今日はこの話題を極々簡単に…

エボラの脅威が拡大している。
11月12日、アメリカ・テキサス州の保健当局は、テキサス州のテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院でエボラ出血熱で8日に亡くなったリベリア人男性の治療にあたっていた女性看護師ニーナ・ファムさんが、エボラ出血熱に2次感染したことを明らかにした。
それによると、ニーナ・ファムさんは、10日夜、発熱の症状を訴えたため、隔離して管理検査したところ、陽性反応が出たという。
ニーナ・ファムさんは、8月にエボラ出血熱から回復したアメリカ人医師ケント・ブラントリーさんと血液型が一致したため、輸血による抗体治療が施され、容体は回復に向かっているという。何にせよ回復傾向にあるのは不幸中の幸い。
これで、ひとまず危機は脱したかと思いきや、2例目の二次感染者が明らかになった。新たな感染者は、これまた、ニーナ・ファムさんと同じくエボラ患者の治療に当たっていた、ダラス在住の医療従事者、アンバー・ジョイ・ヴィンソンさん。ヴィンソンさんは、14日に発熱が報告され、直ちに病院で隔離された。
だけど、ヴィンソンさんは症状が出る前夜、クリーブランドとダラスを結ぶ国内線(フロンティア航空1143便)で移動したことが明らかになっており、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ヴィンソンさんと同乗した132人と連絡を取るとしている。
一部には、防護服や手袋などを着用していたにもかかわらず、エボラウイルスに感染したことから、一部には空気感染しない筈のエボラが変異して空気感染するようになったのではとの噂が流れ不安が広がっている。
だけど、今のところは、ウイルスからの防護が結構杜撰だったようだ。
全米看護師連合(National Nurses United)は、テキサス・ヘルス・プレスビテリアン同病院のスタッフに対する聞き取り調査を実施したのだけれど、その結果、この病院では、エボラ出血熱患者を受け入れる準備が全然整っていなかったことが明らかになった。
まず、エボラで亡くなったリベリア人男性患者が9月28日に病院に搬送された際、隔離もされず、数時間に渡って、他の患者らと同じ場所にいた。そしてまた、病院関係者の誰一人として、エボラの対応手順や、身に着けるべき防護服の種類を知らず、訓練も受けていなかったという。
更には、血液検体でも、必要とされる特殊な密閉法やラボへの手渡しが実施されておらず、エボラ患者の治療に関わった看護師らも、適切に体を防護していなかった。
最初に、エボラ患者と接触した看護師らは、体の前と後ろには不浸透性ではないガウンを、手には手首にテープを巻かない状態で手袋を、口には外科用マスクを着用していたそうで、与えられた医療服も、顔と口に最も近い首まわりが露出したものだったそうだ。
エボラウイルスはわずか数個が体内に入っただけでも感染すると言われている最凶のウイリス。にも関わらず、肌が露出する程度の防護服で看護に当たらせるのはあまりにも危険。
全米看護師連合の調査が事実だったとしたら、医療従事者だけでなく、エボラ患者と同じ場所に居た、他の患者だって危ない。このまま収束すればいいけれど、まだまだ拡大する恐れは十分ある。
また、二人目の2次感染者となったヴィンソンさんが、発症前日に国内便で移動していたことも、疑問といえば疑問。エボラ患者の看護に当たったスタッフは、尤もエボラの2次感染リスクが高いことは火を見るより明らか。やはり要監視対象として移動制限を課するべきではなかったか。
ただ、これには、アメリカのシステム的な問題も影響しているようだ。
一般にアメリカの各州は、公衆の健康と安全を守るために隔離などの非常措置を命じる権限を持っている。例えば、テキサス州の衛生安全条例では、衛生当局が、疾病の侵入、感染、拡大の防止に必要かつ合理的な規制措置を講じることが認められている。
一方、アメリカ保健福祉省の傘下機関であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)には州や、3500を超える地方の公衆衛生当局に指図する権限はなく、連邦裁判所も連邦政府は地方当局の権限を奪ったり、州に自分の意思に従わせたりしてはならないという判決を下した過去がある。
ということで、当時、ヴィンソンさんがテキサス州を離れる前に隔離する権限を持っていたのは、州当局だけだった。つまり、テキサス州当局が、エボラの危険性を十分認識して適切な対応が取れない限り防ぐことはほぼ不可能だったということ。
10月14日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のフリーデン所長は「われわれが対応に当たっているのは、アメリカ国内では珍しい病気。対応は難しい。私はしばしばそれについて考えることがあった。このようなチームを派遣していればよかった。…そうすれば、今回の感染を防げたかもしれない」とダラスの病院スタッフを訓練し、患者への対応を監視するための特別チームを迅速に派遣しなかったのは間違いだったとし、今後の感染例が発覚した場合は即刻、専門家チームを派遣するとしている。
ミシガン大学公衆衛生学部のピーターD・ジェイコブソン教授は「必要なのは、州、地方、民間が一体となって防疫に取り組む体制だ。今まではばらばらだった。これではうまくいかない」と述べているけれど、そのような体制を早急に整える必要がある。
10月15日、オバマ大統領はエボラ出血熱の緊急対策会議を開き、「特別機動チーム」を発足させると発表。今後は、この対策チームが現地に入って、二次感染の抑止に努めるとしている。きちんと防護しないと、2次感染することが明らかになった以上、もたもたしている余裕はない。
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