アウェーの洗礼とクライオセラピー

 
昨日のつづきです。

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1.アウェーの洗礼

昨日のエントリーでは、トップアスリートのメンタルの重要性について取り上げたけれど、スポーツでメンタルが大切になるというのは、トップ選手だけじゃない。

サッカーなんかだとよく、本拠地ではないグラウンド(アウェー)において、待遇差別や嫌がらせなどを被る、いわゆる「アウェーの洗礼」というのがある。

今月19日から来月4日まで、韓国の仁川でアジア競技大会2014が行われる。これは、IOC国際オリンピック委員会公認のアジア地域の総合スポーツ大会で、オリンピックを超える36競技439種目が実施される。

サッカーについては、日程の関係から開催に先立って開始され、9月14日、U21男子日本代表の対クウェート戦が行われた。

この対戦の審判(レフリー)、韓国人2人(主審1名、副審1名)、インド人2人(副審1名、四審1名)で、筆者は条件反射的に、また日本に不利な笛が吹かれるのではないかと思ってしまったのだけれど、試合を見る限りでは、レフェリングは、まずまず公平で特に問題はなかった印象

U21日本代表は見事4-1でクウェートを破ったのだけれど、「アウェーの洗礼」はどうやらピッチの外にあったようだ。

U21日本代表は9月12日に韓国入りして、クウェート戦に向けた調整を行ったのだけれど、グラウンドのロッカールームは使用できず、着替えはピッチ脇のテントの下。更に、練習後にはシャワーも利用できず、選手達は「シャワーも浴びずに帰るのは高校生以来だな」と苦笑い。手倉森誠監督は「選手村に入って色々落ち着かない部分もあるが、色々整っていないのが常識だと考えればいい。割り切ってやっていこうと話した。うまく時間を使いながら、集中してやる。明日を迎えるのが楽しみ」と述べている。

というのも選手村の設備が相当貧弱らしい。部屋にエアコンがないのを始めとして、部屋によっては、風呂場の排水溝が壊れていたりするそうだ。更には、エレベーターも壊れていて移動は階段を上り下り。

選手村は、大会後に分譲マンションとして売り出す予定だそうなのだけれど、お得意の"ケンチャナヨ"手抜き施工なのか何か知らないけれど、新築でこれでは、先が思いやられる。尤も、こちらのサイトでは、韓国のインフラは、元々その程度のもので驚くに値しない。寧ろその程度で済んでよかったくらいだと指摘している。

また、大会そのものにも金が掛かっていない。今回の仁川大会の費用は20億ドル(約2130億円)、で、2010年に広州で開催された前回大会の約10分の1という低予算。兆の単位のオリンピックとも1桁違う。

大会組織委員長の金栄秀氏は「これまでよりも経済的で効率的なアジア競技大会になるだろう。仁川でのアジア競技大会が、今後の開催国のロールモデルになればいいと思う。…質素な準備ができたことを誇りに思う」と話している。

だからまぁ、最初からそういうものだと割り切って臨むべきなのだろう。

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2.マルチサポートハウス

それでも、日本選手団は本国からのサポートがしっかりしている分、恵まれている。9月12日、仁川に、日本スポーツ振興センターが運営する日本選手団の支援施設「マルチサポートハウス」が開設された。

これは、文部科学省がメダル獲得のために選手を支援する「マルチサポート事業」の一環として、選手村の外に設置された施設。通常、オリンピックやアジア大会などの総合競技大会の場合、選手村には「アクレディテーションカード(ADカード)」と呼ばれる資格証を持つスタッフしか入れず、使えるスペースに制限もある。

だけど、選手村の外にサポート拠点を置けば、トレーナーや栄養士・医師などのスタッフを集結させ、充実した施設による支援ができるということで、日本は2010年の広州アジア大会からマルチサポートハウスのトライアルをスタート。ロンドン五輪、ソチ五輪を得て、今回で4度目となる。

今回は、地下1階から地上3階まであるホテルの別館を借り上げ、スタッフ約40人が常駐。ボートやカヌー専用の機器など、各競技に対応したトレーニング設備を設け、食事も、きんぴらゴボウや豚汁などの日本食を用意し、メニューは階級制競技の選手のために摂取エネルギーを3段階に分けた。また、休憩コーナーには日本の全チャンネルが見られるテレビも置くなどの充実振り。

「マルチサポートハウス」の統括責任者である、日本スポーツ振興センターの高谷吉也理事によると、ジムはロンドン五輪時より充実させたとのことで、これまでオリンピックなどで提供されていた炭酸泉プールなどに加え、疲労回復に効果があるとされる冷却療法「クライオセラピー」の超低温カプセルが初めて設置されている。

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3.クライオセラピー

クライオセラピーとは 「冷やす(cryo)」と「療法(therapy)」をあわせた言葉で、その名のとおり、「冷やす療法」の意味。

もともとリウマチの治療を目的として日本で開発されたもので、身体の熱を取り除くことで患部の温度を下げ、炎症を抑える効果があるとされる。

これまでの治療は、多くの場合「温める」ことに主眼が置かれていたのだけれど、温熱療法は、一時的に感覚神経を鈍らせて、表面的に痛みを感じにくくさせるだけで、細胞の元であるタンパク質が熱によって徐々に破壊されていくと言われている。それだけではなく、慢性的に温めることで、タンパク質はもちろん、硬い骨も徐々に破壊されるとされている。

逆に「冷やす」ことの方が、痛みや筋肉にとって効果があるのだという。

通常、痛みの感覚は発痛物質が産生されることで生じるけれど、「冷やす」と血中酸素濃度が上がって、発痛物質の産生を抑えられ、「冷やす」ことによって感覚が鈍り、痛みの感覚も消えていく。

また、「冷やす」ことは、毛細血管の透過性を減少させ、血液の液体成分が外に漏れ出すことを防ぎ、浮腫が解消される。更に、感覚がなくなるまで冷やされると、人体は患部を温めようとして、血液の循環を良くするリバウンド反応を起こす。これによって、患部に溜まっていた発痛物質や老廃物を洗い流し、筋肉を弛緩させる。

但し、「冷やす」箇所は痛みの強い局所に限定して、広範囲な部分を冷やさないようにすることがポイントなのだそうだ。

今回導入された「超低温カプセル」は、液体窒素を気化させた、-170~-130℃のガスを当て、披回復を促すもので、陸上のウサイン・ボルト選手や、ハンマー投げの室伏広治選手も利用している。

室伏選手のコーチを務めるトーレ・グスタフソン氏はその効果について、「皮膚が冷たさを察知すると、死なないように血液が内臓の中心部に集まっていきます。脳がパニックになったときの反応ですね。3分後、外に出たときには、血液は皮膚や筋肉などすべての血管に一気に戻っていきます。血液が流れることで老廃物が消失し、乳酸も分解され、細胞もよみがえります。ねえ、ちょっとクレージーでしょう?」と述べている。

また、室伏選手も「いやあ、終わってから気持ちいいですね。一気に血流が良くなるので、すごく軽くなる感じがします」と使用した感想を述べている。

スポーツ医学もどんどん進歩している。「マルチサポートハウス」は、選手村から20分おきに出るシャトルバスで、15分ほどで来れるそうだから、各競技の選手達エアコンのない部屋で、ストレスを溜めるよりは、ちょくちょくこちらに顔を出せばよいと思う。




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