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1.佐渡金山の世界文化遺産推薦決定
1月28日、岸田総理は「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録をユネスコに推薦すると表明しました。
岸田総理は推薦する理由について「本年申請し、早期に議論を開始することが登録実現への近道との結論に至った……歴史的経緯を含め、さまざまな議論に対応する……独自の意見があるのは承知している。だからこそ冷静で丁寧な議論、対話をしていきたい」と述べ、省庁横断型のタスクフォースを設置する考えを示しました。
佐渡金山については昨年12月に文化審議会が推薦候補に選定するよう答申し、佐渡市の「西三川砂金山」と「相川鶴子金銀山」が構成資産で、16~19世紀の伝統的手工業による生産技術などを評価しています。
当初は歴史問題を巡る韓国の反発を受け、見送りを検討していたのですけれども、地元自治体だけでなく自民党内からも推薦を求める意見が上がり方針転換した形です。
政府は2023年の登録を目指すとしていますけれども、関係国との協議を重視するユネスコの方針もあり、どうなるかは分かりません。
2.最後は俺が決める
ギリギリになっての方針転換に岸田総理は「申請を行うことを決定した。変わったとか転換したとの指摘は当たらない」と強調していますけれども、実際は悩み続けた末の決断だったようです。
佐渡金山遺跡が2023年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に選ばれた昨年12月末の時点では、地元の歓迎の声とは裏腹に、外務省を中心に慎重な声が多数を占めていました。
韓国政府は、戦時中、佐渡の鉱山で朝鮮半島出身者が働いていたとして、「強制労働被害の現場だ」と撤回を要求。更に韓国は、2015年に世界文化遺産に登録された長崎県の軍艦島などからなる「明治日本の産業革命遺産」にも言及し、朝鮮半島などから連行され労働を強いられた人々についての説明が不十分だとして、「日本は約束した後続措置を履行していない」と批判しました。
推薦すれば韓国の反発は明らかで、韓国の批判が佐渡金山だけでなく、すでに登録されている軍艦島にまで波及しかねないという懸念がありました。
当然ながら日韓関係がさらに悪化することが予想され、それについてアメリカ政府からも「日韓の新たな火種になる」との懸念が伝えられていたことも岸田総理は気にしたようです。
外務省は、韓国が3月に大統領選を控え、佐渡金山を「日本たたき」に利用する懸念が伝えられ、確実に登録できるチャンスを探るべきだと主張しました。それを「聞いた」岸田総理は国会答弁で「登録を実現することは何よりも大事。何が最も効果的なのか、しっかり検討していきたい」と繰り返し、推薦見送りを軸に調整を進めました。
ところが、これに自民党内から反発の声があがりました。18日、安倍元総理が顧問を務める議員連盟「保守団結の会」は、速やかな推薦を政府に求める決議をまとめ、19日には高市早苗政調会長が、記者会見で「日本国の名誉に関わる問題だ」と主張しました。
そして、20日には安倍元総理が自らの派閥で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」と語ったのが転換点でした。
関係者によると、岸田総理は複数回にわたって安倍元総理と電話で意見交換したようです。岸田総理周辺は「安倍氏なら保守派を抑えられるが、保守層に基盤のない首相が見送りを言うと収まりが付かなくなる」と、党内保守派の反発が強まれば、夏の参院選や今後の政権運営に影響が出かねず、このころから、岸田総理は「何か工夫を考えないと」と漏らすようになりました。
こうした中、27日、岸田総理は「最後は俺が決める」と周囲に語り、推薦する覚悟を決めたと見られています。翌28日午後、岸田総理は官邸の首相執務室に林芳正外相や末松信介文部科学相ら関係閣僚を集め、「世界遺産に登録できるように、冷静で丁寧な議論をやろう。米国や韓国をはじめ、関係国にしっかりと説明してくれ」と指示し、ようやく、佐渡金山の推薦がきまりました。
もっとも、岸田総理は22日に安倍元総理に「安倍政権のときのような『歴史戦チーム』を復活させたい」と打ち明け、韓国から疑義が呈された場合、一つ一つ証拠を挙げて反論する態勢を整える意思を伝えたそうですから、筆者は岸田総理はこの段階で推薦への腹を括ったのではないかと見ています。
3.冷静に正しい判断をされた
岸田総理が佐渡金山の世界文化遺産推薦を発表したことを受け、安倍元総理らが歓迎のコメントを出しています。
安倍元総理は「総理の判断を支持します。冷静に正しい判断をされたと思います。登録に向けて国、県、市、民間、総力をあげて取り組んでいかなければなりません。今後とも出来る限り協力して参ります」と述べました。
今回の推薦決定には安倍元総理の力が大きく働いたことは疑うべくもありませんけれども、今回の件で、安倍元総理は、党内への影響力の大きさを改めて見せつけたと思いますし、岸田総理も増々安倍元総理を頼りにするのではないかと思います。
また、早期の推薦を強く求めてきた自民党の高市政調会長も「岸田総理のご決断に、心から敬意を表します。今後は、世界遺産委員会の委員国からご理解と支援を得るべく、政府を挙げた取り組みを行い、世界遺産への登録を成し遂げて下さることをご期待申し上げます」とコメントしています。
高市政調会長が理解と支援が必要だとした世界遺産委員会とは、世界遺産リストの作成、登録遺産の保護支援などを行うユネスコの組織です。
