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10月15日、新潟市で第67回新聞大会が行われた。これは、毎年10月15日からの「新聞週間」の期間中に行われる日本新聞協会主催の大会。新聞大会では、新聞協会賞が授賞されるほか、新聞大会決議が採択される。
今年の大会のパネルディスカッションは、新聞の信頼回復と経営力の強化がテーマで、日本新聞協会の白石興二郎会長がコーディネーターとなり、朝日新聞の木村伊量社長や、毎日新聞の朝比奈豊社長、新潟日報社の小田敏三社長、神戸新聞社の高士薫社長がパネリストとして参加したのだけれど、その冒頭、朝日の木村社長が「東京電力福島第一原発の吉田調書を巡る報道の取り消しをはじめ、一連の混乱を生じる事態を招き、新聞業界全体の信頼を大きく損なわせたことを深くおわびします」などと謝罪した。新聞の信頼回復と経営力の強化がテーマの大会である以上、朝日が、再びの謝罪をさせられるのは仕方のないところ。
木村社長の謝罪を受け、毎日の朝比奈社長は「他山の石にしなければならない」と指摘、新潟日報の小田社長は「メディアの全否定につながるような攻撃、誹謗中傷も起きている。新聞界が混乱しては、なおさら信頼を失う」と述べた。
また、神戸新聞の高士社長は「朝日の問題にとどまらず、我々にも身に覚えがある。記者は正義感に燃えたときほど、バイアスの落とし穴にはまる。謝るときには誠意をもってすっきり謝らなあかん」とし、白石興二郎・読売新聞グループ本社社長は、新聞が朝日を批判する状況は「きわめて異例」としながらも、「慰安婦問題は国際的な影響が大きいことから、我々も紙面を通じて発信しようと考えている」と述べている。
今回の大会の決議は次のとおり。
【第67回新聞大会決議】このように、大会の「信頼回復と経営力の強化」のテーマに沿った、決議がなされているのだけれど、こちらの新聞協会のサイトでは過去の決議が公開されている。
私たちが規範とする新聞倫理綱領は、正確で公正な記事と責任ある論評で公共的使命を果たすことが新聞の責務であるとうたっている。新聞は歴史の厳格な記録者であり、記者の任務は真実の追究である。
しかし、今、新聞への読者・国民の信頼を揺るがす事態が起きている。私たちはこれを重く受け止め、課せられた使命と責任を肝に銘じ、自らを厳しく律しながら、品格を重んじ、正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う。
これらをざっと見ると、2009年の「金融危機」、2011年の「東日本大震災」など、その年その年の主要な出来事をテーマとして、取りあげているのだけれど、ちょっと面白いのは、2012年からずっと、新聞に対する「軽減税率」を求める採択を行っていること。次に、該当部分を抜粋すると次の通り。
第65回(2012年度):新聞はいかなる時も正確な情報と多様な意見を国民に提供することで、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に寄与してきた。今年8月、消費税率を引き上げるための社会保障・税一体改革関連法が成立した。新聞を含む知識への課税強化は民主主義の維持・発展を損なうものであり、新聞には軽減税率を適用するよう強く求める。欧州諸国が新聞購読料に対しゼロ税率や軽減税率を採用していることに学ぶべきである。3年連続で、新聞に軽減税率を適用せよと採択するなんて、新聞各社にとって、消費増税は相当負担になると受け止めているという危機感の現れに他ならない。
第66回(2013年度)[特別決議]:新聞は、人々が社会生活を営む上で必要な情報、知識を全国どこでも、誰にでも安価に提供しており、民主社会の必需品である。消費税率の8%への引き上げが決まったが、新聞については軽減税率を適用し、現行の税率を維持すべきである。それが日本の民主主義、文化、地域社会の維持・発展に大きく貢献するとわれわれは確信する。
第67回(2014年度)[特別決議]:新聞は、戸別配達制度により全国どこでも容易に安価に入手でき、生活必需品として、民主主義社会や地域社会の発展に貢献するだけでなく、学校教育を通じ次世代育成にも寄与している。欧米諸国は、言論の多様性を確保するため「知識に課税せず」との政策のもと、新聞への軽減税率を導入している。私たちは、今後の社会・文化の発展と読者の負担軽減のため、消費税に軽減税率を導入し、新聞の購読料に適用するよう求める。
彼らは、軽減税率を適用すべきとする理由として「正確な情報と多様な意見を国民に提供する」「戸別配達制度により必要な情報、知識を全国どこでも、誰にでも安価に提供」「民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に寄与」「欧州諸国が新聞購読料に対しゼロ税率や軽減税率を採用している」などを挙げている。
だけど、その理由とやらは、もう殆ど成り立っていない。朝日は、正確な情報の提供などしていなかったことを告白しているし、戸別配達制度なんて、ネットが代替している上に値段も安い。朝日の慰安婦誤報(捏造)は国益を棄損し、"報道しない自由"は、国民生活の向上を妨げている。残っている理由は「オウベイガー」くらいなもの。
「朝日が失わせた信頼とメディアの価値」のエントリーで、朝日誤報以来、新聞業界全体の売上が落ち込んでいることを紹介したけれど、朝日は、新聞業界が求める軽減税率の適用の根拠を失わせ、業界全体を危機に晒したと言える。
一方、今回の新聞大会では、評価できるというか、"当たり前"の決議が採択されている。それは、例の産経の加藤・前ソウル支局長が、朴槿恵大統領の名誉を毀損したとして在宅起訴された問題について抗議決議したこと。その内容は次のとおり。
ソウル中央地方検察庁が産経新聞前ソウル支局長を名誉毀損で在宅起訴したことに対し、日本新聞協会は強く抗議する。この問題について、韓国は「表現の自由」と関連させるな、と喚いているけれど、少なくとも、日本のマスコミは、表現の自由を侵害するものだ、と宣言した。新聞協会に所属している限り、朝日とて、この問題で韓国を擁護することは、理屈の上では出来なくなる。
報道の自由と表現の自由は、民主主義社会の根幹をなす原則であり、韓国を含む民主主義国家群は憲法で保障している。しかし、今回の起訴は、この原則に反して言論の自由を侵害し、人々の知る権利に応えるための取材活動を萎縮させる行為であり、速やかな処分の撤回を求める。
今年の新聞大会は採決で「自らを厳しく律しながら、品格を重んじ、正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う」と宣言している。それが本当なのかどうかは、売上という市場原理が答えを出すだろう。
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