アメリカに上陸したエボラ出血熱とファビピラビル

 
今日は、急遽この話題です。

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とうとうエボラがアメリカに上陸した。

9月29日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、アメリカ国内で初めてエボラ出血熱の感染がテキサス州ダラスで確認されたと発表した。患者は既に、ダラスのテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院で隔離され治療を受けている。

今回、エボラを発症した患者は、西アフリカのリベリアを訪れていたリベリア国籍を持つトーマス・エリック・ダンカン氏。

ダンカン氏は、アメリカに住む家族のもとを訪れるため、9月20日に旅客機で訪米。その4日後、感染の兆候が現れ始め、更に2日後の9月26日に、このダラスの病院で診察を受けていたのだけれど、病院側は「西アフリカからの渡航者」であることを確認しながら、抗生剤を処方して帰宅させてしまっていた。

9月28日、症状が重くなったダンカン氏の家族は、病院は信用出来ないからと、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)に直接電話をしてアドバイスを受けたところ、センターは、すぐに救急車を呼んで入院するよう指示。再び同じ病院で診察を受け、隔離治療となった。

当然ながら、病院は「なぜ、最初に診断を受けた段階で隔離治療せず帰宅させたのか」と大きな批判を浴びているのだけれど、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)所長のトーマス・フリーデン博士は「エボラ・ウィルスの初期は大抵の場合、普通の風邪と同じような症状が出る。…CDCは救急診療を担当する医師たちに特に注意を払って渡航履歴を調べ、エボラ出血熱に類似するあらゆる検査を迅速に行うように指示した。…アメリカ国内でエボラ出血熱の連鎖を食い止められると確信している」と述べている。

また、フリーデン博士は「エボラウィルスは、手を洗えば簡単に殺菌できるウィルスです。手袋といった防護的な予防策でかんたんに防げます」とし、アメリカでは過去にウィルス性出血熱の一つであるマールブルグウィルスに感染した患者に対して、入院・手術治療を施し、標準的な衛生対策を行っただけで感染拡大を防止したと指摘している。

ダラス郡保健社会福祉所長のザッカリー・トンプソン氏は、患者に症状が出ているときに接触した可能性があるが、まだ病院で検査を受けていない人物に連絡を取って面会をするなど、公衆衛生面での対策を指揮。

ダンカン氏はリベリアに居た時、エボラ患者で重症の少女を運ぶ手伝いをしていたそうなのだけれど、リベリアを出国する際、エボラ患者に接触した事実を申告していなかったことが明らかになっていて、リベリアのサーリーフ大統領は「事実を言わず出国したのは許しがたい」と激怒。リベリア政府はダンカン氏を起訴する構えを見せているという。



アメリカは、アメリカでエボラの水際対策として、できる限りのことをしている。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、現在、130人のスタッフを西アフリカの国々に派遣し、ウィルスを封じ込めるための公衆衛生の対策を支援しているし、航空会社と共同でリベリア、シエラレオネ、ギニア、ナイジェリアの主要都市ラゴスでから出発する航空機の乗客全員に対し、搭乗前に熱がないかどうかを確認し、症状が現れている人には搭乗を認めない措置を取っている。

ダンカン氏は、搭乗時には発症しておらず、すり抜けてしまったけれど、本人によると、渡航の際の健康チェックは相当厳しかったらしい。

既に、ダンカン氏の親族4人は家からの外出を禁じられていて、食糧も玄関先に届けられたものを自ら運び入れているという。

当初、テキサス州は「ソフトな隔離」を試みたようなのだけれど、家族は、取り決めに反して隔離中に、住宅の外に出てしまったが為に、現在は、武装警官が家を封鎖する措置が取られているという。

尤も、家族は、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から患者が発症後に使用していた寝具類やタオルなどから感染が広がる可能性があるとして、バイオハザード扱いで処分するよう指示されたのだけれど、肝心の処理部隊が中々来ないから、焦って外の外の様子を見に出てしまった、と説明している。

更に、ダンカン氏に関係した18人に対しても感染の可能性があるとして隔離されている。

また、ダンカン氏が隔離される前、小学校から高校まで4校の児童・生徒ら計5人と接触していたことが明らかになり、その5人は、現在自宅で経過観察を受けている。保健当局によると、5人に感染の兆候はなく、子供たちを通じ他の人々に感染が広がった可能性も極めて低いという。

10月2日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、7人から成るチームを結成しダンカン氏家族の協力を受け、ダンカン氏が9月20日にダラスに到着してから隔離されるまでの約1週間に接触した可能性のある約100人を対象に調査を行っていることを明らかにしている。

エボラの症状が現れるまでには、2日から21日くらいかかるから、ここ数週間で新たな発症者がでるかどうかがに鍵になる。先のフリーデン博士は「この感染者と接触した人が向こう数週間内にエボラ熱を発症する可能性は確かにある。…接触者を追跡し、米国内での感染を阻止できると確信している」と自信を見せているけれど、発症者が見つかり次第、即座に隔離する体制を整えるなど、それなりの対策を取っている自負があるのだろう。



これに対して、エボラが猛威を振るう西アフリカでは、これまで一度もエボラウイルスの流行がなかったこともあって、人々はエボラのことを知らず、政府や衛生当局でさえもウイルスの性質を知らなかったらしい。

また、西アフリカなどでは人が亡くなると、葬儀で参列者は直接遺体に触れてその死を悼む風習があるのだけれど、それも感染拡大の原因の一つと言われている。

更に、地元政府は感染の拡大を防ぐためだとして、スラム街を強制的に撤去するなど強硬な対応に乗り出して、それがまた住民の不信感を募らせ、感染してもあえて隠す人もいるのだという。

それどころか、リベリアでは、8月17日に首都モンロビアで、武装した男らが夜中にドアを壊して侵入し、「エボラは存在しない。…大統領は金が欲しいだけだ」と叫びながら、感染者の隔離施設を襲撃し施設内の物を略奪。患者20人が逃走する事件が発生している。

こうしてみると、国としての医療システムや対策は元より、エボラに対する住民の理解や正しい情報の普及が感染拡大を防ぐ大きなポイントになるように思われる。

そんな中、少し明るい話題もある。

リベリアで医療活動中にエボラ出血熱に感染したフランス人の女性看護師が、富山化学工業が開発したファビピラビル(T-705)の投与を受け、快方に向かっていることが分かった。これは、フランスからの要請を受けた富士フイルムが、日本政府と協議の上で薬を提供してのもので、9月19日から服用を始めていたという。

ファビピラビルについては「エボラ出血熱に立ち向かう『T-705(ファビピラビル)』」で少し詳しく取りあげたから、ここでは触れないけれど、エボラ熱の患者への投与は今回が初めてのケースで、効果があったことが分かったのは朗報といっていい。

ファビピラビルは、口から飲む錠剤タイプの薬で、量産体制が整っていない「Zmapp」と違って、備蓄薬を念頭に準備が進められていたため、量産体制ができていて、在庫も既に、国内に2万人分ある。

ファビピラビルがエボラに有効であることが確認・証明できれば、エボラ拡大を阻止する大きな力になることは間違いない。




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