石麻呂に 吾物申す 夏痩せに

 
今日は、土用の丑の日ですね。

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土用の丑の日を控え、鰻商戦真っ盛り。ここのところ、ずっと高値が続いている鰻だけれど、今年の売れ行きは好調のようだ。

西武池袋本店では、前年の同じ期間に比べて売上が1割増え、日本橋三越本店では九十分待ちの行列の店あるとか。しかも3000円、4000円もするのが人気を集めているらしい。

土用の丑の日とは、元々、「土旺用事」が省略された呼び名で、五行説を由来に持つ。

五行とは、世の中の全てが木火土金水の五つの組み合わせで成り立つという説なのだけれど、五行では、春に木気、夏に火気、秋に金気、冬に水気を割り当てる。残った土気は季節の変わり目に割り当てこれを「土旺用事」と呼んだ。

「土用」は、異なる季節の間に置くことで、消滅する古い季節とまだ、充分に成長していない新しい季節の性質を静かに交代させる働きをするとされ、各季節の最後の18から19日間を割り当てている。そして、丑の日とは、無論、十二支の丑のこと。

夏の土用の時期は暑さが厳しく夏バテしやすい時期であることから、昔から「精の付くもの」を食べる習慣があり、鰻もその一つだった。

何でも、奈良時代から鰻は食べられていたそうで、万葉集には、大伴家持の「石麻呂に 吾物申す 夏痩せに よしと云う物ぞ うなぎ取り召せ」という歌が遺っている。

実際、鰻には、体に良いとされる栄養素、すなわちEPAやDHAなど成人病 予防に役立つ高度不飽和脂肪酸、視力の維持に大切なビタミンA、抗酸化性が高く老化防止に役立つビタミンEの他、各種ビタミン類やミネラルが豊富に含まれている。

日本は、世界で流通する鰻の7割を消費しているとされる「ウナギ大国」。日本人が1年間に食べるウナギは、約10万トンと言われている。

だけど、そのうち天然の鰻はたった約300トン。それ以外の99%以上は養殖鰻。

鰻の養殖は、シラスウナギと呼ばれる鰻の稚魚が、冬から春にかけて海から川に上ってくるところを捕まえて、ビニールハウスで覆われた池などで半年から1年かけて、育てることで行っている。

日本で養殖生産されるウナギは年間約2万トンなのだけれど、そのために使用されるシラスウナギの数は1億尾ともいわれている。

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だけど、近年、このシラスウナギの漁獲高がどんどん減っていて、ここ数年は50年前の20分の1程度しかとれなくなっているのだという。養殖鰻もその元は海から獲ってくる稚魚だから、稚魚が獲れないと当然その値段は上がる。去年なんかは、国内産シラスウナギ1キロ(約5000尾)の取引価格は248万円にも跳ね上がった。

今年6月、国際自然保護連合(IUCN)が、日本鰻を絶滅危惧種に指定、レッドリストに記載されることになった。

レッドリスト(Red List)とは、絶滅のおそれのある野生生物のリストのことで、絶滅の危険性の高さによって「絶滅寸前」、「絶滅危惧」、「危急」と3つのカテゴリー分けがなされている。

IUCNは日本鰻を水揚げ高の減少を理由に「絶滅危惧」に指定したのだけれど、昭和56年には国内で1920トンあった日本鰻の水揚げ高は平成24年には165トンにまで落ち込んでいる。

その理由として、北里大学海洋生命科学部の吉永龍起講師は、「乱獲」、「河川開発」、「海洋環境の変化」の3つを挙げ、「乱獲だけではなく、生態系を無視した開発で、鰻がすめない河川が増えたことも大きい」と述べている。

東京大学大学院の新領域創成科学研究科・大気海洋研究所の木村伸吾教授らの研究グループは2012年夏頃から、日本鰻の河川での生態を探ろうと、鰻に電波発信機を付けた調査を利根川で行っている。

利根川の中流域の両川岸に数百本の竹製の鰻罠沈めて鰻を捕獲。約10匹の体内に小指の先ほどの大きさの発信機を埋め込んで再放流し、行動を追跡したところ、殆どの鰻は、葦が繁茂する自然の護岸域に集まり、エビやカニを捕食しながら泥の中に潜り込み過ごしていたことが分かった。

その一方、コンクリート護岸にも少数の鰻がいたのだけれど、葦に生息する鰻よりも痩せて小型のものが殆どで、葦に棲む強い鰻に追いやられたのではないかと見られている。

木村教授は「海で孵化したウナギの稚魚が利根川に戻っても、堰やコンクリート護岸で成育が阻まれるケースが多い。遡上しやすいよう堰に魚道を設けることや、自然再生型護岸の導入など、鰻が育ちやすい環境への改善が必要だ」と述べている。

長年に渡って日本の食卓を彩ってきた鰻は、今や絶滅危惧種となってしまった。無定見な乱獲は少し抑え、手遅れにならないうちに、鰻を絶滅させないための手立てを打っておくべきではないかと思う。

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