

1.止まらないオミクロン
オミクロンの感染拡大が止まりません。
19日、国内の武漢ウイルスの感染者は4万人を超え、2日連続で過去最多を更新しました。オミクロン株は感染が初めて確認された11月30日以降、これまでの変異株を上回るスピードで、急速に感染者が増えています。
20日、東京都は武漢ウイルスの感染動向を分析するモニタリング会議を開き、感染状況と医療提供体制の警戒レベルをそれぞれ1段階ずつ引き上げました。感染状況は4段階で一番上の「大規模な感染拡大が継続している」、医療提供体制は上から2番目の「通常の医療を制限し、体制強化が必要な状況である」とし、専門家は、現在の増加比が続いた場合、1週間後の27日には都内の1日の新規感染者数が1万8266人になるとの試算を明らかにしています。
一方、全国に先駆けて感染が拡大していた沖縄県は一時の増加の勢いが緩み、全国の実効再生産数も落ちていることから、「ピークアウトしたのではないか」という声も出て来ています。
2.沖縄はピークアウトの兆し
19日、日本医師会の中川俊男会長は定例記者会見で、オミクロン株の感染拡大を踏まえ、感染者数が増加すれば重症者数は増えると警戒感を示しつつも、「高齢者や基礎疾患のある方などリスクの高いグループに配慮しつつ、経済の再活性化と感染拡大防止の両立を本格的に目指す段階に入ったと考える……重症化リスクの少ない若年層や基礎疾患がない方については、オミクロン株は、今までのデルタ株による新型コロナウイルス感染症とは、大きく臨床像が異なるのは共通の認識になりつつある……医療提供体制の逼迫を極力避けるためにも、デルタ株の流行時のような患者の扱いではなくて、一段違う扱いにする必要がある」と、経済活動を少しずつ再活性化していくべきとしました。
この日の定例会見に続いて、日医総研の客員研究員で沖縄県立中部病院医師の高山義浩氏からの報告も紹介されたのですけれども、そこで沖縄の状況について「沖縄県では、新規感染者は高止まりしており、減少傾向にはない。これまで検査を受けていた若者が、新たに検査を受けなくなっており、増加率が収まって見えているのではないか」、「この背景として、若者の間にオミクロン株がインフルエンザと同じだとの認識が拡がっていることが一因ではないか」と指摘しピークアウトしたとの認識は示しませんでした。
3.ワクチンパスポート停止
とにかくステイホームだ、時短営業だと、人流抑制ばかりだった去年までと違って、かつてないスピードで感染拡大しているにも関わらず、緊急事態宣言ではなく蔓延防止措置ですましているということは、なんだかんだいってオミクロンはデルタとは違うものと認識しているとうことでしょう。
19日、政府の新型コロナウイルス対策を議論する有識者会議「基本的対処方針分科会」の尾身会長は、この日の会合後の取材に応じ、繁華街への人出を減らす「人流抑制」から、飲食店などの「人数制限」へ対策をシフトすべきだとの考えを示しました。
この日の分科会では、ワクチン接種証明や検査の陰性結果を基に行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」を停止する国の方針も了承したのですけれども、尾身会長は、停止する理由を「オミクロン株で感染予防効果がかなり低くなっている」と説明し、パッケージ再開の条件は、ワクチンの3回目接種が進み「当初と同じようにワクチンが非常に有効だとわかったときだ」と述べました。
もうオミクロン株にはワクチンが効かないことを認めてしまっています。
「ワクチン・検査パッケージ」を停止するということは、これまでの人流抑制はしないということを意味します。
これまで尾身会長ら感染症や医療の専門家グループは、人流抑制を強く主張し、昨年8月の「第5波」では、緊急事態宣言発令中だった東京都の人流を半分に減らすよう求めていました。けれども、今回、尾身会長は、「渋谷の交差点がいくら混んでも感染しない」として、繁華街の人出そのものの削減を目指さないことを強調する一方、飲食など感染リスクの高い場面については、少人数にするなどの感染予防策を取るよう求めています。要するに戦略を変更した訳です。
4.濃厚接触者には陽性者本人が連絡
当初定めた感染拡大防止のシステムが崩れていく例は他にもあります。
19日、東京都は、保健所に対し、今まで保健所が行っていた感染者の濃厚接触者対応について、「濃厚接触者と考えられる方へ、陽性者本人からの連絡をお願いする」として、濃厚接触者に感染者本人から直接連絡してもらうよう通知しました。
都は、感染者が急激に増える中、保健所の業務を、感染者の健康観察や体調が急変したときの対応に重点化するためだとしていますけれども、要するに人手が足りなくなったということでしょう。
厚生労働省の定義ではマスク着用などの予防策をとらずに陽性者と1メートル以内で15分以上接触があった場合、濃厚接触者という扱いとしています。
現在日本の武漢ウイルス対応では陽性者に10日間の療養を求め、濃厚接触者と認定された人にも自宅などでの10日間の待機を求めています。国立感染症研究所などの分析によると、陽性者1人につき濃厚接触者は5人ほどいるそうなのですけれども、たとえば、無症状で何日も過ごしていて、たまたま検査したら陽性だったというケースはどこまで遡って濃厚接触とするのか分かりませんし、満員電車で隣にいた人なんて連絡しようがありません。
濃厚接触者には自分で連絡しろだなんて、もうなんだか絵にかいた餅というか、言葉もありません。
日経新聞が、当面1日4万人の新規感染者が発生する想定で試算したところ、10日後には濃厚接触者が180万人規模に達することが分かったそうです。
勿論、濃厚接触者全員が発症するとは限りませんから、実際の感染者はもっと少なくなると思いますけれども、都は新規感染者が今のペースで続いたら、1週間後の27日には、1日の新規感染者数が1万8266人になるとの試算を明らかにしています。
けれども、国が求める陽性者に10日間の療養、濃厚接触者には10日間の自宅待機を真面目にやったら、180万人の活動が止まってしまいます。流石にここまでくると、社会インフラの維持を含め、様々なところで深刻は人手不足になるであろうことは容易に想像できます。
5.丸投げとなし崩し
何か今の国の対応は、表向きのフレームはそのままで、実の対応は現場へ丸投げしているに近い印象を受けてしまいます。
岸田総理は、武漢ウイルス感染症を今の2類相当から5類に見直しすることについて「現実的ではない」と見直さない方針を述べていますけれども、もしこのままフレームを弄ることなく、現場は現場で対応してくれという具合に何もしなければ、表向きの枠組みはどんどん、なし崩しになってしまうのではないかと思います。
あるいは、変えることで責任を取ることを嫌がっているのかもしれませんけれども、180万人の隔離・待機などそれこそ「現実的ではない」と思います。
まぁ、オミクロン株は感染拡大スピードが速いだけに、ピークアウトするのも早いかもしれませんけれども、感染の状況に国の対応がついていけてない感は否めません。
もしかしたら、来月、再来月には、一周回って何もしないうちにオミクロン株は終わってしまっているかもしれませんね。
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