御嶽山噴火

 
今日はこの話題です。

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9月27日正午前、長野と岐阜の県境にある御嶽山が噴火した。被害状況については、既に各種報道機関が報道しているから、詳しくは触れないけれど、警察によると、28日正午の段階では、山頂や御嶽神社付近にいた7人が火山灰に埋もれ、このうち1人は救助されたものの意識がなく、残る6人も火山灰に埋もれたまま意識不明。

それ以外にも、別の場所で4人が倒れているという情報があり、長野県側で35人、岐阜県側で7人の合わせて42人が重軽傷を負っていると伝えられている。

噴火は28日になっても収まる様子がなく、28日11時45分現在、噴煙は火口からおよそ300メートルの高さまで上り、南へ流されているほか、火山性の微動も続いているという。

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気象庁は「火口周辺警報」を発表。「今後も火口から4キロ程度の範囲では大きな噴石が落下するおそれがあり警戒が必要だ。風によって小さな噴石がさらに遠くまで飛ばされることもあるので、周辺の地域では念のため注意してほしい」と、「入山規制」を行うなど引き続き警戒するよう呼びかけている。

火山の噴火は、地下深くの高圧下でマグマに溶け込んでいた揮発成分が、マグマの上昇に伴い低圧下で解離し、急激に体積膨張することによって引き起こされるのだけれど、マグマ以外でも、高温のマグマが地下水や浅海の海水などに接触して発生する「マグマ水蒸気爆発」がある。

水は、常温・常圧下で1立方センチの体積しかないけれど、これが100℃になると約4500立方センチもの体積へと急激に膨張する。

従って、上昇してきたマグマが地下水に触すると、水は瞬時に水蒸気となり体積膨張し爆発する。一方マグマは急冷・破砕され、ガラス質の破片が爆裂火口の周囲に堆積する。

今回の御嶽山の噴火は、その様子を見る限り、どうやら、後者の「マグマ水蒸気爆発」のようだ。

テレビ等では、御嶽山が前回噴火したのは2007年のことだと報道しているけれど、この時の噴火は極小規模なもので、噴火した時期も後の調査で3月末頃ではないかいう程度ではっきりしたことは分かっていない。

だけど、ずっと昔にまで遡ると、やはり噴火があったことが分かっている。

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御嶽山は標高3067メートルと火山としては高い山。だけど、周辺の土地の標高も1400~1900mと高いため、火山体としてみれば、御嶽山の規模はそれほど大きくはない。

御嶽山の噴火活動は、大きく古期と新期とに分けられる。古期は75万年前から42万年前でマグマによる活動があり、この頃の御嶽火山は4つの火山の集合体だった。それぞれの火山は、少しずつ火口を移動しながら活動していた。これらは、古い順に東部火山群(75-65万年前)、土浦沢火山(68-57万年前)、上俵山火山(54-52万年前)、三笠山火山(44-42万年前)と命名されている。

この古期の活動によって御嶽山は、裾野まで広がる火山体を形成し、その後の休止期に大きく浸食が進んだと考えられている。

そして、新期の活動は10万年前から2万年前迄の期間で、この間に、古期御嶽山の中央にできたカルデラを埋め立てて、継母岳火山群と摩利支天火山群という二つの火山群が成長した。現在の山頂部は、新期御嶽の後半に活動した,南北に並んだいくつもの火口があり、南から一ノ池、二ノ池、三ノ池、四ノ池火口などと命名されている。最高峰の剣ヶ峰は一ノ池火口縁に位置している。

御嶽山の活発な火山活動は、2万年前にほぼ終了し、最近の活動は主に水蒸気爆発とされていたのだけれど、最近の研究では、1万年前以降にも4回のマグマ噴火があったことがわかっている。

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御嶽山の最近の活動で、今回の噴火を除いて、最も顕著だったのは、1979年10月28日の噴火。当時の御嶽山は「休火山」とされていた。

この時の噴火は、「マグマ水蒸気爆発」で、早朝から始まり、山頂西側の地獄谷から激しく火山灰を吹き上げた。地獄谷上端部には北西から南東方向に500mにわたる火口列を形成し、北西の端から最も活発に噴煙を上げた。28日の14時頃には噴火は極大を迎え、翌日29日の朝にはほとんど収まった。

それでも、噴出した火山灰は北東に流され、麓の旧開田村で5㎜程度積もったほか、100㎞離れた軽井沢や、150㎞離れた群馬県の前橋市でも降灰が観測された。

現在、御嶽山の周辺には,気象庁、名古屋大学、長野県、岐阜県などにより15箇所の地震計が設置され、地殻変動を計測するGPSは気象庁や国土地理院などにより6箇所で観測されているけれど、前回、2007年3月後半の小規模噴火と更にその前の1991年5月中旬の小規模噴火に際しては、事前に火山性地震や微動が観測されていた。

では、今回の噴火に際しても、事前に火山性地震や微動があったのかというと、やはり観測されていた。次の図は、気象庁が発表している。今年8月からの御嶽山での火山性地震の時間別回数のグラフなのだけれど、9月に入ってから急に火山性地震が増えていることが分かる。

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今回の噴火に際しては、マグマ活動との関連が指摘される火山性微動が噴火の10分前に観測されたのだけれど、GPSや傾斜計のデータに異常はなく、また、マグマ上昇を示す山体膨張も観測されなかったようだ。

気象庁火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は「今回の噴火は予知の限界」とし「観測点がもっとあれば分かったかもしれないが、噴火予知は多くの場合、難しいのが現状だ」とコメントしている。

それでも、気象庁は、今回の御嶽山についても、レベル1とはいえ事前に噴火警戒を出していた。

まぁ、9月からの急に増えた火山性地震を持って、直ぐに噴火すると行動するのは、難しかったのかもしれないけれど、我々も、火山列島日本に住んでいる限り、噴火災害はいつ起こってもおかしくないと自覚してアンテナを張り、事前情報に敏感になっておくことも大切だと思う。

ともあれ、速やかな救助活動と被災された方々の無事を祈りたい。




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