感染拡大が続くエボラ出血熱

 
今日は、エボラの続報エントリーです。

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1.感染拡大を止められないエボラ出血熱

8月15日、国境なき医師団(MSF)のジョアンヌ・リュー会長が、ジュネーブで会見し、エボラ出血熱の西アフリカでの感染拡大について「まるで戦時中のようだ。どこにいても恐怖を感じ、何が起きるか分からない。前線の位置が変わるように、エボラ熱がどう広がるか予想がつかない」と述べ、封じ込めには少なくとも6か月かかるとの見方を示した。

国境なき医師団は西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3か国で医療支援活動を行っていて、リュー会長は10日間にわたって現地を視察していた。

何でも、感染拡大のスピードに治療が追いつかず、新たに治療センターを設置しても、すぐに定員を超えてしまう状態だとちう。同じく15日に、WHOもエボラ出血熱の疑い例を含む感染者数が2100人を超え、うち死者数が1145人にのぼると共に、感染拡大の実態を把握し切れていないことを明らかにし、実際はもっと多い 可能性が高いと発表している。

先日、「エボラ出血熱に立ち向かう『T-705(ファビピラビル)』」 「エボラ迎撃薬『ZMapp』」のエントリーで、エボラ治療薬について紹介したけれど、8月11日、Zmappを開発したマップ・バイオファーマシューティカル社は、未承認薬であるZmappに対する、あらゆる要求に応じてきたとしたうえで、すべての患者にZmappを無償で提供したとし、西アフリカのある国に提供したことで在庫が底をついたと明らかにした。

マップ・バイオファーマシューティカル社は具体的にどの国に提供したかは明らかにしていないのだけれど、別の報道では、リベリア政府がZMappを3クール分を発注したと伝えられていることから、一部では、リベリアではないかと見られているようだ。

ただ、WHOの15日の発表からいけば、エボラに感染して治療中と思われる患者は1000人くらいだと思われるのだけれど、この段階でZmappの在庫が底をついたということは、まだまだ量産体制が整ってないということ。勿論、薬として未認可の段階だから、量産体制が整っていないのも当たり前といえば当たり前。

ただ、Zmappはタバコの葉の中で、エボラのモノクローナル抗体を生成させることで作られる薬だから、手間も時間もかかる。一説には、少量の生産でも3~4ヶ月かかるとも言われている。

果たしてこれで、エボラ感染拡大のスピードに追いつけるのか。




2.RNA干渉治療薬「TKMエボラ」

一方、Zmapp以外のエボラ治療薬として、使用が検討されているのが、カナダのバイオ医薬品会社テクミラ・ファーマシューティカルズが開発中の治験薬「TKMエボラ」。

「TKMエボラ」はアメリカ防総省との契約で開発されたもので、「RNA干渉」と呼ばれる技術を応用しているとされる。RNA干渉(RNAi)とは、遺伝子機能解析法の一つで、細胞や生体内の特異的な標的mRNAを分解することで、部分的にRNAを欠損させた遺伝子を人工的に作り出し、それを解析することで欠損させたRNAがどんな働きをするのかを調べる手法。なんでも、近年急速に頭角を現してきた強力な手法らしい。

従って、この技術を応用した「TKMエボラ」は、エボラウイルスのRNAを部分的に破壊することで、エボラウイルスを増殖させないタイプの治験薬だと思われる。

「TKMエボラ」は、今年になってから、健常な被験者を対象に小規模の安全性試験を開始し、単回投与の試験を済ませているのだけれど、正式承認されていない。

テクミラ社は「状況の深刻さを踏まえ、臨床・規制上の手順に従って当社の治験薬の使用に向けた選択肢を慎重に精査している。…エボラ熱のウイルス感染者の治療に「TKMエボラ」を使用するため、世界保健機関(WHO)やさまざまな国の政府機関、非政府組織との協議をしていく」と述べており、アメリカ食品医薬品局(FDA)も7月、「TKMエボラ」の作用の仕組みについて追加情報の提供を求め、つい先頃、「TKMエボラ」を感染者に使用できるように、治験全体の保留命令を部分的な保留命令に変更している。

このように次々と新薬が開発されているエボラ治療薬なのだけれど、中には怪しげな薬もあるらしい。

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3.ナノシルバー

8月14日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、偽のエボラ出血熱の予防薬、もしくは治療薬がインターネット上で販売されていることへの警戒を強めていると表明した。今回の表明で、アメリカ食品医薬品局(FDA)はどの薬が偽治療薬だのなんだのと指摘した訳ではないのだけれど、なんの偶然か、同じ日に、ナイジェリア保健当局の責任者が首都ラゴスにいるエボラ患者8人に対して「ナノシルバー」による治療が試みられると発言したと伝えられている。

ナノシルバーとは、その名のとおり"ナノサイズの銀"のことで、ナノテクノロジーによって極微粒子化された「銀コロイド」のこと。

昔から銀は、天然の抗菌・殺菌剤として知られているけれど、銀を極微粒子にすることで、全体の表面積を極大化させ、その結果最大の抗菌作用を期待する。

コロイド状の銀は、部分的にプラス電荷を持ち、細胞に接触すると、電子が銀に引かれて電子分布の不均衡が発生し、その結果、細胞壁が破壊される。

抗菌剤として用いられる1~50nmサイズのナノシルバー粒子は、細胞壁を貫通する。大腸菌を用いた研究では、細胞壁を損傷して穿孔し、細胞壁内に蓄積し、細胞の浸透性を増加させ、終局的には細胞死滅を誘発させると報告されている。

ナノシルバーは、バクテリアのDNAの複製能力を破壊損傷する作用があることも知られているのだけれど、生憎銀イオンは、「善玉」と「悪玉」のバクテリアの区別が出来ず、手当り次第細胞を破壊していく。

だから、ナノシルバーをエボラ治療薬として使うのは、確かにエボラウイルスをやっつけるかもしれないけれど、同時に健康な細胞をも殺してしまう、いわば劇薬ではないかと思う。

こんなのまで薬として使わなければならないということは、それだけエボラ治療薬となりうる薬の絶対数が足りないということ。

エボラ拡大と治療薬の開発のスピード勝負。もしかしたら、国境なき医師団(MSF)のいう6ヶ月の収束でも、奇跡的なことになのかもしれない。

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