世界遺産条約締約国193ヶ国の中から、異なる地域・文化を代表するよう選出された21ヶ国で構成されます。委員会は原則として毎年開催され、登録候補地の審査、危機遺産の登録・削除、世界遺産基金の用途決定、登録遺産のモニタリング・保存技術支援などを行います。
任期は最長6年で、条約締約国総会で改選されるのですけれども、現在は、任期を4年に短縮し、委員国任期を終えた国は、次の立候補まで6年間空けることとする措置が取られています。
昨年、ユネスコは歴史的な資料を後世に引き継ぐことをめざす「世界の記憶(旧記憶遺産)」で、当事国が反対すれば登録されない制度を、日本政府の働きかけで導入しました。従って、今回の佐渡金山推薦についても、世界遺産とは違う制度とはいえ、韓国が反対する中で日本が推薦することは矛盾すると批判される可能性も指摘されています。
4.有事の練習をしている岸田総理
1月28日、今回の佐渡金山のユネスコ世界文化遺産推薦決定について、韓国外務省は「我々の度重なった警告にもかかわらず、日本政府は韓国人強制労働の被害現場の推薦を決定した」と主張。強い遺憾を表明した上で、ユネスコへの推薦へ向けた動きを中断するよう求める声明を出しました。
どうせ推薦しようが見送ろうが、日本批判や工作をするのが彼の国です。正々堂々と議論すればいいだけことです。
ただ、岸田総理には、ただ推薦するだけではなく、登録にまで持っていきたいという意向があるようです。
27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演した、自民党の青山繁晴参院議員は、佐渡金山の推薦について次の様に述べています。
飯田)「佐渡島の金山」ユネスコへの世界文化遺産登録について。文化審議会からは推薦するべきだという声が出ていて、日本政府は「総合的に判断する」と言っています。昨年(2021年)末には、事実上これを見送るという報道もありましたが、現状はどうなっていますか?このように、青山参院議員は推薦を見送っても韓国の工作が止むことはないと指摘した上で、岸田総理は推薦に踏み切るだろうと述べていたのですけれども、結果としてその通りになりました。
青山)岸田総理が国会答弁で、「推薦期限は2月1日で、1月末までにはまだ時間がある」とおっしゃっています。1月末までに岸田総理自身が決断するということです。内部を十分調べていますけれども、「推薦しないと決まった」という事実はありません。【※編集部注:政府は28日、推薦する方向で最終調整に入った】
青山)この間、参議院で予算委員会が始まる前に、少し時間があったのです。そのときに岸田総理が与野党議員が見ている前で、私に普通の声で話しかけて来られたのです。
飯田)委員会室で。
青山)「佐渡金山についての夕べの電話だけれど」とおっしゃいました。あとは私が声をひそめたので、ひそひそ話になりましたが。この件を公共の電波でなぜ言うかというと、ただの立ち話だったので私も予想外でしたが、総理動静に出たので一部を明らかにします。
飯田)立ち話であったけれど。
青山)これまで総理に直接交渉して来ていますが、政府の一部である文化庁の審議会が、法に基づいて推薦を決めたのですから、推薦して当たり前なのです。それを政府自らが覆すようでは一貫性がありません。「推薦しない場合、韓国の不合理な主張を認めることになりますよ」「だから推薦してください」ということを国会議員、自由民主党の一員として、総理を含め直接交渉しているわけです。それに対して、おそらく岸田総理の考えは、「推薦して終わりではなく、登録させないといけないから」ということなのです。
飯田)登録まで持って行かないといけない。
青山)それがまさしく文化庁の審議会が決めたことを貫徹することになるのです。推薦して負けました、ではダメだということです。少なくとも岸田総理の認識は、いまのところ「韓国の工作活動にかなりやられていて、焦って推薦することを韓国が手ぐすね引いて待っている」というものです。
飯田)日本が推薦することを。
青山)これは外務省のいままでの努力が足りないということです。総理はおっしゃっていませんが、国会議員としては言わざるを得ません。同時に、ユネスコに対する韓国の工作活動は、常軌を逸しているわけです。
飯田)常軌を逸している。
青山)日本が決して使わないような手段も含め、工作していると思われます。外務省が怠けていたというわけではないけれども、現実問題として、登録を勝ち取るにはどうしたらいいかという考えが総理のなかにあるのです。
青山)ただ、ここは私とは考えが違っていて、1年延ばして2022年度に推薦を持ちこしても、韓国の工作が止むわけではありません。間違いなく韓国側は両睨みの体勢で、右手では2021年度の推薦を手ぐすね引いて待ち構えているけれども、左手では日本が韓国の浸透ぶりを見て1年延ばした場合の対応も、十分なお金を使ってやっていると思われます。だから、延ばしてもいいことが起こるわけではありません、ということを申し上げています。
青山参院議員は「岸田総理は総理になられる前後で、だいぶ雰囲気が変わったところがあります」と述べているのですけれども、身近の議員からみれば、岸田総理も変わったと見えるのかもしれません。
筆者には、今回の推薦の件にしても、岸田総理が"有事の練習"をしているように見えてしまうのですけれども、批判を受けたからひっくり返す方式ばかりでは、やがて限界がやってきます。
ミサイルは遺憾砲で撃ち落せません。昨今の国際情勢をみるにつけ、常在戦場、既に有事と考え、普段からあらゆるケースを想定して前もって対策を検討し、速やかに決断することが求められているのではないかと思いますね。
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