ノーベル物理学賞を受賞した青色LED開発

 
今日はこの話題ですね。

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10月7日、スウェーデンの王立科学アカデミーは、2014年のノーベル物理学賞を、青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇・名城大終身教授、天野浩・名古屋大教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の3人に授与すると発表した。

日本人のノーベル賞受賞は、2012年に医学生理学賞を受賞した山中伸弥京都大教授から2年ぶり20、21、22人目。

電子部品の中には、電子の少ない不純物が入った半導体(P型半導体)と電子を余計に持った不純物が含まれる半導体(N型半導体)をそれぞれ接合したPN接合と呼ばれる構造を持ったダイオードと呼ばれる素子がある。

ダイオードは、電子の少ない領域(P型領域)に高い電圧、電子の少ない領域に低い電圧を印加したときに、より多くの電流が流れるようになっている。これは、P型領域中の電子が欠落した部分(正孔)とN型領域の電子が電圧によって、それぞれPN接合部に追いやられ、PN接合部で互いに結合する為で、この電圧の掛け方を順方向という。

一方、電子の少ない領域(P型領域)に低い電圧、電子の少ない領域に高い電圧を掛けると、P型領域中の電子が欠落した部分(正孔)とN型領域の電子は、逆に電極側に引き付けられて、電流は極端に流れにくくなる。この電圧の掛け方を逆方向という。

このように、ダイオードは、電流を殆ど一定方向(順方向)にしか流さない作用(整流作用)を持つのだけれど、そのうち、順方向に電圧を掛けたときに発光するのが発光ダイオード(light emitting diode)。

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発光ダイオードに順方向電圧を掛けると、電子と正孔が移動してPN接合部で互いに結合する(再結合)のだけれど、このとき、電子と正孔がもともと持っていたエネルギーの余剰分が光エネルギーとして放出されることで発光する(自然光放出発光)。

無論、この発光現象は、全てのPN接合で起こるわけではなくて、PN接合部で電子と正孔が結合(再結合)したときに、放出する余剰エネルギーがないといけない。

余剰エネルギーは、その材質によって大小があって、通常の半導体材料として使われるシリコン(Si)は、余剰エネルギーは殆どなく、発光しない。

これに対して、ガリウムヒ素(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)といった化合物半導体材料では、余剰エネルギーが比較的多く、この発光現象が起こる。

この余剰エネルギーは、LEDに使用する化合物によってその大小があり、エネルギーが小さければ、発光する光の波長は長くなり(赤色方向)、エネルギーが大きくなれば波長は短くなる(紫色方向)。この波長の違いがLEDの発光色の違いとなって表れる。波長が長くなれば、赤色に近づいていくし、短くなれば紫色に近づいていく。

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青色発光ダイオードを作るためには、波長の短い光、すなわち余剰エネルギーが大きくなるような材料を使わなければならないのだけれど、最初に使われた炭化ケイ素では、暗すぎたため、セレン化亜鉛と窒化ガリウムが候補となった。

ところが、窒化ガリウムでのダイオード作成は難しかったため、多くの研究者が手を引き、1970年代後半には、セレン化亜鉛による青色発光LEDの研究が主流となっていった。

だけど、今回ノーベル賞を受賞した赤崎教授は、窒化ガリウムの方が放出エネルギーが高く、結晶も安定していて優れていると考え、当時勤務していた松下電器で、1973年から開発に着手。1981年からは、当時名古屋大学の大学院生だった天野浩氏(現教授)と共同研究し、1985年に見事、窒化ガリウムを使ったダイオードの開発に成功。青色LEDが生まれた。

一方、中村修二教授も、1988年、当時勤務していた日亜化学工業で青色LEDの開発に着手。窒化ガリウムにインジウムを加えたインジウム窒化ガリウム(InGaN)の薄膜を発光層とする多重構造の結晶の作製に成功し、高輝度の青色発光LEDを実現した。

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中村教授はのちに、青色半導体レーザーも開発しているけれど、これはLEDの発光を一方向に制御したもので、広い意味での応用技術。

半導体レーザーは、身近なところにも使われていて、例えば、CDやDVDの読み取りに使われている。

CDやDVDには、細かいくぼみが彫られていて、このパターンによってデジタル情報を格納しているのだけれど、このくぼみに半導体レーザーを照射して、その反射光を読み取ることでデジタル情報の再生を行っている。

普通のCDやDVDで使われる半導体レーザーは、波長780nmの赤外線レーザーや波長650nmの赤色レーザーなのだけれど、この半導体レーザーの波長が短くなればなるほど、より"細かいくぼみ"まで読み取れるようになる。つまり、波長の短い半導体レーザー、すなわち、青色半導体レーザーをCDやDVDの読み取りに使うことができれば、一枚のDVDにより多くの情報が収められることになる。

最近主流のブルーレイ(Blu-ray)は、その名のとおり、波長405nmのブルーの光線(青色レーザー)を使っていて、容量はDVDと比較して4~5倍になっている。

今や、LEDは、競技場などの大型ディスプレー、自動車のウインカー、ブレーキランプや信号機、あるいは植物工場の照明などにも使われている。

LED市場は今後益々伸びると予想されているけれど、その陰には、諦めることなく青色LEDの開発に邁進した赤崎教授、天野教授、中村教授の努力があった。3氏のノーベル賞受賞を心から祝福したい。

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