高まる年内解散論と消費増税延期論

 
今日はこの話題です。

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年内解散論の声が徐々に高まってきている。10月29日、自民党の谷垣幹事長は解散論が党内で取り沙汰されていることについて問われ「我々もちょっと厳しい状況で、打開しなければならないということで、それは色々、議論が出てきますよね」と述べた。

谷垣幹事長はこれに先立って、安倍総理と会談していたこともあり、一部新聞では、「谷垣幹事長、年内解散の可能性に言及」などと報じている。その時は、年内解散の話題は出なかったとしているけれど、党内で公然と解散が囁かれるこの状況下で、総理が党幹事長と会談して解散の話が出ないわけがない。

何より、谷垣幹事長が解散について問われて答えたときの表情を見る限り、筆者にはそう見える。

確か、谷垣氏が自民党総裁を務めていた当時、解散を巡って、野田首相と谷垣総裁とで「極秘会談」が行われたけれど、当初、谷垣氏は「断固話しません。会ってない。それだけです」と会談を否定していた。だけどあの時も、それを隠しきれていない表情をしていた。当時のエントリーでも筆者は、そのように述べた。

今回、谷垣幹事長は、厳しい状況を打開しなければいけない、と述べたけれど、ここで、厳しい状況とは何かについて整理したい。

まずは、政治資金の問題。既に2人の閣僚が辞任し、後任やその他議員にも疑惑が取り沙汰されている。民主党は、それをチャンスとばかり、いつもの"抵抗野党"ぶりを発揮して、スキャンダル追及に審議拒否。

筆者は「辞任と増税と解散と」のエントリーで、国民は、政局騒ぎしている余裕なんてないことを認識しており、野党が「なんでも反対」をしても支持されなくなるだけ、と述べたけれど、実際、世論は、スキャンダル追及より国会審議を求めている。

フジテレビ「新報道2001」の世論調査では、閣僚辞任劇があった直後にも関わらず、「国会審議を進めるべきだ」との回答が72.6%にも及んだ。

これについて、政府高官は「国民は審議を望んでいる」とし、世論は野党の国会でのスキャンダル追及にうんざりしているとの見方を示したそうだけれど、それはそうだろう。



そして、もう一方、自民党を厳しい状況に追いやっているのが「消費税再増税」問題。直近の経済指標は芳しくなく、自民党内からも増税延期の声があがってる。

10月22日、自民党の議員連盟「アベノミクスを成功させる会」は初会合を行い、消費税再引上げに関する勉強会を開いたのだけれど、議員42人、代理出席37人の計79人が参加した。

会合には、本田悦朗内閣官房参与が講師として招かれ、消費税率10%への引き上げを1年半先送りして、2017年4月からとすべきと主張した講師の本田悦朗内閣官房参与に対し、出席議員の大半が賛成だったという。

先月、内閣改造をした頃とは随分状況が変わってる。

9月の時点では、谷垣幹事長は、京都新聞の単独インタビューで、年内解散について「総理の専権事項」としながらも「常在戦場だが、長年の経験では解散のサイクルがある。まだそういう時は来ていない」と述べていた。

また、ジャーナリストの歳川隆雄氏は、国際政治経済情報誌「インサイドライン」の10月7日号のコラム「『安倍1強』と消費税再増税」で、「国内外の市場関係者は、アベノミクスを推進しながら財政再建することを折り込んでおり、再増税の先送りはアベノミクスが軌道に乗ってないと市場関係者の信頼を失うこと」、「消費税の10%引き上げは法律に掛かれていることから、見送りは野党に反撃の機会を与える」の2点を理由に、再引き上げするだろう、と述べていた。

そして、解散についても、「消費税再増税は、衆院解散・総選挙時期とも密接にリンクする。増税した直後に選挙で勝利した与党はいない。国民にもっとも不人気な政策だからだ。解散をするなら再増税決断する前か、もしくは増税の影響が薄れるかなり日数を置いた後になる。この論理を借りて一時期年内解散が強く流れたが、どうやらその流れも収まったような永田町の雰囲気である」ともう増税は決まったかのように書いていた。

だけど、10月25日号ではそれが一転、「微妙になった消費税再増税」と題し、小渕優子経済産業相と松島みどり法相の「ダブル辞任」で潮目が変わったことと、自民党内での増税延期派と増税派との対立の表面化を挙げ、一気にトーンダウンしている。

歳川氏の論に従えば、解散は、再増税決断する前か、増税の影響が薄れるかなり日数を置いた後ということだから、再増税決断前の年内解散もあり得ることになる。

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歳川氏は、再増税の先送りのリスクについて、「アベノミクスが軌道に乗ってないと市場関係者の信頼を失う」と述べ、民主党の枝野幹事長も同じ批判をしているようだけれど、一体いつから、再増税することがアベノミクスの一部になったのか。

アベノミクスでも、なんとかのミクスでもなんでもいいけど、それらは手段であって目的じゃない。そもそも消費税増税は、アベノミクスを始める前から決まっていた。やってみたら、景気の足を引っ張った、だから止める。素直にこれでよいのではないかと思う。

消費増税先送りで、国内外の信頼を失うというけれど、その逆に景気回復を目標においた柔軟かつ的確な判断だという見方だって出来る

アライアンス・バーンスタインのマーケットストラテジストで、エコノミストの村上尚己氏は、「日本で消費増税が先送りとなって、それが金利の大幅上昇などのリスクをもたらすというシナリオについては、国内外の投資家の世界において議論になっていることすら聞いたことがない」と述べ、寧ろ、さらなる消費増税が、アベノミクスの失敗を招き、世界経済回復の足を引っ張るリスクについて、警戒感を持たれていると警告している。

実際、10月15日に公表されたアメリカ財務省の為替報告書で、日本経済について「内需拡大を持続させるには、インフレ率を超えた賃上げ主導による継続的なビジネス・住宅投資・家計消費の拡大が必要不可欠である。この観点から、日本は財政再建のペースを慎重に調整すべきである」と指摘されているという。

これらは、再増税はアベノミクスを失敗に追いやる、という見解であり、歳川氏や枝野氏の見解とは正反対。

アベノミクスの目的はあくまで景気回復であり、デフレ脱却にある。増税したことで、ここまで経済指標が悪くなったのなら、延期することで景気回復の時間が稼げると考えるのは自然なことだし、もっといえば、減税して景気が回復しようものなら、増税しなくても財政再建できることを証明することになる。

もしかしあら、財務省はそれを白日の下に晒されることを恐れているのかもしれないけれど、政治が国民の為にあるのならば、国民の為の政治を行う人物に託すのは当然のことだろうと思う。




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