日本も参入するメキシコの石油・天然ガス開発

 
サッカー日本代表監督にメキシコのハビエル・アギーレ氏が就任することが決まりましたね。今日は、メキシコと縁が深くなるかもしれないという話です。

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7月25日、メキシコを訪れた安倍総理は、メキシコ市の国立宮殿で、エンリケ・ペニャニエト(Enrique Peña Nieto)大統領と首脳会談を行い、石油や天然ガスの開発協力を進めることで一致した。

安倍総理は「メキシコの石油増産やシェールガス開発が、世界のエネルギー市場の安定にとって重要だ」と述べ、技術・資金両面で資源開発を支援する考えを表明、それに合わせて、独立行政法人・石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とメキシコ石油公社(PEMEX)による技術・人材協力など14の覚書を交わした。

メキシコは2012年7月に大統領選挙が行われ、最大野党の制度的革命党(PRI)のペニャニエト氏が当時のカルデロン大統領を破って当選。12年振りの政権奪還を果たした。

ところが、PRIは政権こそ獲ったものの、上院・下院共に単独過半数には至らず、更なる経済成長と貧困対策等を求める経済界・国民の声に応える為、改革を政権の最優先課題と位置付けている。

とはいうものの、メキシコ連邦政府の歳入は国有企業に対する公的負担金(公課)に多く依存していて、税収そのものは多くない。

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2010年時点での税収はGDP比で9.7%。これは、OECDの平均である24.8%の半分以下の水準で、中南米主要15ヶ国の平均16.9%と比べても大きく見劣りする。※因みに日本の歳入のGDP比は28.6%

このうち、他国と比較して特に差があるのが間接税収入なのだけれど、その理由として、露天商、行商人など、統計の対象にならない非正規事業者が多く、付加価値税(IVA)を徴収できていないことや、食品、医薬品など付加価値税が無税の品目が沢山あって、税金を取り損なっているなどが指摘されている。

ただ、メキシコ連邦政府の公的負担金を加えた歳入でみると、GDP比でも22.7%となって、そこそこのレベルには達するのだけれど、その歳入総額の実に33.7%はメキシコ石油公社(PEMEX)からの公課金。要するに、メキシコ政府の財布は、メキシコ石油公社(PEMEX)におんぶに抱っこだということ。

ペニャニエト大統領は「改革は生産性や経済成長を促すことにつながる」と、エネルギー分野の改革を政権の経済政策の柱に据え、地下資源の支配権は国にあると定めた憲法の見直しに着手。2013年12月に、外国企業がメキシコ政府や国営石油公社(PEMEX)と契約を結び、石油や天然ガスの探査や採掘に参加できるようにする憲法改正を行っている。

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現在、メキシコの原油生産量は2004年をピークに減少傾向にあるのだけれど、その背景に、メキシコ石油公社(PEMEX)の非効率な経営体質や過剰な税負担などがあると指摘されているのだけれど、その影響で、探鉱や開発に十分な資金をかけられず、油田やガス田の新規開発が滞り、結果、生産量の減少を招いたと言われている。確かに、政府歳入の3割を負担していればそういったこともあり得るだろう。

これまで、メキシコ政府に莫大な貢献をしていたメキシコ石油公社(PEMEX)は、ペニャニエト政権から改革を求められている。

メキシコの在来ガスの確認埋蔵量は 2011年1月現在で 12.0兆立方フィート(trillion cubic feet:tcf)あるのだけれど、近年、メキシコ湾の沖合いで有望なガス田が複数見つかったことから確認埋蔵量は増加し、2011年末時点での確認埋蔵量は大幅に増え、17.3Tcfとなっている。

一方、シェールガスはどうかというと、アメリカ・エネルギー情報局(EIA)が、2013年 6月に発表したレポートによると、メキシコの「技術的回収可能資源量」は、545Tcfと世界第6位、世界シェアで7.5%を占めるとなっている。

また、メキシコ石油公社(PEMEX)自身も2010年にシェールガスの独自調査を行っていて、2011年に「技術的回収可能資源量」は、90%確度で150Tcf、10%確度まで広げると 459Tcf、平均で297Tcfと発表している。

メキシコのシェールガス、シェールオイルの分布は、北部の国境地帯から中南部のメキシコ湾岸地域への陸上部が有望視されていて、北部はガス資源が多く、南部は油資源が多い傾向があると報じられている。

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シェールガスとは、シェールオイルと同じく「頁岩」に閉じ込められたガスのこと。「頁岩」は、泥岩の一種で、1億数千万年前のシダや藻などの植物の死骸をその中に含んでいる。地下の圧力で温度が上昇すると、死骸などの有機物が炭化水素に変わるのだけれど、オングストロームサイズの炭化水素は、1ナノメートル程度の岩と岩の隙間の中では動けない状態でとどまっている。その「頁岩」を砕いて隙間を開けてやることで、炭化水素のガスが漏れ出してくる。これがシェールガス。

ただ、今のところ、メキシコ石油公社(PEMEX)は、深海の在来型油ガス田の開発に注力していて、シェールオイル・シェールガスの開発には殆ど予算が回せず後回しにされているのが実情。

それでも、各国は、メキシコのエネルギー改革を評価しているようで、2013年12月には、S&Pがメキシコのソブリン格付を 「BBB」から「BBB+」へ引き上げ、2014年2月には、ムーディーズも「Baa1」から「A3」に引き上げている。

アメリカは、2013年12月にメキシコとの間で「炭化水素共同開発協定(TransBoundary Hydrocarbons Agreement)」を発効し、石油・ガス資源開発の投資環境を整備。ロシアも2014年1月にダボスで、ロシアの石油会社ルクオイル(Lukoil)総裁が PEMEX総裁と石油の探鉱・採掘に関する協力合意書に署名している。

また、イギリスは2014年2月にクレッグ副首相がメキシコを訪れ、ペニャニエト大統領及びPEMEX総裁と会談。フランスも同4月に、オランド大統領がメキシコに赴き、両国大統領同席の下、フランス最大の石油会社トタルCEOが、PEMEX総裁と大水深の探鉱・採掘に関する技術協力等のMOUに署名している。

さらに、その他にも、韓国、中国、ノルウェーなどが食指を伸ばしている。

ただ、食指といっても、イギリスやフランスなどのように、油田、ガス田の大水深開発での協力がメインになっているようで、日本のようにはっきりとシェールガス・シェールオイルの開発を掲げているわけではないようだ。

まぁ、メキシコ石油公社(PEMEX)自身がシェールに手が回っていない状況だから、儲け話という意味では、当然のことかもしれないし、コストが嵩むシェールガス・シェールオイルの開発は、日本にやらせておけばいいなんて思惑もあるのかもしれない。

ただ、それでも、エネルギー自給率の低い日本にすれば、エネルギー安保の面も、技術保持の面でも、メキシコと縁をつけておいて損はないと思うし、埋蔵量からいけば、秋田でシェールオイルを掘るよりは余程マシだろうと思われる。

今後の進展に注目したい。

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