尊共攘夷に走り出した中国
今日はこの話題です。
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1.外資叩きを始めた中国
8月12日、中国紙の経済観察報は、中国当局がドイツ自動車大手、フォルクスワーゲンの中国合弁企業に対し、独占禁止法違反で18億元(約300億円)の罰金を科す見通しだと報じた。
これは、フォルクスワーゲンが中国で発売している高級車「アウディ」の部品価格を不当に高くしているとしたもので、それ以外にも、ドイツのメルセデス・ベンツ、BMWやアメリカのクライスラー他、日本のトヨタやホンダ、日産など、日系12社が問題視されている。
中国メディアによると、上海のベンツのオフィスに調査担当者が抜き打ちで現れ、パソコンに保存されたデータなどを差し押さえたのだそうだ。
既に8月8日、トヨタやホンダの中国合弁会社は部品価格を値下げすると発表。日産の中国合弁企業も改善策を検討していると発表している。
この中国当局による締め付けは、車だけではなく、マイクロソフトやアップルの中国法人、ニコンなど外資系企業全般に及んでいる。
これに対して、8月13日、北京の欧州連合(EU)商工会議所は、「十分な聞き取りもなく、脅すような手段で、企業に処罰を受けることや改善策の実施を強いた例がある」と批判。外資系企業が狙われていると疑念が高まっているとして、予断を持って調査をせず、企業が抗弁する権利も保障するよう求めた。
これまでの、中国のやり口を知っている日本から見れば、何を今更と言いたいところだけれど、日本のみならず、欧米にまで手を掛けるとは…。
2.八つの闘争
これについて評論家の石平氏は、7月23日に人民日報に掲載された共産党中央党校の韓慶祥副学長の論文(覇権国家対中国進行意識形態浸透)を取り上げ、中国共産党政権が直面する「8つの新しい闘争」に勝ち抜くため「国内外の敵」と徹底的に戦うことを党員幹部に呼びかけたことが原因だと指摘している。
石平氏によると、韓氏は「8つの闘争」の1つとして、韓氏は「市場争奪戦」を挙げ、「わが国の巨大市場をめぐる西側諸国との争奪戦は一日もやんだことがない」と指摘し、それに対する闘争を宣言しており、その直後から、アメリカ系中国現地企業である上海福喜食品の「期限切れ鶏肉問題」を始めとして、中国当局による「外資企業叩き」が始まったと述べている。
だけど、この「市場争奪戦」は、くだんの論文の「8つの闘争」の1つに過ぎない。韓氏は残り7つとして「資源争奪戦」、「貨幣の戦争」、「イデオロギー闘争」、「領土紛争」、「腐敗反対闘争」、「ネットワーク闘争」、「反民族の分裂主義の闘争」と挙げている。
その中でも特に感じるのは、中国が西洋的価値観が自身に浸透することを酷く警戒していること(イデオロギー闘争)。論文では「西方敵対勢力(西洋諸国)は、"自由・民主・人権"を突破口にして、中国人学者や指導幹部、企業家を誘惑し西洋文化および思想の捕虜にしようとしている」と述べている。筆者には、中国は、文化に身を隠した西洋思想の自国への"浸透"をとても嫌がっているように見えるし、極端なことをいえば、"尊共攘夷"をしたいのかとさえ。
だけど、市場経済は、自由・民主・人権・契約・信用といった価値観を下敷きにしてている。契約は守らない、信用も出来ない、人権は無視する、では市場経済は成り立たない。
単純に、独占禁止法が云々だけならともかく、その大元に"自由主義・民主主義に対する闘争"があるのだとしたら、いずれ中国へ進出した外資は完全に締め出されてしまうだろう。
3.中国は世界の工場の座を明け渡した
石平氏は、「いずれにせよ、中国に進出している外資企業にとって、今後はまさに受難の時代の到来であるに違いない。…日本企業はこれから、『撤退』を本気で考えるべきではないか。」と述べているけれど、既に、日本のみならず主要国の対中投資は軒並み減少している。
2014年1~6月の日本からの対中直接投資は、前年同期比48.8%減の24億ドル(約2440億円)とほぼ半減し、アメリカからの投資も4.6%減、EUからが11.2%減、更に、ASEANからの投資も19.2%減、潮を退くように主要国からの投資が縮小している。
対中投資を増やしているのは、45.6%増の韓国と76.4%増のイギリスくらい。全世界の対中投資も2.2%増と低い伸びに留まったのだけれど、それでもプラスなのは、この韓国とイギリスのお蔭。
中国のバブルが言われ出してから久しいけれど、上海の一等地は、東京やロンドン、ニューヨークの値段を超え、世界211都市の生活コスト調査でも、香港が東京を上回り世界3位、上海も東京と変わらない10位にランキングされている。
生産コストについても、中国の実質的な生産コストは、すでにアメリカに肉薄している。
アメリカのボストン・コンサルティングが、世界の製造業の輸出額の90%を占める、25の輸出大国・地域の生産コストを調べ「世界製造業コスト競争力指数」を作成したところ、生産コストが低い国は、インドネシア、インド、メキシコ、タイ、中国大陸、中国台湾、アメリカとなった。
ボストン・コンサルティングは、中国とアメリカの生産コストが肉薄している主因は、中国の人件費の高騰だとのことで、多くの企業と生産ラインにとって、製品の質、知的財産権、長すぎるサプライチェーンといった要因を加味すると、中国で節約できる生産コストは微々たるものだと指摘している。
これでは、多くの企業が中国から撤退し、インドネシアなどのASEANに移転するのも当然。
本当は、他国から投資してくれている間に、品質を上げ、知的財産権を守るなど、更に投資を呼び込めるような施策をうって、国内環境を整備すべきだったのだけれど、中国は、どうやらその機会を逸してしまったどころか、その真逆ともいえる「8つの闘争」なる宣言をした。
中国が"尊共攘夷"をするのは勝手だけれど、それに伴う反作用は自ら体感していただくに留め、間違っても隣国の脅威となる行動を起こさせないように、周辺国は連携して準備を進めておくべきだろうと思う。
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