・段階があるとし、次の例を挙げている。
・完全コピー(Complete copying) …まる写しこれらの中で、「完全コピー」や「主な結果のコピー」、そして「未発表作品のコピー」は悪質な例だとし、過去STVR誌に完全コピーした論文が投稿された時には、著者をブラックリストに載せ、将来にわたって投稿禁止とする厳しい処分を下したとしている。
・主な結果のコピー(Copying key results) …結論だけコピー
・未発表作品のコピー(Copying unpublished work) …他人の横取り
・補助テキストをコピー(Copying auxiliary text) …背景や序文で他論文のテキストを借用
・不適切な引用(Improper quoting) …引用してるのに引用ソースを明示しない
・セルフコピー(Self copying) …自分自身の過去論文をコピー
・推移セルフコピー(Transitive self copying) …共著者の過去論文をコピー
・暗記してコピー(Copying by memorization) …人から聞いたことをコピー
※中でも、オファット教授は、未発表作品のコピーを"the worst form of plagiarism(盗作の最悪の形態)"と呼んでいる。
次に、「補助テキストのコピー」はやや程度が軽く、STVR誌は、論文は拒否するけれど、著者をブラックリストには載せないという処置をしているようだ。また「不適切な引用」についても、修正した論文については受け取る場合があるとしている。
これに対して「セルフコピー」については、著者は同一テーマで複数の論文を書くことから、序文や関連研究などの材料を再利用するのは当然であり、盗作とは考えてないとしている。ただし余りにも多くのテキストをコピーした場合は著作権に引っかかる可能性があると注意している。
そして、「推移セルフコピー」と「暗記してコピー」については、是非の明言を避けているものの前者は混乱を避けるために、修正するのがベストだとし、後者は、それを行った学生達が悪いことをしたと認めなかったことから"非常に異なる文化的な視点(a very different cultural viewpoint)"と述べている。
小保方氏のSTAP論文を、この分類に当てはめてみると、小保方氏が赤の他人の画像を切り貼りでもしない限り「セルフコピー」に該当すると思われるのだけれど、オファット教授によると「セルフコピー」は盗作ではないということだから、後はSTAP論文の内容そのものが本当かどうかだけが焦点になるはず。
であれば、小保方氏のSTAP論文にしても、STAP細胞が存在するかどうかを検証すればよいだけであって、論文撤回云々は順番が逆。検証してからでも十分間に合う話。
だから、もしも、理研が、それでも小保方氏に論文を撤回させたい理由があるのなら、それは科学というよりは、理研内部の問題だというべきではないかと思う。
この記事へのコメント
茄子紫
全くの誤解の部分と理解されてない部分、二点のみ指摘しておきます。
一点目、小保方氏は当該論文の実験方法の部分で引用記載なしで古い他人の論文からコピーペーストするのみならず、現在は存在しない試薬会社の名前も、化学物質の誤字すらそのままで提出している有様です。ここでは長くなるのでほかの指摘は避けますが、ほかも推して知るべしの状態です。
二点目、石井氏の切り貼りは、学会(例:日本分子生物学会)でもゆるされている正当な切り貼りでした。ただ唯一の失策は切り貼りした部分に線をいれなかったことで、これを訂正して受理されているようです。ちなみに、今回の「やっていい切り貼り」とは同一ゲル(ゲルは一枚に複数(10~程度)のサンプルの結果が出ます。実験した順番と、論文での論の展開の順番が変わった場合、その一連の横並びの順番を入れ替えたもので、科学的事実は全く損なわれません)の切り貼り。
小保方氏は複数のゲルを切り貼りしたとされているので問題なのです。これは仮に実験条件が同じでも微妙な差が出るので切り貼りは科学的に許されません。かつ、小
ちび・むぎ・みみ・はな
反対の「理研外部の問題」だと思う.
科学者同氏に隠れた嫉妬や高名心争いがあったり,
あるグループの利権で他方が被害を被ったり
するのは世間一般どことも変わらない.
しかし, 問題は大学に代表される文部科学省の
(小中高を除く)下部研究・教育組織の
外部からの攻撃にたいする異常な脆さである.
大学入試において間違いのあった設問を自動的に
受験者全員に満点にするなど, およそ常軌を逸した
対応を見れば良く分かる.
常識のある時代には, 間違いの種類によっては
全く問題にされなかったものだ.
今回の騒動の主たる原因は知性のないマスコミの
振舞いに帰せられる.
今回の件が嘘であったとしても, そんなことは
今までも数限りなくあったことであるし,
嘘から出た真で新しい進展があることもある.
暇な人が徒に騒いて何の良いことがあろうか.