トップアスリートのメンタルの重み
今日も雑談エントリーです。
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1.錦織圭選手の快挙
今月に入ってから、またぞろスポーツ人気が盛り上がってきたように思います。もちろん日本人選手達の活躍が話題となったからなのですけれども、何といっても、その筆頭は、テニスに錦織圭選手でしょう。
今月開かれた全米オープンで世界ランキング1位のジョコビッチ選手をはじめ上位の選手を次々と破り、グランドスラム(四大大会)のシングルスで日本選手として初めて決勝に進んで準優勝の快挙を達成しました。
グランドスラムとは、国際テニス連盟が定めた「全豪オープン」「全仏オープン」「ウィンブルドン選手権」「全米オープン」の4大会の総称で、テニストーナメントとしては最大規模・最高権威を持つとされています。
日本人選手がグランドスラムの大会で決勝進出したのは史上初。準決勝進出でも1918年の全米選手権でベスト4入りした熊谷一弥氏以来の96年ぶりのことでした。
錦織選手の活躍が話題となるや、決勝戦をみようと、独占中継していたWOWOWには加入申し込みが殺到し、実に8万人が駆け込み加入したという噂です。
また、錦織選手が大会で使用しているポロシャツやラケットなどの「錦織モデル」の人気も急上昇。なんでも、錦織選手のポロシャツは、「ユニクロ」製だそうで、「ユニクロ」によると、レプリカ商品を8月25日から東京の銀座店やオンラインストアで発売したところ、9月7日までにほぼ完売。錦織選手が使うアメリカ・ウイルソン社製の同じラケットにも人気が殺到し売り切れ状態とのこと。一説には経済効果は3000億円超との試算もあるようです。凄いものですね。
決勝戦は残念ながらクロアチアのマリン・チリッチ選手にストレートで敗れてしまいましたけれども、過去の対戦成績で5勝2敗とリードし、世界ランクも錦織選手が8位に対してチリッチ選手が12位ということから、多くのマスコミは「錦織選手有利」と予想していました。
ただ、現地で取材をしたテニスジャーナリストの塚越亘氏によると、試合当日の直前練習でチリッチ選手が吹っ切れた様子だったのに対して、錦織選手は終始表情が硬く緊張気味で、勝たなければというプレッシャーでガチガチになっていたように見えた、と述べています。
確かに、オリンピックでもそうですけれども、国民の期待を一身に集め、また下馬評で有利とされると緊張して実力が発揮できないなんてのは良くあることです。ましてや、96年振りのベスト4進出、史上初の決勝ともなれば、硬くなるなというほうが酷なのかもしれません。
けれども、勝利の栄冠は、そうした重圧を乗り越えた者だけが掴みとれるものなのかもしれません。
2.ドルトムントのレジェンド
重圧を乗り越えたという意味では、サッカー日本代表でもある香川真司選手もそうかもしれません。つい先日にマンチェスターユナイテッドから、古巣であるドイツのドルトムントに復帰しましたけれども、香川選手は、ドルトムントが2011年、2012年とブンデスリーガ2連覇を成し遂げたときの中心選手であり、地元ではレジェンド扱いされています。
その彼がドルトムントに帰ってくることが決まった途端、ドルトムントサポーターは、シンジが帰ってきた、と大騒ぎ。丁度チームに負傷者が続出したことで、香川選手に対する期待はうなぎ登りに高まりました。
普通、移籍したばかりの選手は、チーム戦術の理解や、チームメートとの連携に十分な時間が必要で、直ぐに試合に出場することは稀です。それが、サポーターからは、移籍初戦でスタメン出場どころかゴールまでも期待されていたのです。日本のファンからは、ハードルを上げ過ぎだろう、との声まで上がっていた程です。
果たして、香川選手は9月13日の復帰初戦、フライブルク戦にトップ下で先発出場。上がりに上がったハードルに対して、1起点1ゴールと期待以上の答えを出してみせました。本人は試合中何度も鳥肌が立ったとコメントしていますけれども、素人目にも香川選手はピッチで躍動して見えました。1点目の起点となったパスなどは、マンチェスターユナイテッド時代には、ついぞ見たことがないものでした。
ドルトムントのクロップ監督も、「初戦にしては良かった。いや、素晴らしかったね。この数日間、彼はものすごく騒がれていた。でも、彼はそんなことを感じさせず、良い試合を見せている。1点目の起点となるパスは素晴らしかったし、2点目ではポジショニングが的確だった。…得点を嗅ぎつける鼻は以前と変わらず持っている。この2週間で、彼が以前のようにボールを蹴ることができるのは確認できた。我々はこれから、彼が自分のクオリティーを信じられるような環境をつくっていく」と高く評価しています。
これも、場馴れというかトップリーグでの試合、大舞台の経験というものは、周りが思っている以上に、ここ一番で力を発揮できるかどうかに影響するようにも思えます。
3.マイケル・チャンの教え
勿論、テニスの錦織選手も何度も大舞台を経験している筈です。けれども、グランドスラムの決勝というのは、更に一段高い大舞台だったのかもしれません。
錦織選手は、試合後、「意外とおろそかにしていた部分だった。重要な場面で自分から積極的に打ち、絶対にミスしない自信がついたので、本当に大事な練習だった。…嫌になるぐらいトレーニングして、全身をバランスよく鍛えた。決勝まで7回試合をしたが、準決勝や決勝でもしっかり戦えたので、体力的にすごく自信になった」と、今大会の躍進の背景に、去年からコーチとなったマイケル・チャンの指導で、基本練習と体力づくりに取り組んだことを述べています。
マイケル・チャンは、それ以外にも錦織選手のメンタル改革をしています。
錦織選手とマイケル・チャンとの出会いは、2011年に有明で行ったチャリティーマッチに遡ります。その時に2人は対談を行っているのですけれども、その時、マイケル・チャンは、錦織選手が当時世界一だったフェデラーについて「フェデラーと決勝で対戦するのはワクワクする。彼は偉大な選手で、昔から憧れだった」との発言を取り上げ、「君はフェデラーと決勝で戦うことである程度満足していた。あのコメントは大きな過ちだった。…過去の実績なんて試合には関係ないんだという強い気持ちが必要だ」と述べています。
今回の全米オープンの決勝の相手チリッチ選手との過去の対戦では錦織選手が勝ち越していましたし、錦織選手も絶対優勝するんだ、という気持ちは持っていたと思います。けれども、「過去の実績なんて試合には関係ないんだ」という部分、過去を捨てきれなかった部分がもしかしたら錦織選手の心のどこかに残っていたのかもしれません。
それでも、錦織選手は日本のテニス界に一つの足跡を残したことは間違いありません。ニューヨークヤンキースのイチロー選手は、錦織選手の快挙について「(日本のスポーツ界が)明らかに前に進んでいる証でしょう。それを刻んでいるよね。錦織選手が結果を出していないと、96年前の人の存在があまりにも遠すぎて……。そりゃ、気持ちいいよね」と述べています。
確かな実績を残した上で、それを忘れ、次を見据える。世界のトップで戦う人には必要なことなのかもしれません。
錦織選手は今回の全米オープンについて、「今回の経験は絶対に生きてくる。これからも練習に励み、強い気持ちを持って四大大会のタイトルに挑んでいきたい」と述べています。これからの活躍を期待しています。
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