雨傘革命のゆくえ
今日はこの話題です。
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香港での民主化デモが拡大の一途を辿っている。
8月31日、中国全国人民代表大会常務委員会が、2017年の香港行政長官選挙で立候補資格に制限を設け、立候補者は、香港の各界代表などで構成する指名委員会の過半数の賛成を得た2人または3人に限定する方針を発表した。
以前、「香港と自由を守る闘い」で、中共政府が香港に圧力を掛けていたことについて触れたけれど、この指名委員会は中国政府に近い人物が多くを占めるとみられ、この決定は、事実上親中派以外の候補を絞め出すものだとして、誰でも立候補可能な選挙を求める香港の民主派は反発を強め、今回のデモへと発展した。
デモ隊は完全な民主化と梁振英・現行政長官の辞任を要求している。9月22日から始まったデモへの参加者は数万人にも及び、9月28日には、香港中心部を占拠。30日の朝の段階では、香港政府本部庁舎がある金鐘、ビジネス街の中環、商業地区の銅鑼湾、九龍地区の繁華街である旺角の少なくとも4か所でデモ隊の占拠が続いている。
これに対して、中共政府はデモ活動を「違法」としていて、香港の梁振英・行政長官は抗議活動に「断固とした」姿勢で臨む方針を表明。警察隊を投入して催涙ガスを80回以上使用、逮捕者は27、28の2日間で140人以上にのぼり、負傷者は40人を超えた。
ただ29日以降は、機動隊の大半は撤収しているという。
今回のデモは、「傘の世代」と呼ばれる天安門事件を知らない10代の学生らが先頭に立っているのだけれど、彼らは、傘やマスクで催涙スプレーから身を護っているものの、自ら警察隊と衝突を起こすような行動はとっていないようだ。
中国系マレーシア人で映画監督のリム・カーワイ氏は、今回の民主化デモの現地レポートをしているけれど、それによると、学生たちは授業をさぼっているわけでもなく、警察が催涙弾を撃たない限り、彼らは座り込みしたり、立ち話したり、写真やビデオを撮ったりして電話をしたりして、とても穏やかで平和なのだという。
香港には、「オキュパイ・セントラル(中環を占拠せよ)」と呼ばれる有名な民主化運動団体があるのだけれど、オキュパイ・セントラルは28日から学生らのデモ隊に合流している。
オキュパイ・セントラルは、60代、70代を中心とし、そのリーダーは大学教授や香港の民主政党のベテランメンバーを中心に構成されている。
オキュパイ・セントラルの創設者、ベニー・タイ氏は、今回のデモの規模を見てオキュパイとしての抗議活動を予定より数日間前倒ししたと説明。「学生たちの活動に感銘を受けた。われわれが出遅れたことさえ認めよう。自らを恥じなければならない」と語っているから、それなりに刺激を受けていることを伺わせる。
その一方、「オキュパイ・セントラル」が合流してからは、「一定の政治活動に利用されるのは勘弁」としてデモから離脱する学生たちが出ているとの噂も流れている。
また、学生たち若い世代は、中国の経済成長の恩恵を受けておらず、また、家賃の高騰や教育・ヘルスケアなどのサービス面での本土との競争に苦闘する世代の不満を取り込む形で支持を伸ばしているのに対して、富を築いている上の世代の多くは、中国の政策に反対して香港を混乱させることに強く反対しており、オキュパイ・セントラルも中国の方針には懐疑的ではあるものの、北京と対立することには慎重だとし、世代間対立があるとの報道もあるようだ。
ただ、これについて、先のリム・カーワイ氏は「オキュパイ・セントラルにくみしない学生という情報は香港でも大きい混乱をもたらしているが単なる現場のコミュニケーション不足による誤解だ。これは敵が仕掛けた罠でもある。…デモの現場に参加した人間としてよく分かるがデモを行い警察の封鎖を阻止した学生と社会人たちは逮捕される覚悟を持っている。…逮捕されたら携帯電話に事前個人情報を書き込んで送信するとアドバイスされる。その送信先は「オキュパイ・セントラル」が用意した弁護士団がバックアップされている。そういう事前の連携、既に学生連盟とオキュパイ・セントラルとの間になされている。だから学生がオキュパイ・セントラルにくみしないと言うだけでまさしく敵の罠にはまり、内闘になり、空中分解される可能性ある」と述べている。
だから、「傘の世代」と「オキュパイ・セントラル」の仲がうまくいってないというこ噂自体、情報操作の一環である可能性もなくはない。今のところ、これについては判断を留保したい。
いずれにせよ、香港の民主化デモに対して、中共政府がどう対応するかに注目が集まることは間違いないけれど、ウイグルやチベットと違って海外メディアが数多く入っている香港で、天安門のようなことをやらかしたら唯ではすまない。
8月下旬、中国政府駐香港特区連絡弁公室のトップである張暁明主任が民主派議員との会談の際、「あなた達が生きていられるのは、政府(共産党)の寛容と礼儀のおかげ」とし、「一党独裁の終了を求めるのであれば、中国本土で生存することは出来ない」と話したことをAP通信と香港紙・アップルディリーにすっぱ抜かれている。
更に、香港の民主派議員、梁耀忠氏が、香港民主派が特区長官への選挙出馬をすることを北京当局が許すかどうかと質問したところ、張主任が「あなた方が生きている事を許されているのは、国家が寛容であることを示している」と即座に答えたと、ロイター通信が2人の匿名の関係者の話を引用して報じている。
これに対し、張主任は、香港メディアの報道は真実ではなく悪辣だと非難し、海外メディアの翻訳に問題があると主張したのだけれど、ロイター通信は即座に別記事で、「この話は、会議に参加した2人の匿名の関係者から聞き取った張主任の話であり、翻訳も間違っていない。…張主任に確認したが、未だに返事がない」と反論している。
まぁ、「生きていられるのは、共産党の寛容のお蔭だ」などという言葉が、中国政府の考え方を象徴する何よりのものだと思うけれど、香港では、それが如何に今の世界からズレているかをたちまちのうちに暴かれてしまう。
それでも中共政府は、凶行に及び、天安門を繰り返すのか。事態は予断を許さない。
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