引き籠る中国を席巻する日本のソフトパワー
今日はこの話題を極々簡単に…
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9月26日、中国の成都日報が「ドラえもんの目くらましに警戒せよ」という記事を掲載し、中国ネットユーザーの注目が集まっているそうだ。
その記事は、ドラえもんが2008年に日本外務省のアニメ文化大使に任命されたことや、2013年に東京五輪招致の特別大使となったことなどを紹介し、「現代では、文化的なソフトパワーが国際競争の中で重要な戦略になっている。…ドラえもんは日本が国家の価値観を輸出し、文化戦略を実現するための要素であることは疑いようのない事実。…近年、ドラえもんは中国の各都市に現れ、日本のいわゆる核心的な価値である"尊重と友情"を示しているが、この文化普及活動の背後には極めて強い政治的意図があることを私たちははっきりと理解しなければならない」としている。
これに対して、中国のネットユーザーからは、「これ書いたやつ、被害妄想症だろう」、「なんでも政治化するのか?じゃあ、日本文化を全部締め出せば?」 、「ドラえもんを見た時の反応が『温かくて、おもしろい』ではなく、
『何か陰謀がある』なんてやつは、いったいどれほど心が汚いんだろうね」 と散々。
意図があろうがなかろうが、自分達にとって異質の文化や情報が入ってくれば、大なり小なりその影響を受けるもの。
日本のアニメの影響はドラえもんだけじゃない。
今年の7月31日から8月2日にかけて上海市で中国最大のゲーム見本市「チャイナジョイ」が開催されたのだけれど、それに合わせて、地下鉄車両の一部にアニメ絵をラッピングした"痛鉄"が登場した。
これは、日本のアニメ「ラブライブ!」のスマホ用ゲームを宣伝するためにラッピングされた特別車とのことで、この"痛鉄"に、土下座する中国の熱狂的なアニメファンも現れたと話題になったことがある。もう"痛鉄"を作ろうなんて発想自体が、相当日本の影響を受けているとしか思えないのだけれど、まぁ、パクリ大国のかの国のことだから、一般の中国人にとっては、もしかしたら、影響を受けているという認識すらないかもしれない。
とりわけ中国は、習近平指導部になって、そんなほんの少しの影響ですら警戒し排斥する傾向がある。外国番組の放送は制限され、大学では"自由"を教えるなと命令する。
更に、最近では、中国共産党の人事部門である中央組織部と教育省が連名で、党高級幹部や管理職の公務員に対し、MBA(経営学修士)、EMBA(企業幹部向けのMBA)などの高学歴取得を実質禁止する通達を出している。これは、習近平指導部による反腐敗と幹部管理強化の一環とみられ、庶民の間で賛成する声があるようなのだけれど、その裏では、北京の各大学院の社会人コースで退学ラッシュが起きているという。
中国の有名大学のMBAやEMBAコースに通う学生のうち、15~20%は党や政府機関の高級公務員、大手国有企業の幹部で占められているのだけれど、修士号または博士号を持っていれば、将来的に昇進する可能性が高いことがその理由の一つとして挙げられている。また、それ以外にも、政府高官と知り合い、人脈作りをしたいという目的でEMBAコースなどに通う民間の中小企業の経営者もいるようだ。
だけど、この通達で党幹部たちが一斉に退学したことで、学校に行く意味がなくなったと思った企業経営者も退学するのではないかとも見られている。また、多くの中国の有名大学は、社会人を対象とした大学院教育を重要な資金源にしている関係から、学生の大量退学で、大学院教育への影響も取り沙汰されているという。
なんだか、中国がどんどん"知的引きこもり"になっていく方向に進んでいるように思えてならない。
尤も、中国内部でもこの通達に対する懸念の声が一部から出ているようで、ある大学教授は「腐敗問題につながる部分もあるが、あくまでも一部に過ぎない。全体的にみれば、政府高官が教育を受けることは良い事だ。…大学院は幹部にとって、社会や経済の実態を知る数少ない場所であり、それがなくなれば、中国全体の発展にマイナス効果をもたらす」と述べている。
また、ソフトパワーは中国に必要だとする意見もある。
今年8月、香港メディアの鳳凰網は、台湾中央研究院の林泉忠副研究員の手記として、中国が日本に「勝つ」ためには何が必要かを論じる記事を掲載した。
それによると、中国が近年、経済的に大きな飛躍を遂げ、日本と中国の国力は逆転したとし、今後、東アジアの中心
は日本から中国になると考えられていることから、日本が中国を警戒するのも当然だと論じている。
そして更に、飛躍する中国にとってもっとも欠如している点こそ「ソフトパワー」であるとしている。
日本国民の「窃盗の少なさ」、「ゴミを持ち帰る」といった数々のエピソードから、日本国民の民度の高さや自己管理能力の高さは見て取れ、「ソフトパワー」こそ日本がもっとも優れている点だとした上で、「中国が日本に勝ちたいと思うならば、経済や軍事力だけでなく、世界の人びとから信頼される国の制度を確立し、国民の民度を向上させることも必要だ」と論じている。
日本の「ソフトパワー」を警戒しろと言いながら、日本に勝つためには「ソフトパワー」も必要だとは、一体、何をしたいのかよくわからない。
もしかしたら、中国独自の優れた「ソフトパワー」を生み出したいと思っているのかもしれないけれど、他国の優れたものから学ぶことを拒絶して、それが出来るかといえば、やはり難しい。
それに、いくら日本のソフトパワーを拒絶しようとしたところで、パクリと海賊版が簡単にそれを打ち消してしまうだろう。
去年、「日本というファウンデーション」のエントリーで、漫画やアニメの中に埋め込まれた、日本の文化や思想によって、中国を日本化させる余地があると述べたけれど、"痛鉄"に土下座するアニオタまで出るところをみると、日本という"銀河霊"は深く静かに中国民衆に浸透しているのではないかと感じている。
中国共産党は、世界の潮流から背を向けているという意味で、自分で自分に「目くらまし」しているのかもしれない。
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