半島オセロ

 
昨日のエントリーの続きです。

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7月3日、中国の習近平国家主席が韓国を訪れ、朴槿恵大統領との首脳会談を行った。中国の最高指導者が、北朝鮮より先に韓国を訪れるのは初めてのことで、「韓国重視」と「中韓協調」を演出したのでないかと見られている。

会談後に発表された共同声明の要旨は次のとおり。
一、双方は相互信頼に基づく成熟した戦略的協力パートナー関係を構築する
一、双方は朝鮮半島での核兵器開発に強く反対するとの立場を再確認した
一、中国側は南北関係の改善に向けた韓国側の努力を積極的に評価し、朝鮮半島の平和的な統一の実現を支持した
一、創造や革新を通じた両国国民の生活の質向上、地域・世界経済成長のけん引役を果たすことにした。両国の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉の進展を評価し、年末までに交渉を妥結するための努力を強化することで一致した
一、人的・文化的な交流を行い、心と心が通じ合う信頼関係を構築する
一、両国政府・国民間の相互理解と信頼に基づき、北東アジア地域の平和・安定、世界発展・共同繁栄に寄与していく。
この共同声明について、何でも、韓国メディアは、「河野洋平官房長官談話」の検証結果公表があったことから、両首脳による「日本たたき」を期待していたようで、「昨年の首脳会談と比べると、『想定外』といえる」と失望感満載の記事を書いている。

だけど、それ以上に筆者が注目したいのは、声明の中で、中国が半島統一を支持したという点。何で中国が半島統一に口を出す権利があるのかはさておいて、これを韓国で述べた点に大きな意味がある。なぜなら、見方によれば、韓国主導による半島統一、すなわち、韓国が北朝鮮を併合・吸収することを認めたとも受け取れるから。

最近まで、中国にとって朝鮮半島はいわば自由主義圏と接する緩衝地帯であり、北朝鮮は、中国の安全保障上の緩衝地帯の役目を追っていたという見方が強かった。ところが、軍事技術が発達しミサイルが数多く配備されるようになって、緩衝地帯という概念が陳腐化しつつある上に、北朝鮮の核開発によって逆に半島が東アジアの火薬庫となってしまっている。

もちろん、その火薬庫もその鍵を中国が持てているうちは良かったのだけれど、この半島北部の"核火薬庫"の鍵はいつの間にか壊されてしまった。今では、火薬庫本人がその鍵を持っているかのようにふるまっている。

中国が火薬庫の鍵を奪い返すには、力づくで奪い返すか、火薬庫本人を自滅させた後にゆっくり取り返すといった方法が考えられるけれど、中国は後者を選択したのではないかと思う。

具体的には、北朝鮮への援助を停止することで体制崩壊を誘発し、韓国に半島を統一させる。そして、中国はその後ろ盾として居座って、統一朝鮮を昔のように属国化する。これならば、中国は自らを傷つけることなく、火薬庫の鍵を取り返すことができる。

そのために、中国は韓国に接近して、韓国を属国化するための仕込みを始めているのではないかと見る。

実際、中国は今年1月から3月にかけて、北朝鮮に原油を全く輸出していなかったことが、最近、中国税関総署の統計などから明らかになっている。北朝鮮はこれまで中国から年間50万トン超の原油をパイプラインで輸入しているのだけれど、専門家によると、3ヶ月も原油供給がないのは異例なのだという。

しかも、この話には裏があって、去年12月にアメリカのバイデン副大統領が来中し、習国家主席と会談した際、バイデン副大統領が「北朝鮮崩壊後の処理を、米中で話し合いたい。核問題を解決するために、北朝鮮への原油供給をやめてほしい。…核開発を放棄して生き残るか、あるいは核開発を続けて崩壊するかの選択を北朝鮮に迫るべきだ」と主張したと伝えられている。



去年の12月にこうした要求がアメリカからあったとすると、その翌月からいきなり原油供給を停止したこととも辻褄が合うし、必然的に、中国が北朝鮮崩壊後のことを計算し、行動に移すことは自然な流れ。

また中国は、原油だけでなく、中国の主要銀行からの北朝鮮へのドル送金を中止している。これにもアメリカからの強い要請があったとされる。中国は金と石油で北朝鮮の首を絞め始めてる。

ただ、中国は北朝鮮崩壊のシナリオと、韓国による半島統一と属国化についてはもう少し前から考えていたフシがある。

2013年5月に北朝鮮の崔龍海人民軍総政治局長が、中国を訪れ、習主席と会談しているのだけれど、元々、中国は張成沢・国防委員会副委員長の訪中を要請していた。それなのにやってきたのは、崔龍海氏ということで、中国は激怒したらしい。

そして、翌月の2013年6月に、韓国の朴槿恵大統領が訪中したのだけれど、習主席は、朴大統領との2人だけの首脳会談で「統一問題については、韓国とだけ話し合う」と述べ、朴大統領を喜ばせたという。

この辺りから中国が北朝鮮の崩壊と半島統一後のシナリオを描いていたとすると、先のアメリカのバイデン副大統領からの北朝鮮への原油供給停止要求は、渡りに船というか、アメリカに恩を売れる丁度良い機会だったということになる。

無論、北朝鮮とて原油を止められた段階で中国の意図には気づいている。座して死を待つ訳がない。だから、それを打開するために、日本に急接近したのではないかと思う。丁度、北朝鮮は日本に対して、上手いことに、拉致被害者というカードがある。だから、これを"大事"に使うことで、なんとか国家の崩壊を避けようとすると思われる。

つまり、北朝鮮は拉致問題を解決することで、日本と国交正常化を果たして、兆円単位の経済協力資金を得たいという強い動機がある。しかもそれに、国家の命運が掛かっている可能性すらある。

一説には、北朝鮮の石油備蓄は、2年程度という観測もある。これが事実ならば、拉致被害者調査の期限を1年程度となったのにも理由があることになる。

今、日本と北朝鮮が接近したことで、韓国は挟み撃ちされる形となっているけれど、傍からみれば、まるでオセロか何かのように、韓国の態度をひっくり返す圧力となっているように見えなくもない。

だけど、仮に、日本が韓国を黒から白にひっくり返すことに成功したとしても、その裏で、中国が韓国に半島統一させることで、韓国と北朝鮮諸共、白から黒にひっくり返すのを狙っていることも頭の片隅に入れておいた方がよいかもしれない。

それを更にまた、ひっくり返すことを考えるならば、半島の更に奥、北朝鮮の裏側に白石を置くことを考える必要がある。それは、ロシアとの関係改善を進めることを意味してる。

北朝鮮という国がいつまでも生き残ることが好ましいなどとは決して思わないけれど、このチャンスに拉致被害者を取り戻しておかないと、次のチャンスなど何時くるか分からないし、それ以前に、半島そのものが混乱の渦となっている可能性だってある。

非常に微妙な外交が求められる局面になってきた。安倍総理には、是非頑張っていただきたい。




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