シリア空爆でイスラム国は壊滅するか

 
今日はこの話題を極々簡単に…

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9月22日、アメリカ軍は、シリア領内の「イスラム国」の拠点などを空爆したと発表した。

アメリカ軍は、イスラム国に対して、今年8月からイラク領内で空爆を始めていたけれど、今回のシリアでの空爆は初めてとなる。

その理由は、イスラム国以外の2つのテロ組織があったと見られている。その組織とは「コラサン」と「ナスラ前線」。

コラサンとはシリア国内に本拠地を持つアルカイダ系のテロ組織で、最近その存在を明らかにされた。ニューヨークタイムズ紙によると、アメリカ政府はシリア空爆後、コラサンがヨーロッパおよびアメリカに攻撃が行なわれる直接的な危険があると説明している。

コラサンには、元アルカイダの者達がいて、コラサンのリーダーであるムシン・アル・ファドリは、ビンラーデンの側近。彼は、あの9.11の攻撃を事前に知らされていたメンバーのうちの一人であり、世界の大都市を標的にした破壊活動を計画していたとされる。

そして、ナスラ戦線もアルカイダに繋がるテロ組織。ビンラーデンの代理も務めたアルカイダのリーダー、アイマン・アル・ザワヒリに忠誠を誓っているとされる。

ナスラ戦線の影響力は、シリア北西部のアレッポで一番強く、そこで彼らは元子供病院に陣を張り、他のグループと共に、隣の眼科病院内にシャリア(イスラム法)委員会を設立し付近一帯を統治。

ナスラ戦線はシリア最大の油田があるシリア東部のデリゾールと、これまた多くの油田がある北東部のハサカで、シリア政府の油田を掌握し、そのいくつかを部族の民兵に運営を任せ、その他は自分達で運営している。ナスラ戦線は、油田労働者を呼び戻して、彼らが生産する原油から利益を得るのみならず、発電所を支配し町のパン屋の経営を続けさせる為に小麦粉を配給していた。

だけど、これら油田を巡って、ナスラ戦線とイスラム国家が抗争を続けていて、今年7月にデリゾールからナスラ戦線が撤退。現在、デリゾールの油田は、イスラム国が支配している。

彼らテロ組織とて、何だかんだいっても、金がなくてはどうにもならない。石油を巡って、テロ組織同士が争うという現実がある。

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現在、シリアやイラクで勢力を伸ばしていると言われるイスラム国だけれど、その支配地域にはある特徴がある。それは、インフラを抑えた支配だということ。

イスラム国は、バグダディ氏をトップに2人の元将校で最高指導部を構成。その下に10人前後からなる評議会を設置した集団指導体制を敷いている。評議会メンバーは戦闘や戦闘員の勧誘、広報など部門別の責任者を兼ね「内閣」のような役割を持ち、全てイラク人で構成されている。元将校のほか政治・行政の経験を持つフセイン政権与党バース党の元党員もいるようで、支配地域を区分けして十数人の「知事」を置いている。

研究者によると、バグダディ氏は2003年のイラク戦争前後までモスクの説教師だったとされ、政治や軍事の経験はなかった。その経験不足を、このフセイン政権時代の政府軍の元将校らが補っているらしい。

イスラム国は一連の侵攻で、油田や交通の要衝、ダムなど重要インフラを集中的に狙う特徴があるそうなのだけれど、それはこの元将校ら政治経験を持つ人物がインフラの重要性を熟知しているためとされる。

次の図は、イスラム国の支配地域を示したものなのだけれど、灰色の支配地域に着目すると、ものの見事にイラクとシリアの幹線道路を支配していることが分かる。

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今回のアメリカ軍の空爆は、こうしたインフラ施設をターゲットに行われ、シリア時間23日午前3時半から行われた空爆は、3波に及んだ。

第一波は、紅海上のアメリカ軍の艦船からのトマホーク・ミサイル攻撃で、計47発を発射。アレッポなどに着弾した。第二波攻撃は、F-22ラプターによる空爆で、アラカのコラサン本部をピンポイントで狙い、戦闘員の訓練施設や司令部施設など、計8回の空爆を行った。そして、第三波攻撃では、シリア北部ラッカのイスラム国の司令部や武器・弾薬庫、戦闘員の訓練施設、金融センターなどを空爆し、破壊している。

また、24日には、シリア東部の石油精製施設への空爆を実施。複数の石油精製施設と車両1台を対象に計13回の空爆を実施したようだ。

このように、シリア空爆は、イスラム国に対するインフラ潰しとアルカイダに繋がるテロ組織の壊滅という2つの目的で行われている。

9月23日、アメリカ国防総省のカービー報道官は、シリアでの空爆について「大きな成功を収めた」と述べる一方、「まだ始まりに過ぎない」とも強調しているから、今回の攻撃が相当長引くことも覚悟していると思われる。

アメリカの空爆に対して、イスラム国側は、シリアの政府軍から奪った対空砲を近くの山などに設置して反撃する構えを見せているようだ。

更に、地上では、イスラム国と対立する反政府勢力の自由シリア軍などが、アメリカ軍などと連絡を取りながらイスラム国の拠点などを奪うための地上攻撃の準備を進めていると言われている。

様々な思惑が錯綜するシリア。今回の攻撃がどんな結果を導くのかは、もう少し様子をみる必要があるだろう。




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