今日はこの話題をごく簡単に…
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9月3日、ウクライナ大統領府は、和平確立に向けた措置で関係者は相互理解に達した」と、ポロシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領との間で親ロシア派と「停戦枠組み」に向けた措置で合意したと発表した。対するロシア側は、自身は紛争に関与していないという立場から「物理的に停戦に合意することはできない」と述べている。
だけど、この時、プーチン大統領はウクライナ政府に対して和平合意のための条件を提示している。それは次の7項目。
1) ウクライナ東部に展開する政府軍と親ロシア派武装グループはドネツク州とルハーンシク州での戦闘拡大を停止するここの項目4で、「政府軍と親ロシア派武装グループが5日に、ベラルーシの首都ミンスクで和平会談を開き停戦に合意する」とハッキリ書かれているのだけれど、実際、9月5日に、ウクライナ政府と親ロシア派の反政府武装グループの和平協議が、ロシア政府と欧州安全保障協力機構代表も同席の下、ベラルーシの首都ミンスクで開かれ、停戦を含めた12項目の合意文書に調印している。
2) ウクライナ政府軍は同国南部から撤兵し、上空や人口密集地域への高射砲攻撃を停止する
3) 無条件で双方の捕虜を交換する
4) 政府軍と親ロシア派武装グループが5日にベラルーシの首都ミンスクで和平会談を開き停戦に合意する
5) 国際的な機関による停戦監視
6) 住民への空爆禁止
7) 戦闘で破壊されたインフラの修復
だから、ロシアは口では紛争に関与していないといっているけれど、実際には、親ロシア派武装グループに対して相当な影響力を持っていると思われる。
この12項目の合意文書の詳細は明らかになっていないけれど、「難民救済など人道的援助のための輸送路の確保」や「ドネツク州とルハーンシク州と見られる、ウクライナ東部の2つの州に対し特別な地位を認める地方分権」、「違法な武装勢力の撤退」、そして「武装組織の捕虜となっている東部住民の即時解放」などが盛り込まれているとみられている。
実際、7日には、親ロシア派に拘束されていたウクライナ政府軍兵士15人が解放され、8日には、ポロシェンコ大統領が、ウクライナ東部を訪れ、合意に基づき親ロシア派側がウクライナ軍兵士1200人を解放する予定だと発表。更に10日には、拡大閣僚会議で、親ロシア派を支援するためウクライナ領内に侵入したとされるロシア軍の7割が国境外に撤退したと伝え、東部に「一時的な自治権」を認める法律を制定するとされたことを取り上げ、来週にも関連法案を議会に提出すると述べている。
これらのことが事実であれば、なんだかんだで双方とも合意文書に基づいて行動しており、和平に向けてのプロセスが動き出したといえる。
このような和平に向けての動きの前段階として、8月26日にプーチン大統領とポロシェンコ大統領が、ベラルーシのミンスクで首脳会談があることは間違いないと思われる。この当時、筆者は8月27日のエントリー「プーチン大統領の危惧と仕掛け」で、誰がこの会談をセットしたのか分からないけれど、トップ会談に仲介役を立てるのは、個別会談を行えるほど両者が緊密ではないが、事態は2国間の問題ではなくなっていることを意味すると述べた。
これについて、独立総合研究所の青山繁晴氏は、このときの会談をセットしたのは、安倍総理だったと述べている。安倍総理はプーチン大統領に対して、秋の訪日を受け入れる代わりに、ウクライナのポロシェンコ大統領と和平に向けた会談をするように促したのだそうだ。そして、安倍総理は、プーチン大統領の訪日を受け入れるという親書を森喜朗元総理に託していると述べている。
事実、9月10日、菅官房長官は記者会見で、8日からロシアを訪問中の森喜朗元首相とプーチン大統領の会談について「プーチン氏と親友関係ということで森氏が調整中だと報告を受けている」と述べ、森元総理が安倍総理の親書を持っていることも明かしている。
菅官房長官は、親書の中身を明かしてはいないけれど、モスクワを訪問中の森元総理は日本のテレビ局のインタビューに「尊敬するプーチン大統領について友人のように可哀想だと思う、ウクライナ情勢のために世界中から非難を浴びる結果になった」と答え、更に、モスクワで開催された日露フォーラムで、「ロシア指導部は指導的資質を発揮し、ウクライナ情勢の平和的解決を促すことができる。…欧州には新秩序の確立が必要であり、日露がともにこれを促すために尽力することができる」と述べたようだ。
また、9月3日、岸田外相は、内閣改造後の記者会見で、「政治的な対話を大切にしながら、日本とロシアとの間にある様々な課題についてしっかりと議論を進め、努力を続けていくことが重要なのではないか」と述べ、ロシアとの対話を続けていくとの意向を表している。
これを見ると、やはり安倍総理は、プーチン大統領を受け入れる方向で話を進めているのではないかと思うし、世界に対して、日本がロシアと接近することについての下準備を始めているのではないかと思う。
ロシアも岸田外相の発言には注目したようで、高等経済学院のアンドレイ・フェシュン氏は、岸田外相の発言は非常に重要な事実だとし「岸田外相は親米気運の中、ロシアとの関係を維持し、発展させる必要があると述べている。これは新安部内閣が、これまでに構築されたロシアとの関係を絶ち切ることを望んではいないことを意味している。またプーチン大統領の日本訪問を中止するか、あるいは延期するかについては、日本もロシアもまだ発表していない。これも、最近のウクライナ情勢に対する日本の自制的な対応を証明しているのではないかと思われる。なおロシアは、ウクライナ危機に関する問題で、日本が米国から大きな圧力を受けていることを理解している」とコメントしている。
ウクライナのポロシェンコ大統領は、親ロシア派との停戦合意について「敵に幻想は持っていないが、希望はある」と述べているけれど、プーチン大統領の訪日とその先の展望についても「幻想は持てないにしても、希望はある」のかもしれない。
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